焼き肉の熱血遊び日記

漫画アニメ特撮カードゲーム大好きな男の趣味ブログ。

特別読み切り! 轟速の決闘者 AXEL!

 デュエル。それはカードを使った、魂と魂のぶつかり合い。
 歓声と怒号が飛び交うスタジアムの中央では、ふたりの男が、激しいデュエルを繰り広げていた。

「喰らえ、私の必殺コンボ! 3体の『無零怒』によって超ドロー! そしてこの3体からのぉ……!」
「……」

 3体の超強力モンスターが光となり、中を飛び交い、ひとつになる。

「エクシーズ召喚! 『熱血指導王 ジャイアントレーナー』ーっ!!」

 爆発と共に現れる、鋼の戦士モンスター。それを得意げに操る、太ったスーツの中年の男と、それに対峙する青年。このふたりのデュエルはワンサイドゲームであった。スーツの男の繰り出すモンスターはどれも攻撃力が高く、青年のカードでは歯が立たない。

ジャイアントレーナーの効果発動! 素材を使ってドローし、相手に見せる。そしてモンスターが来る度に、お前に800ダメージを与えるのだぁ!」
「……」
「行くぞ、ドロー! モンスターカードォッ!!」

 青年を炎が包み、そのライフを削る。男の攻撃は止まらない。

「2枚目ぇっ! モンスターカードォッ!」
「……っ!」

 さらなる一撃。ジャイアントレーナーの効果はターンに3回までなので、次が最後。男はそれを引く。

「……くく、良かったなぁ小僧。モンスターカードではない」
「……」
「見せてやろうかぁ?私が引いたのは、これだぁっ!」

 男がドローカードをかざす。それは『RUM』、ランクアップマジックのカード。

「そのまま、発動! RUMシリーズのカードは、ただでさえ強力なエクシーズを更に強くする! 出でよぉっっ!!」

 赤い光に呑み込まれ、男のモンスターは禍々しい進化を遂げた。

「『CX 熱血指導神アルティメットレーナー』ーーーっっっ!!!」

 光を吹き飛ばし、阿修羅の如く風格で降臨する。攻撃力は3800。デュエルの世界には『神』と呼ばれるモンスターがいる。この3800という数値は、その神にもっとも近いという数値である。

「どうだぁ! これが私の、億の金がかかった究極コンボだ!」
「……」
「言葉もでないかぁ?戦意がないなら、とっとと殺してやる! アルティメットレーナーの効果発動っ!ドローし……」

 ドローカードをかざす。それはモンスターカード。

「モンスターならばお前に800ダメージだぁっ! おらぁっ!!」
「……っ!」

 青年の体勢が衝撃でぐらつく。出現しているモンスターは立体映像であるが、そのプレッシャー、緊張感は限りなくリアル。カードゲームでありながら、戦意の削り合いも闘いに加味される。

「クークックックゥ! しかもこれだけの攻撃をしながらも手札はたくさんある。次への備えも万全よぉ。ターンエンドだぁ」

 青年の場にしもべとなるモンスターはいない。その戦力差は歴然。対戦者の男は油断し、観客たちも一方的な展開に集中力を切らしていた。
 その、刹那。

「……ライブ……チャジ……ウォ……」
「ん?」
「……オメ……ガ……DDR……貪欲……」
「……んんっ!?」
「……フォ……ミュ……s……ho……oting……」

 大量にあったはずの男の手札は消し飛び、そして、青年の場に、新たなしもべモンスターが現れた

「な、なんだこれはぁぁっ!?」

 それはドラゴン。星の光の輝きに包まれた、神々しいドラゴン。天空へ舞い上がり、速度を増していく。速くなるにつれ、その全身を紅い光が包む。
 男は感じた。自分とそのしもべが、遥か上空からの攻撃の対象になったことを。そして、それが反撃の隙もない、不可避の速攻であることを。

「……行け」
「う……うぉぉぉぉっっ!?」

 アルティメットレーナーが破壊され、男のライフにダイレクトな一撃が入る。これで、勝負は決着した。
──ザワ……ザワザワ……──

「き、きき、決まったぁぁっ! あの大富豪決闘者のミスタータスミが負けるとは、なんという大波乱ぁんっ! 観客席のざわつきが聞こえてくるようです!
勝ったのはぁっ!?」

 スポットライトが勝者を照らす。20代になるかならないかといったところの青年が、勝ち誇るでもなく、ただ淡々とそこにいたのである。

「轟速の決闘者ぉ……AXEL!!」

 

「……」

 アクセルは決闘前に通って来た扉を確認する。さきほどまで閉じていたそこは、言ってよしと言うかのように開いていた。彼は扉の方へ歩みを進める。

「ま、待って! 待ってくれ!」
「……?」
「あ、あのターンは一体何が……」

 途中まで言ったところで、タスミは自力で応えにたどり着いた。デュエルは1ターンを1分以内に終えなければならない。アクセルはその時間制限にかからないため、言葉通り、目に見えないスピードでカードを展開した。

「……な、なるほど。君が時間制限のためにプレイスピードを上げたのは分かる! だが、あれほどの布陣を崩すとは、信じられん!」
「……あんたのカードも強かった。よく見えないデュエルをして悪かったな」
「い、いや、それはいいのだ! それより、せめて、せめてあのドラゴンの名前だけでも……!」

 この大会では、敗者は地下に送られ、労働させられることになる。そのアンティと引き換えに、勝者は勝つ度に財産を得る。そして優勝者にはこの街の支配者から褒美が与えられる。
 このルールにしたがって、タスミはどこからか現れた鉄仮面たちに掴まれ、引きずられていく。その最中の、必死の問いかけ。アクセルは彼を見つめ、口を開く。

「……クェーサー
「……!?」
「『シューティング・クェーサー・ドラゴン』。宇宙で、最も輝く星の名だ」
「……そうか」

 タスミは満足げに笑い、地下へと落とされた。

「……」

 アクセルは、その様子を見つめていた。

 

「……な、なんだ今のデュエルは……!?」

 この大会の主催者と、その仲間が集うVIPルームでは、試合の模様が最新の巨大モニターで観戦できる。しかしそれでも、アクセルが何をしたのかは誰にも分からないでいた。

「い、今すぐあのアクセルという男のデータを……」
「だ、ダメです! どのデータベースにもデータがありません!」
「……くだらん」

 否、「誰にも」というのは適切な表現ではなかった。慌てふためく部下たちのことをくだらんと吐き捨てた男が、人を殺しそうな眼差しをモニター内のアクセルに向ける。

「……く、くだらないというのは……?」
「言葉通りの意味だ。どんな決闘者かなど、デュエルを見れば分かる」
「み、見えたのですか!?」

 発言した部下の全身が、氷に貫かれたような感覚に包まれる。

「……あれしきのスピードが、俺に見えないとでも?」
「し、しし、失言失礼しましたっ!!」
「……まぁ、俺も完全に見えたわけではない。だが大体は分かった。奴の戦法」
「さ、さすがです……社長!」

 畏怖と戦慄の塊のような男。この街の支配者、天(あまつ) 新海。彼はリストを手に取り、そこに書かれたタスミの名をバツで消す。

「富豪といえど容赦はするな。徹底的に、我々、リバースコーポレーションの力を刻み込んでやれ」
「合点!」
「今更言うまでもないことだが、バカな貴様らはすぐに忘れるからな」

 毒を吐き、新海は身を乗り出し、下々の者たちを見下ろす。

「……愚かな奴らだ。自分たちが遊ばれていることにも気づかない。そして、抗う力も意思も持っていない……はっ」

 ちょうど、アクセルが控え室に戻っていくところであった。アクセルと新海の目が合う。

「……」
「……ふっ」

 新海はアクセルの目から、何かを感じ、笑う。笑う社長を見、部下のひとりが語りかける。

「あ、あの、どうしたので……」
「くくっ。次の決勝、楽しみだ」

 自らに歯向かう者の目。それは、新海がもっとも嫌う種類の目だった。

 

「さぁー、始まりましたぁ! 長らく続いてきた、本大会の決勝戦!!」

 スタジアムを怒号が包む。凄まじいまでの騒音の中、対戦するふたりがステージに上がっていく。

「まずは、これまでのデュエル全てで敵を目にも見えぬスピードで瞬殺! 轟速の決闘者、アクセル!!」

 ブーイングが巻き起こる。デュエルのプロセス全てをスピードによって隠す彼のデュエルは、エンタメからはほど遠いものであったからだ。彼を応援するものは皆無だった。

「対するは、皆さん覚えておられますかな?デュエル塾ビジネスとプロを同時にこなし、数々の伝説を残したにも関わらず、プロの世界からいつしか去っていた謎の男を……。元エリート・プロ・デュエリスト! 『コマツ・デンジャラス』の登場だぁっ!」

 アクセルの時とは対照的な歓声。コマツは微笑みながら観客に手を振り、アクセルの前に立つ。

「やぁ。よろしく頼むよ」
「……あぁ」

 コマツはにこやかに手を差しだす。アクセルもそれに応じようと手を出すが、その時、彼の耳にかすかな銃声が届く。

「っ!? ぐぅっ!?」

 しかし、時既に遅かった。銃弾が彼の決闘盤を撃ち抜き、その機能が破壊される。

「……おやおや。どうしたので?」
「……」

 にやにやしながら笑っているコマツを見て、アクセルは彼もこの狙撃に一枚噛んでいると悟る。そして、VIPルームを見据える。

「……奴の差し金か……」
「ククッ。どうするね?アクセルよ」

 新海は手を上げ、スタジアムに潜ませていたスナイパーに、撤収の合図を出す。これで彼の目的は果たされた。アクセルの戦術をおおまかには把握した新海だったが、そのデュエルを普通のスピードでじっくり見たいという気持ちも確かにあったのだ。そのための狙撃であった。

「……なんとかやれる、か」

 しかしアクセルもただ撃たれるだけではなかった。ギリギリの反射神経で、致命傷は回避する。ディスクの処理速度は落ちたが、デュエルを普通にやるだけならばできる程度のダメージに抑えた。

「ん〜?どうしました?」
「いや。はじめようか」

 コマツの額に血管が浮かび上がる。「狙撃がデュエルもできないほどの破損になり、不戦勝になるかもしれない」と、入場の直前に新海に言われはした。不戦勝もラクができて良いとは思ったが、やはりどうせならデュエルで勝ちたい。そう思いはしたが、狙撃されたにも関わらず平然を装っているように見える目の前の青年は、彼のしゃくに触った。

「……うぜぇな。ビビって逃げりゃいいのによぉ」
「……そうかもしれないな」

 アクセルは微笑み、デッキを取り出し、ディスクにセットする。

「だが、デュエルからは逃げたくない」

 構え、決闘の準備万全ということを示す。

「……いいだろう」

 コマツも構える。会場を静寂が包み、そしてその静寂は、荒ぶる二匹の獣の咆哮によって破られた。

「デュエル!!」

 弾ける歓声。ディスクが、アクセルを先攻に指定する。

「俺の先攻。スタンバイ、メイン、そして、『ボルト・ヘッジホッグ』を攻撃表示で召喚」

 ボルトをまき散らし、攻撃態勢の獣が現れる。その攻撃力は800。アクセルはカードを1枚伏せる。

「これで、ターン終了」
「私のターン。ドロー! スタンバイ、メイン、そしてぇ、『暗黒の竜王』を召喚するッ!!」

 地球のコアからマグマが溢れ出し、この地上を包み込む。闇と炎が交わり、その名の通りの、暗黒の竜王が降臨する。

「よし、このまま攻撃すればこのターンを制することが……」
「どうかな?」

 VIP席では新海とその取り巻きのやり取りが行われていた。新海はアクセルの伏せカードを慎重に見つめる。

「疑問には思わんか?あんなザコを攻撃表示だ」
「た、たしかに……。誘っているのでしょうか」
「当然、狙いは明らかだ。あのリバースカードの罠にはめるための戦略。まぁ、コマツも分かってはいるだろうが……」

 しかし、コマツの目に迷いはなかった。

「バトルだ! 喰らえ、ダークドラゴンキングファイアッー!!」
「……っ!」

 攻撃力1500の炎が、アクセルとその僕を襲う。彼のライフが700削られ、7300となる。アクセルは炎を振り払い、笑う。

「……さすがだな。かまわずに来たか」
「当然だ。私は1枚の罠にビビっちまうようなチキン決闘者とは違うんだよぉ。カードを1枚伏せ、この辺でターンエンドとしておこう」

 アクセルのターン。彼はカードを引き、そして、しもべカードをディスクに置く。

「召喚、『スピード・ウォリアー』!」

 攻撃力は、900。コマツはせせら笑う。

「ふん。ザコが好きなのか?変わってるなぁ」
「あいにくだが、俺のデッキにはザコなんて入っていない」
「あはぁん?そういうのはさぁ、私の最強ドラゴンを倒してから言った方がいいんじゃなーい?」
「そうだな。なら、そうさせてもらおう。リバースカードオープン、『進化する人類』!」

 スピード・ウォリアーの筋肉がムッキムキになる。その攻撃力は、一気に上がり2400。

「な、なにぃっ!?罠じゃなかったのか!?」
「牽制が利かない相手だと分かったからな。ここからは、容赦はしない」

 アクセルの目に力が入る。コマツはその目に、若かった頃の、怖いもの知らずだった頃の自分を見る。

「……うぜぇ」
「装備魔法、進化する人類は、装備したモンスターの元々の攻撃力を2400にする。ただし条件として、俺のライフが相手より少なくなくてはならない」
「……そのためザコを攻撃表示にして誘っていたってわけか……!」
「さらに、スピード・ウォリアーの効果。バトルフェイズになると共に、攻撃力が2倍になる!」
「なんだとぉ!?」
「バトルだ!」

 さらに高められた戦士の力が、風になり、その足を包み込んで、竜に放つ渾身の一撃になる。4800の一撃を受け、竜王は粉々になる。

「ぐっ……うぉぉぉっ!!」

 コマツのライフは残り4700まで削られる。罠を覚悟はしていが、ここまでのダメージは想定外。しかし、それでもそのケアをするための策を隠していた。

「ちっ、トラップ、『ダメージ・コンデンサー』! 手札を1枚捨て、受けたダメージ以下の攻撃力のモンスターをデッキから特殊召喚するっ!」
「……ほう」
「来い、『アームド・ドラゴン LV3』!」

 攻撃力1200のドラゴンが現れる。ライフ逆転によってスピード・ウォリアーの攻撃力は戻るので、このドラゴンのそれを下回る。アクセルの絶対有利と思われた状況だったが、新たなしもべの登場によってまた分からなくなった。コマツのプロ決闘者としての力量の高さを、アクセルは実感する。

「……さすがだな。それに、凄まじい気迫だ」

 気迫というよりは、殺気という表現が適切とも言える、コマツのそれは、アクセルにも伝わっていた。

「当然だろう!? このデュエルに勝てば、天新海から褒美が与えられる! かつては掴めなかった夢が、富が名声がぁ、この手にもたらされるのだぁっ!!」
「褒美なんて信じているのか?」
「信じる以外に何がある!? たとえ奴らに遊ばれているだけでも、私のような力なき者は、それに従うしかない! 貴様もそうなんだろう!?」
「……カードを1枚伏せ、ターン終了」
「私のターン!」

 コマツのターン。彼のドラゴンの鼓動が、フィールドを震わせる。

「ドロー、そしてスタンバイ。ここで、アームドの効果発動!」
「っ!」
「自身をリリースし、次のレベルへと進化を果たす! レベルアップ! 特殊召喚、『アームド・ドラゴン LV5』っ!!」
「……!」
「メイン。そしてバトルでぇ……!」

 進化したドラゴンの攻撃力2400の足が、戦士へ迫る。

「攻撃! アームドパニッシャー!!」

 その一撃が、戦士を倒し、アクセルのライフを5800まで削る。

「HA☆HA☆HAー!! どうだぁ!?私のドラゴンの一発は!?」
「……きいたぜ」
「カードを1枚伏せ、エンドまで行く。だがこれでは終わらん。バトルでモンスターを倒したら、そのターンの終わりに、自身をリリースして進化する。それがこのLV5の効果だ!」

 渦に包み込まれ、ドラゴンが進化していく。

「疾風をまとい、進化せよ! 最強☆最高☆最高潮! 超絶無敵のキングだぜ! レベルアップだ!! 特殊召喚、『アームド・ドラゴン LV7』っ!!!」

 風が吹き、ドラゴンの方向が響く。攻撃力2800のドラゴンの目覚め。それは、アクセルを戦慄させる。

「ふっふっふっ」
「……ちっ、俺のドロー! スタンバイ、メイン……」

 高い攻撃力のモンスターに加え、伏せカードも2枚もある。うかつに攻撃はできない。

「モンスターをセット。ターン終了」
「私の番だなぁ。スタンバイで、リバースオープン、『リビングデッドの呼び声』! 墓地から、暗黒の竜王を復活させ、メインでリバース発動、『融合』!!」

 新海は口笛を吹く。

「ほー」
「……だ、ダブルリバース!」
「しかもどちらも攻撃を防ぐものではなかった。ふふっ、挑発的で良いなぁ」

 融合は複数のモンスターを合体させるカード。コマツは手札の『メデューサの亡霊』と竜王を融合させ……。

メデューサの亡霊と暗黒の竜王ということは、『スケルゴン』か!?」
「くくっ、違うねぇ!!」

 ドラゴンの叫びが、フィールドを揺るがす。

「世界を支配せし獰猛なる力。母なる大地を揺るがす龍の脈動! この星に、新たな最強を生み出せ! 融合召喚! 出でよ、『始祖竜ワイアーム』!!」

 攻撃力2700の最強のドラゴンが現れる。

「バトルだ。やれぇぇぇっ!! 刃尾双挟!!」

 尾を振り、守備モンスターを薙ぎ払う。

「……ちっ」
「そしてぇ、アームドの攻撃! 喰らえぇっ!!」

 龍の牙が、アクセルを貫く。

「スーパーアームドパニッシャー!!」

 アクセルは吹き飛ばされ、そのライフは大きく削られる。残りライフ3000。

「ふっふー。カードを1枚伏せて、ターンエンド」
「……ぐぅ……」

 アクセルはふらふらと立ち上がる。しかし今は満身創痍。

「ふん。最後までゲームを続けるスピリッツは褒めてやろう。だが、ここから勝つなんて無理むーりー」
「……俺のターン! ドロー、スタンバイ、メイン。そして、『マッシブ・ウォリアー』を召喚!」

 攻撃力600の岩石の戦士が現れる。コマツは呆れたように耳をほじる。

「HA! 本当にザコ専だな」
「言ったはずだ、ザコではないと。このカードは、自分がモンスターを召喚したターン、特殊召喚できる。『ワンショット・ブースター』を守備表示で特殊召喚!」

 今度のモンスターは攻撃力も守備力も0。しかし、その特殊能力を把握しているコマツは、これまでのような蔑視はしなかった。

「……そいつは……!」
「自分のモンスターがバトルを行ったターン、自身をリリースすれば、バトルの相手のモンスターを破壊できる」
「な、なに!? くっそー、私のワイアームがやられてしまうぅ〜」
「誘導しようとしても無駄だ。ワイアームはモンスターの効果を受けないカード。ワンショット・ブースターの効果を使っても不発になるだけ」
「ちっ、気づいていたか……」
「行け、バトルだ! マッシブで、LV7を攻撃!」

 小さな岩石の戦士の決死の突進。それは観客の多くに、リスキーな賭けと思われたが、コマツはそうは思っていなかった。

「だが、私も気づいているぞ。そのモンスターはターンに1度だけ破壊されないうえに、そのバトルで発生するオーナーへの、つまりお前へのダメージは無効になるという効果をもっていたはずだ」
「その通り」
「つまり、攻撃力が低いにも関わらず一方的に私のモンスターを倒せるコンボが成立したわけだ。だが、そのコンボは無駄だ!」
「!?」

 攻撃を突如現れた渦が飲み込み、消滅させる。

「『攻撃の無力化』。攻撃を無効にした上で、バトルフェイズ自体をも終了させるトラップ!」
「……だが、まだ俺にはこれがある」
「?」
「魔法カード、発動!」

 フィールドに光の剣が振り注ぐ。

「『光の護封剣』。アンタの攻撃は3ターンの間だけだが、封じられる。ターン終了だ」
「……くだらねぇ」

 コマツのターンになると同時に、光の剣は早くも消えてしまう。アクセルの目が見開かれる。

「……!」
「『魔法除去』。このカードはどんな魔法カードも破壊できる。魔法効果なんか通用しないんだよねぇ」

 歓声が上がる。新海も、感嘆のため息をもらす。

コマツの戦略は完璧だ。このデュエル、結果は見えたな」

 アクセルの前に、2体の最強ドラゴンが立ちふさがる。絶望的な状況。

「……」

 しかしそれであっても、その瞳の炎は消えない。コマツは舌打ちする。

「やはりうぜぇな。ガキって感じでよぉ」
「……あんたに一体何があったんだ?」
「なぜそんなことを聞く?今から負けるというのに」
「……悲しそうな目をしていたからから、かな」
「……」

 コマツはしばらく黙った後、フッと笑い、過去の振り返りを始める。

「……私はな、ドラゴンが好きだったのだ。その気持ちのままにデュエルをはじめ、プロになった。成績も悪くはなかったと自負している」
「……」
「やがて、ドラゴン塾という塾を開いた。ドラゴンの素晴らしさを伝えるために、世界最高のドラゴン使いになるために。だが、経営に行き詰まり、その迷いで成績を落とし、塾を手放さざるをえなくなった。そのまま堕落し、今は賭けデュエルでなんとか行き永らえているところだ」
「……」
「ドラゴン使いには良いデュエリストが多い。わざわざ私のところに来る奴などいないのだ。私の夢は死んだ」
「……」
「このくそったれな人生に革命を起こすには、ここで勝つしかないのだ! お前のような小僧は、完膚なきまでに潰すんだぁっ!」
「……そうか」

 コマツが、カードを振りかざす。それに風が宿り、そして、最強の息吹が吹きすさぶ。

「話のついでに、特別に見せてやろう。我が、切り札! このカードはLV7をリリースすることで、特殊召喚できる!」

 地が叫び、脈動する。

「天使の羽もぎ、悪魔の剣砕け。強者統べるこの大地に、新たな龍の風が吹く! レベルアァァァップッ!!」

 天に掲げられた旗に導かれるよう、天空から、真の最強が降臨する。

「『アームド・ドラゴン LV10』っ!!!!」

 攻撃力3000の咆哮。アクセルの全身を震わせるプレッシャー。いまだかつてないほどのパワーが、戦士たちを襲う。

「……くっ!」

 アクセルの場には2体の壁モンスターがいる。加えてマッシブは耐性持ち。しかしその事実が安全には繋がりえないことを、アクセルは決闘者としての本能で理解していた。そして、龍がその牙を剥く。

「行くぞ。LV10の効果、発動ぉぉぉっ!」

 龍の腕に風が集まり、それは巨大な竜巻になる。

「手札1枚を捨てることでぇ、相手の場の表側表示のモンスターを、全て! 破壊するぅぅぁっ!!」
「なにっ!?」

 竜巻がアクセルの場に放たれ、戦士たちを飲み込み、破壊していく。

「……くっ」
「これでお前を守るものは皆無! 終わりだ、LV10の攻撃!!」

 龍が突進し、その腕を振り上げる。

「ハイパーアームドパニッシャー!!!」

 叩き込まれる一撃。凄まじい衝撃波。

「ぐぅぅぅっ!」
「くくっ、ははははは!」

 耐えるアクセルと笑うコマツ。龍のプレッシャーが、会場を大きく揺るがす。アクセルの終わりの時に、新海は邪悪に微笑む。

「……終わったか」
「いや……まだだ!!」

 アクセルの絶叫。そして、衝撃波が彼を避けるように、その前で別れる。砂煙が上がり、アクセルの姿が隠れる。新海とコマツは信じられないという顔をする。

「……なんだ!?」
「これは……!?」

 砂煙が晴れ、アクセルの姿が露になったその時。

「トラップカード……『ガード・ブロック』!!」

 全ての答えは明らかになった。ガード・ブロックは、バトルによるダメージを1度だけ無効にし、1枚ドローするという効果を持つ。

「……たしかに、今使うのが最善のタイミングのカード。だが、なぜだ?そのカードを使うタイミングはこれまでもあったはず」
「LV3や5や7と言っているんだ。10がありそうと思うのは自然だろう」
「……たいした勘のよさだな。だが、ワイアームがまだ残っている! 攻撃だ!」

 ワイアームの突進を受け、アクセルのライフは200まで減る。

「これで、ターンエンド」
「……アンタは言ったな。夢が、死んだと」

 うすく笑みを浮かべながら、アクセルは顔を上げる。

「……それがどうした」
「俺の夢も聞かせてやりたいと思ってな」
「……ふっ。冥土の土産に聞いてやろう」
「俺の夢は、世界最速だ」

 その場にいた全てのものが、一瞬肩を震わせる。アクセルの顔は、これまでの静けさが嘘のように、躍動感に満ちていた。しかし、その言葉の突飛さが、微妙な空気感を生み出す。

「……くくっ、はははははっ! それはまた、無理難題というか、ガキらしい夢だな」
「あぁ。そう、よく言われるし、俺もそう思う。それを実感する度に、この夢は死にそうになる」
「……」
「だが、その度にまた追いたくなるんだ。この夢は何度でも蘇る。決して死なない」

 コマツは目の前の青年から逸らし、力なく呟く。

「……ガキだな。現実が何も分かっていない。私が苦しんできた世界は、お前の世界とは違う」
「そうだな。だが、俺たちは今デュエルをしている」
「……?」

 アクセルは微笑み、アームド・ドラゴンを指差す。

「現実離れしたモンスターが、あちこちを飛び回って、まるで冒険しているような気分になれる。それがデュエル。デュエルをしてる間だけは、俺たちはいくらでもガキになれるんだ」

 振り返り、自らの切り札を見つめるコマツの胸に、幼い頃の記憶が、かすかに蘇る。草原を風が撫でると、ドラゴンが空を飛び回り、火を吹いていて、どんな強い相手でも負けはせず、絶対に諦めずに闘う。そんな姿に憧れた記憶。

「……」
「今度は俺のターンだな。見せてやる、俺の切り札!」

 アクセルは笑い、上着を脱ぎ捨てる。そして、デッキに手をかける。その姿が、コマツにはまぶしかった。しかし、目は逸らさない。その眼に映った青年は、紅く、光り輝く。

「はぁぁぁぁっ!!」

 デッキの一番上のカードを引き、そして、天をめがけて投げる。カードが宙に舞い、その下で、その持ち主が胸に手を当て、叫びだす。

「解き放て、最強のスピード!このドローが、轟速の世界の扉を開く! 行くぜ……」

 アクセルが高速で体を回転させ、風を切り、そのままのスピードで。

「アクセルドロォォォッッ!!!」

 落ちてきたドローカードを掴む。それを一瞥し、彼は笑う。

「来たぜ……俺の相棒っ!! チューナーモンスター、『ジャンク・シンクロン』を、召喚!!」
「……チューナー!? 貴様、まさか……!」
「そうだ。こいつが召喚された時、墓地から、レベル2以下のモンスターを特殊召喚できる。来い、『ドッペル・ウォリアー』!」
「……そいつは……ワイアームで倒したモンスターか……!」
「そうだ。この時のために墓地に送っておいた。そして……」

 チューナー。それはある召喚を行うための扉を開くためのカード。そう、これが、轟速の世界の扉を叩く1枚。アクセルの前に分厚いその扉が落ちてきて、彼を押しつぶさんとのしかかる。彼はそれを受け止め。

「墓地のヘッジホッグは、場にチューナーがいれば墓地から特殊召喚できる。復活!!」
「こ、これは……」
「これで俺の場に、チューナーと、チューナーではないモンスターが揃った。これ……でぇっ!」

 アクセルが扉を殴りつけ、破壊する。扉の向こう側、轟速の世界の猛者たちが、待ちわびたと言わんばかりに声を上げる。アクセルはディスクからカードを15枚取り出す。これはエクストラデッキという、メインデッキとは違うものである。彼はその中から何枚かのカードを引き抜き、それを上に勢いよく投げる。

「発動……アクセルデュエル!!」

 エクストラデッキが解放された闘い。それはさらなる次元の闘い。全てのリミッターを解き放った彼のデュエルを、人はアクセルデュエルと呼ぶ。

「レベル3のジャンク・シンクロンを、レベル2のドッペル・ウォリアーにチューニング!」

 チューナーモンスターとチューナーではないモンスターを墓地に送ることで、そのレベルの合計と同じレベルのモンスターをエクストラデッキから召喚する。

「轟速の世界より生まれし、ブレーキの横にあるものぉっ! ブンブンブーンの勢いで、ハートにズッキュン、デスティニーッ!!」

 アクセルは落ちてきたカードを掴み、それをディスクに置く。これが。

シンクロ召喚! 正義を起こせ、シンクロチューナーモンスター! 『アクセル・シンクロン』!!」

 扉の向こうから、高速で司書が現れ、フィールドに突風を起こす。新海が笑い、コマツは目を見開く。

「……来たか。轟速の世界の力……シンクロ召喚!」
「……シンクロ使いだったとは……!」
「ドッペルがシンクロの素材になった時、場にレベル1のトークンを2体特殊召喚できる。さらに、アクセルの効果発動! デッキから「シンクロン」モンスターを墓地に送って、そのレベル分、自らのレベルを上げるかまたは下げる。レベル1、『ジェット・シンクロン』を墓地に送り、レベルを上げる!」

 アクセル─アクセル・シンクロンの方である─のレベルが元々の5から、6へ上がる。ジェットは墓地にある時、手札を1枚捨てて、自身を墓地から特殊召喚できる。

「手札の『レベル・スティーラー』を捨て、ジェット復活。そして今墓地へ送られたスティーラーは」
「場のレベル5以上のモンスターのレベルを1つ下げれば、墓地から特殊召喚できる、か」

 アクセルは落ちてきたカードを掴み、そのままディスクに置く。

「ジェットをトークンにチューング。今こそ光差せ。轟速の世界より生まれし希望の未来。新たな可能性を胸に、この大空へ翼広げフライアウェイ! シンクロ召喚! 正義の光、シンクロチューナーモンスター、『フォーミュラー・シンクロン』ーっ!!」

 2つの光から、新たなしもべが生まれる。そして、新たに落ちてきた2枚も鮮やかに掴む。

「このフォーミュラーシンクロ召喚された時、1枚ドローできる。そしてアクセルのレベルを下げてスティーラーを復活させ、アクセルとスティーラーからシンクロ召喚。轟速の世界より生まれしサンゴよ。そのバッシャバシャのウォーターで、みんなの喉はトゥルットゥル!! 正義の潤い、『瑚之龍(コーラル・ドラゴン)』!!」

 レベル6のシンクロモンスター。そのレベルが下がり、スティーラーが現れる。そしてコーラルとスティーラーが激しい光の中で交差する。

「轟速の世界より吹く風が、奮い立つ勇者の息吹となる。今こそ光差せ! シンクロ召喚、『スターダスト・チャージ・ウォリアー』!!


 光が弾け、新たなしもべが姿を現す。さらに、アクセルがデッキに手をかける。
「チャージがシンクロ召喚された時、ターンに1度のみドローできる。同じく、コーラルも墓地に送られた時にドローできる効果を持つ」

 つまり、2枚のドロー。顔に力が入る。このドローがこのターンの結末を左右する。その事実を多くの者が理解していた。勝負に臨む青年を見て、コマツは目を細め、そして笑う。

「……ガキだな」
「ん?」
「ガキというのは後先考えないものだ。引けるものなら引いてみろ。お前の、切り札を呼ぶためのカードを!」
「……あぁ!」

 そのカードがデッキから顔を出し。

「……来たぜ」
「……ふっ」

 宇宙の果てに輝く星が、産声を上げた。最後の3枚が、宙を舞い、アクセルの手に舞い降りる。

「このカードは場にチューナーがいれば、手札から特殊召喚できる! 来い、気高き王者のしもべ、『シンクローン・リゾネーター』!」
「……レベル1のチューナーモンスターか……!」
「1のシンクローン、2のボルト、1のトークンより、シンクロ召喚! 轟速の世界より生まれし厳正なる時の番人。ビシビシビシィのジャッジで、ここに示せよユアジャスティスッ! 『虹光の宣告者』!! そして……」
「……ふっ」
「待たせたな」

 響く。ドラゴンの産声。コマツはドラゴン使いとしての本能で感じていた。とんでもない上物がやってくると。

「レベル6のチャージとレベル4の宣告者に、レベル2のフォーミュラーをチューニング!」

12の光が天に昇り。

「絆で紡がれし正義の星よ。輝け、交われ、ひとつとなれ! そして! 最強無敵の……ドラゴンとなれ!!」

 アクセルの足下に大きな筆が落ちてくる。彼はそれを掲げ、大胆に、しかし美しい字を、激しく、どこからか出てきた白紙に刻む。その文字は。
──正義!!──

「これこそが我が信念、我が魂!はぁぁぁぁぁっ!!」

 星が煌めき、巨大な石版が落下してくる。彼はそれを受け止め、地に叩き付け。

「正義……降臨ぃんっ!! シンクロ召喚!!!」
「っ!」
「最速の証……」

 大量に流れる流れ星。天に昇る大量の花火。真紅の光をまとい、舞い降りる龍。その名は。

「『シューティング・クェーサー・ドラゴン』!!!!」

 世界の全てを優しく包む、至高の光を浴びて、フィールドが光り輝く。美しき赤色に。

「これが……」
クェーサー。宇宙で、もっとも輝く星の名だ」
「……かっこいい……」

 その攻撃力は4000。さらに、アクセルの場に十字架が現れる。

「『死者蘇生』。蘇れ、アクセル! デッキからジャンクを落とし、レベルを8にし、そのレベルを下げスティーラー召喚。そして、チューニング!」
「……ふふっ」
「轟速の世界より響く王者の咆哮。列をなせ、永久不滅の正義の光! シンクロ召喚! 降臨せよ、覇者の魂!! 『レッドデーモンズドラゴン・スカーライト』!!!」

 炎の中から生まれる王者のしもべ。コマツは、耐えきれないといった様子で笑う。

「はっはっはっ! やりたい放題やってくれたなぁ。ここまでやられると、逆に気分が良い」
「ふっ。どうだ、俺のドラゴンは?」
「悪くはないな。だが、私のドラゴンの方がずっとカッコいい」
「そうか。じゃあ、決着をつけるとするか」
「いいだろう。来い!」
「行くぞ! レッドデーモンズで、ワイアームを攻撃!」

 攻撃力3000の王者の拳が風をきり、古の暴君が牙を剥いて迎え撃つ。牙が拳を捉えた、その時、拳に燃える炎が牙を溶かし、そのまま拳が牙を砕く。

「まだだ!」

 背後から忍び寄る鋭い尾が、王者を傷つける。しかし、王者はひるまず、灼熱の息吹で暴君を焼き払う。

「……行け」

 王者は全身をまとうパワーと炎で、自らを縛る呪縛を払い、そのまま暴君へと突進していく。暴君と王者が互いの拳をつかみ合い、そして、王者は最後の一撃のために口を開く。

「アクセル・ヘル・バーニング!!」

 燃やし尽くす、決着の炎。暴君は崩れさる。しかしその手は最後まで、王者と固く掴み合っていた。

「……行け、クェーサー!!」
「迎え撃て、アームド・ドラゴン LV10!!!」

 攻撃力の差は歴然。勝敗は見えている。しかしそれよりも大事なものが、二人にはあった。

「うぉぉぉぉぉっ!!」
「いっけぇぇぇっ!!」

 死力を尽くして闘ってくれる友の姿を、目に焼き付けたい。その美しさと勇敢さに胸躍らせていた。二人はこの時、まぎれもなくガキだった。

「正義創造! アクセル・クリエイション・バースト!!!」

 正義の星より注がれる紅い光に、アームド・ドラゴンは消えていく。その視線とコマツの視線が重なり、彼は笑う。

「……ひさしぶりだな。お前が、笑って見えるのは」

 コマツのライフは3400になる。

「……俺のライフはまだある。次のターンで……」
クェーサーの効果! このカードはシンクロ素材となったチューナーではないモンスターの数だけ、1度のバトルに攻撃できる。つまり2回!」
「……」

 龍のアギトから、最後の光が放たれる。攻撃力4000のダイレクトアタック。コマツのライフは0になる。

「……ふっ」

 ふたりの視線が交わる。アクセルの目はまっすぐで、決して逸れない。コマツは、それを見ているうちに可笑しくなって、笑った。

「……お前の勝ちだ」

 このデュエルは、アクセルの勝利で決着した。

 

「いいデュエルだった。またやろう」
「……忘れたのか?敗者は連れられ、地下に送られる。これで終わりだ」
「あんたが終わりと思わないなら、終わりではない」
「……ガキが。ふん」

 踵を返し、自分からステージを降り、地下へと歩いていく。そんなこまつを見ているアクセルに、スポットライトが浴びせられる。

「おめでとうございます、アクセル選手ー!! さぁ、願いをどうぞ!! この街のリーダー、天新海様が、どんな願いも叶えてくださるでしょう!!」
「……あぁ」

 アクセルは笑い、VIP席の新海を見据える。交差する視線。そして、アクセルは地面に唾を吐く。

「潰れろ……」
「?なんですって?」
「ブッ潰れちまえ、こんなクソ大会ぁーっい!!!」

 アクセルが絶叫した瞬間、スタジアム全体が揺れ、そして、様々な咆哮から怒号が響く。新海は目を見開き、周りの者たちに怒鳴る。

「おい! どうなっている!?」
「え、えー……こ、これは……い、いやまさか……」
「さっさと言え! 焦らすな!」
「ち、地下の連中がゲートを突破し、地上へ溢れるように……」
「なーにー!?」

 監視カメラを切り替えると、なるほど、その通りの光景が広がっていた。皆、決闘盤をつけ、元気に走り回っている。

「……ちっ! とにかく観客を避難させろ!」
「は、はいぃっ!」
「……あの連中にそんなことができるはずが……誰が……!」

 新海は思い立ち、その男に目を向ける。コマツもまた、その男に驚きの目を向け、そして問いかけた。

「……お前が?」
「片棒を担いだだけだ。アンタも、さっさと行った方が良いんじゃないのか?」
「……手引きをするわりには、最後は粗いんだな」
「こんなところに来たのは自分なんだ。抜け出すのも自分の力で、っていうのが妥当だろう」
「……ふっ。厳しいなぁ」

 コマツは背を向け、そして、走り出す。そして、小さく。

「……また会おう、クソガキ」

 そう、呟いた。


「新海様、はやく逃げましょう!」
「……くくくっ」

 最後に、また目が合う。新海は額に血管を浮かび上がらせながら、視線を外す。

「……アクセル。シンクロ使いの決闘者……!」

 彼は笑っていた。口が裂けたのではないかと、部下に思わせるほどに、凄まじい笑顔だった。

「貴様は、いずれ俺が狩る」

 冷静になり、去っていく。その背に、龍と騎士が彼を守るように寄り添う。

「生と死の理すらも超越する我が召喚、『ペンデュラム召喚』でな……!」


「おーい、アクセール」

 アクセルが会場から出ると、そこには多くの、決闘盤を掲げた決闘者がいた。

「これで全員か?」
「うん。君がスゴい派手にやってたから、おかげで簡単だったよ」
「ふん。お前が困ってる人を助けたいーとか言ったんだから、大会にもお前が出ればよかったものを……」
「あはは。ごめんね」
「べ、別に謝ることでは……。で、バカどもは治ったのか?」
「うん。地下でこっぴどくしぼられて、普通のデュエルの良さを再確認したみたいだよ」
「そうか。バカは死ななくても治るときもあるんだな」
「毒舌だねー。えへへ、じゃあ、かえろっか?」
「あぁ……ん?」

 ふたりが話していると、決闘者が皆、ふたりを中心に集まってきていた。アクセルに先ほど敗れたタスミも脱出の時に協力した仲間と共に、肩を組み、笑っていた。

「おい、お前ら!」
「俺たち、地下から抜けれた記念にその辺でデュエル大会やるんだ!」
「お前らも来いよ!」
「アクセルー! 次は絶対負けんぞー!!」

 これらを言った者たちは皆、中年のおっさんであった。懲りているのかいないのか。ふたりはため息をつくが、アクセルが息をついたあと、勢いよく走り出していた。

「呆れた……」
「……ふっ、やっぱ決闘者は、みんなガキばっかだなぁ!」
「え?あ、待ってよー」

 デッキを取り出し、また、闘いの始まりのコールが響く。最速で最強。その男の名は。

「デュエル!!」

 轟速の決闘者、AXEL。

 

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