熱血バカガキの遊び日記

漫画アニメ特撮カードゲーム大好きな男の趣味ブログ。

遊戯王Link AXEL "Gold" 第3話 その名は天新海!!

「……ぬぅ……!」

 敗北。自分がデュエルに参加したのは途中からだが、それでも敗北の事実に変わりはない。そして同時に、先輩を侵していたウイルスの消滅を感じていた。

「これが……ゴールデンレジェンドのクリスタルの力か……!」

 この世界の万物はクリスタルから生まれた。当然ウイルスもクリスタルから生まれている。ならばより強いクリスタルを宿したカードの力をもってすればウイルスを掻き消すことも可能というのは道理。だが、ヘブンが作るウイルスは全て彼自身のエースモンスターのクリスタルから生まれている。つまり、この敗北は自身のエースモンスターの間接的な敗北をも意味する。
──許さん……!──
 ヘブンは怒りの念を込め、目の前の男とそのしもべを見やる。堂々と自分を見つめる少年、神々しい黄金の龍。自分を敗北させた者たちを睨みつける。

「金色遊旗……ゴールデンレジェンド……!」

 やがて、先輩からヘブンの意識が剥がれ落ちて行く。先輩はふらつき、Dホイールから落下する。猛スピードで走行している最中の落下、即ち死。しかし。

「っ、先輩!!」

 遊旗が、その手を掴む。助けられたと、ホッとした顔をする遊旗とは裏腹に、先輩の顔はひどく歪んでいた。うらめしそうな目をしてすらいた。

「なんで……なんでいかせてくれなかった! 私は、お前を傷つけ……街を破壊して……うぅっ……!」
「俺は、セキュリティーだから、あなたをいかせることはできない」
「……っ」
「それに今のデュエル、あなたからの教えがなければ勝てなかった。この街には、あなたの力が必要です」
「……厳しいな」
「……そう鍛えたのもあなたです。先輩」

 先輩は微笑み、気を失った。すぐに、遊旗のディスクのモニターにヘブンが映し出される。

「よぉ。約束なんかほっぽって逃げ出したかと思ったぜ、ヘブン」
「言ったはずですよ。ワタクシは約束を守る方だとね。あなたのそのドラゴン、私が用意していたワクチンと同等かそれ以上の作用があるようです。そこの彼もウイルスから解放されたと言っていいでしょうね」
「だが、まだ暴走している者はいる。約束通りワクチンはもらう」
「そうですねぇ……んっ、おっと」

 ヘブンは一瞬言葉を止め、次に眉を潜め、最後に笑った。

「……どうやらワクチンは不要になったようです。では後日、ワクチンと同じだけの価値があるものをお送りするとしましょう」
「不要になったってことは、他の患者が全員ウイルスから解放されたという意味か?」
「察しが良くて助かりますねぇ。では、今日のところは失礼しま」
「次はちゃんと闘え」
「は?」

 遊旗の目は、見たことがある目だった。それは自分の目。遊旗のそれはヘブンの目と同じ光を放っていた。嫉妬に狂い、愛に飢え、自分を保つことすらままならない。そんな弱い人間の目だった。なのに、なぜ自分とヤツは立場が違うのか。ヘブンの疑問をよそに、遊旗は言いたい放題言う。

「自分のデッキ、自分のカードで、正々堂々俺と闘え。そこで、俺と貴様の決着をつける!」
「かっこいいですねぇ。でも、ワタクシがそんな誘いに応じるとでも?」
「お前は決闘者だ。負けてスゴスゴと引き下がるヤツじゃない。お前とのデュエル、楽しみにしてるぜ」
「不謹慎ですねぇ。犯罪者との闘いが楽しみだなんて」
「デュエルだけは話は別だ。違うか?」
「……ふっ、あなたとは良い友達に」

 遊旗は駆け寄ってくる幼なじみの姿を認め、顔を緩める。

「遊旗っ!!」
「アリス!!」

 抱きしめあう。アリスはやわらかくて大きくて、触れているだけで遊旗を安心させた。これまでの闘いの疲れが吹っ飛ぶようだった。しかししばらくすると、アリスが恥ずかそうにしだす。

「ゆ、遊旗……そ、その、恥ずかしいっていうか……その、当たって……あっ……!」
「アリスお姉ちゃん……あったかい」

 あまり聞きたくなかった言葉が聞こえたような気がしたが、なんとか平静を保ちながらアリスは問う。

「お、お姉ちゃん?」
「うん。年下の可愛い男の子が年上のお姉さんに可愛がられるっていう漫画を見て、あのシチュに憧れたんだけど、アリスお姉ちゃんは同い年だから無理だなって思って。だからぼくが退化すればギリいけるかなって」
「全然いけてないと思うけど……」

──でも、遊旗に甘えられるのは悪くない、かも──
 アリスはアホだった。

「……えへへ」

 遊旗の頭が自分の胸元に来るように彼をしゃがませ、そして、彼を抱きしめようとする。そうするのが、お姉ちゃん味を一番出せるかなと思ったからだ。しかしそこでふいにピエロと目があった。

「あ……」
「ふふっ、はじめましてアリスさん。あなたのことは存じ上げておりますよ。アカデミア高等部に進学から半年もたたずにブルーに昇格した秀才で」
「きゃーっっ!!!?」

 遊旗もさすがにヘブン状態から目を覚まし、しかしアリスにしがみつくことはやめないまま宿敵を睨む。

「貴様……よくも俺の野望の邪魔を……絶対に許さねぇ!!」
「その怒り、全てカードに込めてかかってきて下さい。粉砕しますがねぇ」
「この人なんでさっきから普通にしゃべれてるの」
「望むところだ。首を洗って待ってなっ!!」

 通信が切れる。緊迫した場面の中、遊旗はアリスに向き合い。

「……アリスお姉ちゃん……だっこして」
「え、ここから戻るの!?無理じゃない?」
「ちくしょー!!」
「そ、それに、お姉ちゃんじゃないありのままを私を見て欲しいっていうか……あ、愛して……ほし……い、いやっ、そのっ」
「アリス……ごめん、俺自分勝手だったな。俺、お前のおっぱ」
「ドカーン!!」

 突然爆音が響き、遊旗も理性を取り戻す。爆音はスタジアムのすぐ近くで起こったもののようだった。

「な、なにが起こってるんだ!くそっ、行ってくるぜアリス!!」
「え、なにこの強引な展開、ちょっ、ちょっと待って私まだ」

 遊旗が外に出ると、そこにはセキュリティーデュエル部隊の隊員たちが十数人倒れていた。彼らは皆ウイルスに侵されていたはずだが、ヘブンの話によればウイルスに侵された者はいなくなったらしい。つまり自然に考えれば。

「ククク……アーッハッハッハッハァ!!」

 見るからに勝ち誇り隊員たちを見下ろしているこの男が、隊員たちを倒したということになるだろう。遊旗は彼に見覚えがあった。そう、彼こそは。

「リバースコーポレーション社長、天新海だ! そして……見るがいい!!これがっ!!」

 舞い上がる、竜の騎士。誇り高く、雄々しく、主を守る絶対の守護神。

「『ビッグバン・ペンデュラム・ドラゴンナイト』だっ!!」

 最強の力が、舞い降りる。遊旗は後ずさりする。そのモンスターから放たれるエナジーはあまりに強く、あまりに誇り高かった。

「これが天新海の切り札か……。はじめて見た!すげぇ!!」
「ペンデュラム。それはデュエルの新しい力。詳細は明日の落成式で語るが、今回の新システム導入はこのペンデュラムに起因するものだ」
「ほえー」
「ペンデュラムはこのアルティメットドミノワールドの発展の象徴となるだろう。ペンデュラムを使うにせよ使わぬにせよ、この新しい風に乗れぬ決闘者に未来はない! 諸君の真価が試される時が来た!」
「うん、うんっ!」
「今……闘いの神話が始まるのだ」
「うぉぉぉっっ!! 新海社長かっけぇぇっ!!!」

 描写が遅れたが、新海はテレビ番組の撮影中だった。遊旗は燃え上がっていた。新環境への期待の高まり、おさまらぬ興奮。しかし少し疑問もあった。

「あれ、でもなんでこのタイミングでテレビ録ってんだ?これじゃまるで」
「まるでも何もその通り。新海くんは今回の事件を自社製品のCMに利用した。今回の事件を自分が解決する様を番組にして、自分の強さと明日の落成式をアピールした。明日の落成式なんて放っといてもみんな注目してるのにね」
「なるほど……ってお前誰だよ!?」
「白銀遊傑」

 少女は淡々と告げる。歳はたぶん18くらいだろうか。黒い髪がサラサラと風になびく。顔立ちは整っていて、涼しげでありながら幼さを残していて、端的に言うと美しかった。静かな印象の女性だった。

「きみ、金色遊旗くんでしょ?」
「お、俺有名人?まいったなー」
「私この縄で人を縛る練習がしてるんだけど、いい?」
「いいぜ!」

 かなりゴツい縄を出されて正直面食らったが、機嫌も良かったし特に断る理由もなかったので遊旗は了承した。

「ねぇ、なんでこんな練習してるの?彼氏にやるの?」
「ま、まぁ、そんなところですね」
「へー、熱心だな。彼氏がうらやましいなー」
「……は、はい……」

 遊傑は気まずそうに遊旗を縛る。しかしまだほとんど縛れていない段階で、思わぬ来訪者が現れた。

「見つけた……見つけたぞシルバァァッ!!」
「あっ、やばっ!」

 気づくと、新海がすぐそこだった。遊傑はトンズラする。しかし彼女が逃げたことに気づいてない遊旗は、純粋に新海に会えたことへの喜びを爆発させる。

「シルバー……む、いない。気のせいか。で、貴様は……」
「新海社長、はじめまして! セキュリティーデュエル部隊の金色遊旗です! いつもお世話になってます!!」
「金色遊旗……許さん!!」
「なんで!?」
「無論、俺の獲物を横取りしたからだ! 洗脳されたアホ共は全員俺が狩る、そういう番組内容にする予定だったんだ!!」
「自分のやりたいシチュを他人に押し付けるなんて、そんなの良くないぞ!」
「お前がいうな!って言わなきゃいけない気がした! ともかく貴様は許さん、デュエルだ!!」
「望むところだ!」

 そんなわけで、因縁の対決が幕を上げようと

「あのー、新海様。盛り上がってるところ悪いんですけど」
「なんだ!?」
「明日の式の準備もありますし、そろそろ帰らないと」
「ほんとだ!帰るぞ!」
「あ、ちょっと……」

 少し困惑してる遊旗に対して、新海は神妙な顔をしてみせた。彼の目は闇を見つめていた。そして、静かに口を開く。

「貴様、自分の先輩を倒したらしいな」
「な、なんでそんなことを」
「我がリバースコーポレーションの情報網をなめるな。貴様のさっきのデュエルは普通にネットに動画で上がっていた」
「……たしかに、俺は先輩を倒しました。ウイルスから救い出すために」

 でも、なんで新海がそんなことを気にするのか。遊旗が抱いたその疑問は本人の口からすぐに語られた。

「命がけの闘いで憧れの存在を倒すこと。それは並大抵のことではない。俺には想像することすらできぬ程の覚悟が、勇気が、遊旗、貴様にはあったはずだ。遊旗だけに」
「……たしかに、あの闘いは辛かった。でも俺がやらなきゃいけなかった」
「……そうか。己に勝ったな、遊旗」

 新海は話している間ずっと、遊旗の目を真っすぐ見据えていた。正直ちょっと怖かった。
 なんとなくだけど、この人はきっとこれから、覚悟を決めて勇気を出さなきゃいけない、そんな闘いをこれからしなければならなくて、その苦しみと今も闘っているのだと、遊旗はそう思った。

「明日、落成式で待つ! 貴様とのデュエル、楽しみにしている」
「あぁ、俺もだ! あ、でも、街こんなだから明日も仕事しなきゃいけないかも……」
「治安維持局に話はすでにつけてある。誰にも、俺の狩りの邪魔はさせん」
「よーし! 明日、最高のデュエルをしよーぜーっ!!」

 新海は背を向け、静かに去っていった。顔は見えなかったが、きっとデュエルへの期待で笑顔になっていたのだと、遊旗は思った。

 

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