焼き肉の熱血遊び日記

漫画アニメ特撮カードゲーム大好きな男の趣味ブログ。

第3話 命の危険!?ナイトメアブラックvsゴールデンレジェンド!!

「青き龍は勝利を。赤き竜は可能性をもたらす。そして金色の龍がもたらすもの、それは新たな伝説なり」
「なにが言いたいのです?」
「君にゴールデンレジェンドを持つ資格は無いということだよ」

 ふたりの男のデュエルがあった。それは10年前。内容は極めて一方的で、勝敗は誰の目にも明白。負けている方の男は地を叩き、強く歯ぎしりし、慟哭する。

「その理由は、まぁじっくり考えることだ。では終幕」

 勝っている方の男の元に、龍が舞い降りる。それは勝利を司る龍。そのアギトに力がみなぎり、全てを打倒するブレスが放たれる。

「うわぁっ! ふ、ふぇぇ……全滅だー!!」
「私の勝ちだ」

 ゴールデンレジェンドは『トゥルースオリジン』に名を連ねる1枚である。この世界で流通しているカードの大半はリバースコーポレーションによって作られたものであるが、ほんの数枚だけ、はるか太古から伝わるカードもある。いつからか人はそれをトゥルースオリジンと呼ぶようになった。

「はぁ……はぁ……金色遊旗」
「うん?」
「あの小僧にゴールデンレジェンドを渡すつもりなのでしょう?この私を差し置いて、あの小僧にぃ!!」
「ふ、相変わらず調べが早いね。これからも私の右腕として、その力を活かしてほしい」
「ま、待って!」
「これから妻と出かける用があるのでね。私は失礼するよ」
「はぁ……はぁ……妻とデート……!?」

 敗北者は絶叫する。彼は二重の屈辱を感じていた。彼は最近妻と別居したばかりなのである。ふたりの仲は自動販売機から出た直後のコーラのように冷えきっていた。ちなみに彼は冷えたコーラが好きだった。
 勝者は去る。龍を引き連れて。その龍の眼は澄んだ青空のような、どこまでも続く自由を感じさせるような、そんな青色だった。


 そして──。

 

「……デュエルか」

 時は現在に戻る。
 遊黒行きつけの喫茶店の店主は、ひとりトボトボと歩く。もちろん、自分の店に向けてだ。お客さんたちにケガはないだろうか、店はどこか壊れてないだろうか、あの遊旗という少年の傷は、まぁ大丈夫そうか、などなど、いろんな思考がよぎる。
 その中で、ひときわ強く頭を支配するものがあった。それは1年前の記憶。彼の娘がシャドウに襲われて消息を絶つ、その瞬間の記憶。

「……っ」

 痛み。体ではない、心の痛み。その時のことを思うと、どうしようもなく胸が痛むのだ。
 心の痛みは他者には伝わらない。彼の場合、周りの人間は皆優しかった。家族を失ったものにかけるべき言葉の模範解答みたいな言葉をたくさんもらった。ありがたかった。しかし意地の悪いことに、その言葉の端々に宿る粗を探してしまう。そして粗を無理やり見つけ、決めつけるのだ。この人たちは自分の悲しみを知らない、この胸を刺す悲しみの何も理解しちゃいない、と。彼は幸福に暮らしている人間全てに嫉妬していた。
 そんな、自分でも分かるくらいに捻くれた考え方によって、彼は周りの人間を遠ざけるようになった。

「こんにちは。良い天気ですね」
「……あんたは?」

 それは中年の男性だった。店主も中年なので、ふたりのオッサンがここに出会ったということになる。店主は30半ばだったが男性は40〜50くらいに見えるので、店主は一応相手が年上という体で話すことにした。

「おっと失礼しました。私、リバースコーポレーションという会社で副社長をやっております、二宮 次郎と申します」
「は、はぁ。で、そんなお偉方が私に何か?」
「是非お耳に入れておきたい話があったもので。あなたの行方不明の娘さんについて」
「な、なに!?」

 店主は副社長の肩をガシッと掴む。すぐに無礼だと気づき手を離すが、副社長はこの一連の流れの間ずっと嫌な顔ひとつしなかった。だから店主はより恥ずかしくなると同時に、相対している相手のビッグさに感服した。

「も、申し訳ない、つい興奮して。あ、へ、変な意味ではないですよ」
「分かってますよ。娘さんを失ったのです、興奮くらい誰だってします。心痛、お察しいたします」
「へぇ」
「お店の看板娘で、調理にも関わってらっしゃったとか。さぞ辛かったことでしょうね」
「は、はい。店も継がせる気でしたし、あいつもそのつもりでいてくれて……って、何でそんなことを?」

 副社長は神経質そうな手つきで乱れた襟を直しながら答える。

「無論、シャドウ関連の事件の被害者に関することだからですよ。最近は治安維持局も本腰を入れて調査しているようですが、1年前の時点ではそもそもシャドウの実態を把握できてはいなかった。だからまともな捜査も行われなかったわけです」
「え、まともな捜査が行われてなかった……!?」
「はい。ですが我が社は情報網に自信がありましてね。そして今事件について重大な」
「ふざけるなぁっ!!」

 店主の絶叫が響く。以前から、治安維持局への不信感はあった。自分が「娘が怪物に襲われた」と証言した時のセキュリティーの人間たちの眼。哀れむような、虚ろなあの眼。自分を嘘つきだと思っていたのか。気が狂ったかと思っていたのか。そう思うと、もう怒りが止まらなかった。

「クソ、セキュリティーめ、許さん、許さん!!」
「話は最後までお聞き下さい。今、事件について重大な進展があったのです」
「はぁ、はぁ……進展?」
「えぇ。我が社は治安維持局よりも早くからシャドウを認知し、そのデータを採っていました。ふふ、こう見えて情報力には自信がありますので」

 副社長の語り口は不思議と店主を落ち着かせた。店主は怒りを抑え、副社長の言葉に意識を向ける。
 店主を一瞥し、副社長は再び語り始めた。

「娘さんの事件が起こった当時、我が社はシャドウを複製する技術の開発に取りかかっていました。そこである実験を行ったのですが実験体が逃げ出しましてね、そいつが街に出て人を襲ったわけです」
「なっ、じゃ、じゃあそれが!?」
「もちろん隠蔽しました。なにせ社をあげての実験だったので。もちろん実験の主導者は」
「天新海!!」
「その通り。全ては天新海の仕業なのです」

 店主の怒りは頂点に達した。そんな彼の肩に優しく手を置き、副社長はこれまた優しく呟く。

「新海社長に会いたいですか?」
「あぁ! やろうぶっ殺してやる!!」
「まぁまぁ落ち着いて。とはいえ、彼は臆病なので、滅多に人前には姿を出さないのです」
「なに?」
「つまりあなたが会うのも困難ということです。ですが私が手引きすれば」
「会えるってわけか。だがなぜあんたが俺のためにそこまで?」
「新海社長の悪行には愛想が尽きてたので。そして何より、正義感ゆえです」

 副社長は紙を店主に渡し、そのまま歩き出す。

「明日の朝9時、その場所でお待ちしております。では失礼」
「……」

 店主は呆然とその紙を握りしめたまま、ただただ立ち尽くしていた。

 

 


「オッパァァァァァィッ!!!」

 一方その頃、終遊黒は叫んでいた。よく声がでてるなぁ。健康の証だ。良いことだね。

「な、なんだぁ?」
「つまり、貴様をぶっ殺すということだ」
「意味わからん!」
「カードを2枚伏せ、魔法カード発動、『タイムカプセル』!!」

 タイムカプセルは山札からカード1枚を裏のまま除外する。そして発動から2回目の自身のスタンバイフェイズ、そのカードを手札に加える。タイムラグはあるものの、好きなカードを選んでゲットできることの強力さは言うまでもない。
 その場にいた誰もが封印されたその1枚を見つめ、その正体に思いを馳せる。

「あのカード、順当に考えればナイトメアブラックだが、さて」
「え?あ、そういえばさっきのデュエルで手札から出してましたね」
「あぁ。ユニバース召喚は手札から行う召喚のようだからな。これで遊旗はこれで焦らざるを得まい。ふ、良い仕事をしてくれることに期待するとしよう」

 新海くんとシルバーちゃんが仲良く喋っている。ふたりはとても楽しそうで、すごくキラキラしていた。うーん、こういうのを近くで見ると、幸せクラッシャーとしての血が疼る。でも大丈夫、なんとかかろうじて我慢できる。これがきっと大人になるってことなんだ。

「えっと、斬さん、とりあえずそのハンマー下ろしたら?」
「おっといけない。はははヤッホー、お気になさらず」
「ふふ、斬さんってとってもチャーミングですね。新海様もそう思いません?」
「そうだな。君みたいな元気で可愛い子が入ってくれたら我が社も華やかに、痛たたたたたっっ!?」

 絶叫が響く。誰の絶叫かというと、我らが若社長、天新海その人の絶叫である。彼はシルバーちゃんにつままれ、痛みに悶えていた。

「な、なな、なになに!?」
「可愛い……私以外の子が……可愛い〜!?」
「ぐぁぁっっ!! なんでなんで!?」
「あら〜。おふたりさん、お熱いですね〜。うっらやましい〜」
「どこかだ! あ、おいシルバー何持ってるんだ、お、おい待て待て待て」
「死ねぇぇっっ!!!」
「うわぁぁぁぁっっ!!」

 さて、ここでデュエルの状況をおさらいしよう。手札は、遊黒くんが1枚、遊旗くんは4枚。遊黒くんの場には攻撃力1400守備力1600のゾンビタイガーが攻撃表示で、さらに伏せカードが2枚、そしてタイムカプセルが発動している。遊旗くんの場には攻撃力1900守備力1600のミスティックソードマンLV4が攻撃表示。伏せカードは無し。
 遊黒くんのターンはこれで終わり。さぁ、行方が気になる遊旗くんのターン。

「ドロー! へ、タイムカプセルで何を狙ってるか知らねーが、その前に決めればいい話だ」
「道理だな。だができるかな?」
「できる! まずはこいつだ、『仮面魔道士』召喚!」

 ちょっと不気味なマスクマンが現れる。いや、マンじゃなくてもウーマンかもしれないが、真偽のほどは定かではない。ボクに断言できるのは、あのカードは攻撃力900守備力1400で、自身が相手に戦闘ダメージを与えたらドローできるという能力を持っているということである。
 ソードマンと魔道士がウサギみたいな速さでフィールドを駆ける。

「行け、攻撃だ!」
「……」

 遊黒くんの伏せカードは2枚。この攻撃に何の対処もできないとは考えにくいし、それは遊旗くんも承知のところだろう。
 だが、攻撃はどちらも決まることになる。ゾンビタイガーはソードマンに倒され、魔道士の直接攻撃も決まる。遊黒くんのライフは2600まで削られた。

「……魔道士の効果でドロー。ち、何もしてこねーってのが不気味だな」
「せっかく攻撃が通ったのだ。もっと喜ぶがいい。で、これでターンエンドか?」
「まだだ! 速攻魔法『ライバル・アライバル』!」

 あれはバトルフェイズにのみ発動できる魔法カード。モンスター1体をその場で召喚できるという効果を持っている。シンプルに召喚権を増やすために使うのも良いし、今みたいにバトルフェイズ中の連続攻撃に使うのも良い。優れたカードだ。
 ソードマンと魔道士が渦に包まれる。新たなモンスター召喚のためのリリースになるということだ。ん、あれれ?ということは。

「早速のご登場か。ふっ」
「伝説を超える新たな伝説よ、今こそ降り立て! 黄金の、光と共にっ!」

 それは温かな光だった。朝食のテーブルに流れてくるベーコンみたいに、見る者の心を癒すシロモノだ。その効力たるや、シルバーちゃんが新海くんの殺害を一時中断するほどのものだった。
 遊黒くんは映画の悪役みたいに笑っていた。それは、新たな伝説の生誕。

「『ゴールデン・レジェンド・ドラゴン』召喚!!」

 光の内から、荘厳なる龍が現れる。大きな剣を携え、巨大な翼翻し、青き天に舞う。それは美しい光景だった。新海くんは愛おしげにその龍を眺め。

「トゥルースオリジンの1枚、ゴールデンレジェンド。遊旗があれをどこまで扱えるか、そして遊黒がどう対処するか、興味深い。ふ、お手並み拝見といこうか」
「なにカッコつけてんだー!!」
「ほげぇぇぇぇっ!?」

 さっきの喫茶店でのデュエル、遊旗くんは『古のルール』からゴールデンレジェンドを出していた。古のルールは手札のレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚するというカードだ。とどのつまりゴールデンレジェンドは通常モンスターということになる。特殊能力がないということはそのステータスが重要になってくるわけだが、さて、あのドラゴンの攻撃力はいかほどか。

「ゴールデンレジェンド、攻撃力4000!!」
「ぶっ!!?」

 え、まじですか!?そんなに攻撃力高くていいんですか!?え、いいんですか?あぁそうですか。
 思わず吹き出してしまったボクとは対照的に、遊黒くんは不敵な笑みingだった。このタイミングのゴールデンレジェンドの登場を予見していた故の余裕か、いや違うだろう。きっともっと単純な気持ちだ。きっと彼は喜んでいるのだ、その本能で。未知の敵との闘いを。
 遊旗くんも笑う。遊黒くんと遊旗くんが興奮冷めやらぬ様子で見つめ合う。ラブロマンスの始まり?ノンノン、バトルロマンスの始まりさ。

「行くぜ! ゴールデンレジェンドの攻撃!!」

 龍が放つは、終局にして究極の一撃。

「ゴールデンデスティニー・ジャッジメント!!」

 光の嵐が巻き起こり、全てを呑み込む渦となり、遊黒くんへ向かう。それは文字の通りの一撃必殺。受ければもちろんひとたまりもない。
 しかし、遊黒くんは笑みを崩さない。であれば答えは明白というものだ。

「罠カード、『ガード・ブロック』!」

 遊旗くんもさっき使った、ダメージを0にしつつドローできるトラップだ。遊黒くんはさっき魔道士の直接攻撃を受ける時、このカードを使える状況にありながら使わなかった。魔道士の効果でドローされてしまうことを承知しながらだ。それはすなわち、このゴールデンレジェンドの速攻召喚をある程度予測していたということ。

「俺の思考を読んだか。やるなぁ」
「俺は勘が良いからな。しかし、攻撃力4000か」
「しかも守備力だって3000あるぜ! お前のレッドアイズを遥かにしのぐステータスだ。超ゼツ最強だぜ!」
「ステータスだけがモンスターの強さではない。それを教えてやろう」
「やってみやがれ! 俺はこれでターンエンド!」

 遊黒くんはカードを引き、そして、魔法カードを発動する。

「『思い出のブランコ』! このカードの効果により、俺の墓地から通常モンスター1体を特殊召喚する」
「通常モンスターってことは……」
「呼び出すのは当然!」

 レッドアイズが地の底から舞い戻る。言うまでもないがそのステータスではゴールデンレジェンドには太刀打ちできない。しかも思い出のブランコで復活したモンスターはこのターンの終わりにまた墓地に戻る。だがその紅く煌めく眼は、何かあるのではないかと感じさせるものだった。その傍らに、新たなモンスターが召喚される。

「『融合呪印生物ー闇』を召喚。レベル3、攻撃力1000」
「ふん、それがどうした」
「これで条件は揃った」
「なに?」
「レボリューション・ロード!!」

 レッドアイズと呪印生物が魔法罠ゾーンに置かれ、2体から放たれた光が形を成し、進化の道となる。

「終わりなき未来をここに。幻の夢より生まれし混沌よ、沈んだ大地へ降り注げ」

 黒い海が空から流れ込み、大地から亡霊たちが噴き上がる。それらは混じり、歪な四肢を織りなし。

「覚醒。『ナイトメア・ブラック・ドラゴン』」

 漆黒のドラゴンが誕生する。

「な、なんだと……!?」
「終遊黒の切り札。天使の守護龍!」

 ビビる遊旗くんに楽しそうな新海くん。対照的な対応だ。
 おっと、必要な説明が欠けていたね。ここでユニバース召喚の説明をすることにしよう。ユニバースモンスターはレベルと攻撃力の合計が自身以上になる組み合わせの複数のモンスターを魔法罠ゾーンに置くことで、手札から通常召喚と同じ扱いで召喚される。
 ナイトメアブラックは攻撃力2500でレベル10。素材の条件はレベル5以上の通常モンスター1体以上と効果モンスター1体以上。
 レッドアイズと融合呪印生物のレベル合計は10、攻撃力合計は3400。レベル攻撃力ともにナイトメアブラック以上。つまり、条件は揃った、というわけだ。

「ば、バカな! タイムカプセルの封印はまだ解かれてないのに、なんでそいつが手札にある!?」
「答えは明白。タイムカプセルで除外したのは別のカードということだ」
「……な、なら、あの中には一体なんのカードが……?」
「先のことを気にしてる場合ではない。お前の悪夢は今この時だ」
「っ!」
「悪夢失墜」

 暴威が巻き起こる。レッドアイズがそれに続く。先人の残した物、レガシーを受け継ぎ闘う。それがユニバースモンスターのやり方だ。レッドアイズのレガシーフォースはナイトメアブラックの攻撃力をターン終了時まで倍にする。つまり攻撃力5000。この2体の連携攻撃の前にはさすがのゴールデンレジェンドも白旗を上げざるをえない。
 と思われたが、遊旗くんの余裕は崩れていなかった。

「へ、同じミスを繰り返しやがって! 俺には伏せカードがあるぜ! トラップ、『万能地雷グレイモヤ』! もう一回、返り討ちだぁ!」
「とんだロマンチストだな。カウンタートラップ『ギャクタン』」
「なにぃ!?」

 ギャクタンはトラップを無効にする。これで悪夢の行進を阻む物はなにもない。黄金の光が色あせ、龍の肉体が腐敗し。

「ぐ、ぐわぁぁぁぁっ!!」

 そして全ては悪夢に呑まれる。遊旗くんは吹き飛び、大地に額をぶつける。

「ぐ、ぐぅ……!」
「ターン終了」

 遊旗くんは小刻みに震えている。ナイトメアブラックはどう見ても普通ではないモンスターだ。恐怖がその体を縛り付ける。なかなか立ち上がることができない。
 遊黒くんはそれを静かに見ていた。そして。

「うぉぉぉっ!!」

 絶叫が響き、遊旗くんの体が少しずつ上がっていく。

「俺は、負けねぇ! やつに、復讐するまでは!」
「そういえばそんなこと言ってたな。そんなにそいつが憎いか」
「憎い! 俺は許さない、俺の、大切なものを奪ったヤツを!」
「ならば来るがいい。それで俺に勝てるかどうか、確かめてみろ」
「俺のターン!!」

 決意の剣。デュエリストにとってのそれはカード。剣を携え、遊黒くんを睨む遊旗くんの姿は、まさに修羅。

「来たぜ、お前をぶっ潰すカードが!」
「そんなものは無い」
「いやある! 俺が信じたカードは、魔法カード『死者蘇生』!!」

 お、これは良いカードが来たものだ。あれは墓地のモンスター1体を自分の場に特殊召喚する。なんでもだ。
 現れるのは、もはや考えるまでもなかったか。黄金の龍が蘇り咆哮する。

「ゴールデンレジェンド、復活っ!!」
「しつこい野郎だ。そいつでは俺に勝てはしない」
「それはどうかな?」
「む」
「見ろ! これが、決着の切り札っ! 『魔界の足枷』!!」

 遊旗くんのこの自信、それはすなわち、すでに対ナイトメアブラック用の切り札を手札に用意していたということ。鎖が宙を舞い、枷が悪夢を縛る。

「これは……」
「この装備魔法は装備したモンスターの攻撃を封じた上で攻守を100にする」
「なに?」
「お前の効果はモンスターの攻撃力を倍にする。だが攻撃力100になれば、倍になっても200!」
「……そのカード、デュエル序盤から手札にあった。なるほど、この状況に備えて温存していたということか」
「へっ! 行くぜ、これで最後だ!」

 今再び、最強の一撃が放たれる。悪夢は消え去り、ハッピーな朝が訪れる。小鳥はさえずり、ニワトリが絶叫し、絶叫という表現で正しければだが、まぁそんな感じだ。
 しかし。

「……なんだと?」

 遊旗くんのうめき声が聞こえた。彼の視線の先には、そうもちろん、あのクールガイがいた。

「……まだ……生きてるよ」
「まきはら?」
「俺はまだ生きているぞ、ワーッハッハッハァ!!!」

 終遊黒は残りライフで踏みとどまっていた。なぜか。遊黒くんがその応えを告げる。

「融合呪印生物のレガシーフォース。戦闘する敵モンスターの攻撃力守備力をターンの終わりまで半分にする」
「ち、そんな効果まであるのかよ! そんな効果があるならなんでこれまで使わなかったんだ!?」
「レガシーフォースは1つ使えばそのターンの間、他のレガシーフォースは使えなくなる」
「な、なるほど。だがナイトメアブラックは倒したぜ!」
「ユニバースモンスターが場から離れる時、レガシーは墓地へ送られる。だがナイトメアブラックの効果により、俺はレガシーをひとつ残すことが可能。レッドアイズを残す」

 ターンが移り、遊黒くんのターン。いまだ魔法罠ゾーンに残るレッドアイズ、そして。

「タイムカプセルの封印が解かれる……!」
「魔法カード『愚かな埋葬』で2枚目の真紅眼の黒竜を墓地へ。そして」

 タイプカプセルで得たカードがきられる。そのカードとは……!?

「魔法カード『龍の鏡』!」

 あれは墓地の融合素材を除外することでの融合召喚を可能とする。そして呪印生物は融合素材の代わりになることができる。レッドアイズと呪印生物が墓地から除外され、そして。

「咲き誇れ、壮麗なる花よ! 紅き眼より生まれし可能性、天に届き、悪夢を貫く星となる!」
「な、何が来る!?」
「悪夢だ。フルコースでな。その名はっ!!」

 空にポッカリ空いた穴から、隕石がビューンと落ちてくる。フォーリンラブって感じだ。

「『メテオ・ブラック・ドラゴン』!!」

 攻撃力3500の超竜。そのまま、黄金の龍と相見える

「だ、だが攻撃りょ」
「攻撃だ」

 その龍は恐れなど抱かない。攻撃力がドンドン上がっていく。

「な、なんでだ!?」
「レガシーは後の世に受け継がれる。ナイトメアが消えてもレガシーフォースは消えないということだ。俺は、レッドアイズのレガシーフォースをメテオブラックに使用!」
「と、ということは!?」
「メテオブラック、攻撃力2倍!」
「攻撃力……7000……!」

 ボクはさきほどゴールデンレジェンドの攻撃を終局にして究極と言ったが、あれは誤りだった。本当の終局とは、今この瞬間。

「遊黒ダーイブっ!!」

 メテオブラックの抗議の視線もいとわず、その技名が叫ばれる。うん、この件については要審議と言わざるをえまい。しかるべき矯正が必要だ。さて、どんな技名にしたものか。
 なんかそんなことを考えてたら遊旗くんのライフが0になってデュエルが終わってた。そんなわけで、遊黒くんの勝利が決まったのである。


「身に染みたか?怒りや憎しみで俺は倒すことはできない。俺は悪夢。俺を超える闇など存在しないだからな」
「ふ、ふざけんな! もう一度デュエルしろ!!」
「ガチで断、おい」
「あん?あ、う、うわぁー!!」

 突然地割れが起き、遊旗くんが地の底に落ちそうになる。

「し、死にたくない、死にたくないー!!」

 彼はきっと走馬灯を見たことだろう。ボクは死んだことがないからよく分からないが、死ぬ寸前ひとはそういう類いのものを見るらしい。楽しかったこと、悲しかったこと。彼はどちらの記憶が多いのだろう。ボクには分からないが。

「……お、俺にはまだやりたいことが、って、あれ、生きてる?」

 金色遊旗はまだ生きていた。なぜか。それは遊黒くんが彼の手を掴んだからである。

「クク、離してやろうか?」
「いや、そういうの要らないからー!」
「ふっ」

 そのまま遊旗くんを引き上げ。

「う、うぅ……ありがとう、ありがとう〜!!」
「勘違いするなよ。俺はお前のカードが失われるのを危惧したにすぎん」
「お、おまえ……」
「だがこれも良い機会だ。復讐はほどほどにして、楽しいことをたくさんしろ。この世には楽しい夢が満ちている。俺のような悪夢から見ても、うらやましくなってしまうほどにな」
「……」
「お前とのデュエル、それなりに楽しかった。ではさらばだ」

 少年は立ち上がり、去り行くマントへ叫ぶ。

「お前、良い奴だな! 本で読んだぜ、えっと、ツンデレってやつだな!」
「うるせぇ!」
「よし、決めたぜ! 当面の俺の夢、それはお前をぶっ倒すことだ!」
「無理な話だ。俺に勝てるものなどこの地上に存在しない。ハハハハハ!!」
「いや勝てる! うぉー、燃えてきたぜー!!」

 そんな、少年漫画チックな雰囲気の中、次回へ続くので、え、まだ続かない?


「ゴロニャーンッ!!」
「ごろにゃー?」
「ゴロニャー!! ステイ!!」
「ステイステイ……」
「アー……ペペストストコララ!!」
「っ!?」
「ワチャコラホッホーイ!!」

 描写が欠けていたが、デュエルと平行して新海くんとシルバーちゃんの格闘も続いていたようだ。ていうかイチャつきじゃねこいつら。
 謎の呪文の応酬。その果て、新海くんが勝利したようだ。超どうでもいい。彼は満足げな顔で服の乱れを正しながらこちらへ来る。

「ふ、終遊黒が勝ったか。順当だな。奇跡など起きない、それが勝負の常」
「遊旗くんが勝つ可能性もあったと思いますがね。なかなか良いデュエルでした」
「良いデュエル?そんなものに何の意味がある。勝負においての真実とは勝敗が決するその一瞬にしかないよ」

 彼は微笑みながら、全てを見下しながら、立ち去って行く。

「ユニバースの力、その全て、たしかに見せてもらった。その上で言おう、俺の敵ではないとな」
「すごい自信ですね」
「当然だ。この天新海こそが6次元の頂点。全ての敵はこの手で蹴散らす」

 そう告げる彼の背には、老練な竜騎士が付き従えていた。

「生死の理すらも超越する我が召喚、ペンデュラム召喚でな……!」