焼き肉の熱血遊び日記

漫画アニメ特撮カードゲーム大好きな男の趣味ブログ。

第6話 終遊黒vsクロウ・ホーガン

<前書き>

この5D’sの世界編の時系列は、アニメ5D'sの最終回のデュエルとラストランの間です。なので赤き龍はまだギリいますし、チーム5D’sのメンバーたちもネオドミノにギリいます。

 

<本文>


 天の川浮かぶ背の低い丘。その男はたたずみ、彗星に想いを馳せる。しかし同時に、その想いは叶わぬものだと理解する。彼はあまりに多くの知識を身につけた。その時代、はるか太古の世界において、彼に並び立つ者はいない。その眼は寂しげだった。

「……美しいな。肉体は滅びるが、星の輝きは朽ち果てない」

 その丘は彼の墓標となる。訪れる者はもういない。
 この世界に染み込んだ悪意。争いは決して絶えることはないと、彼は理解していた。だからこそ探していたのだ。星の輝きのように消えない、人々の心を繋ぐものを。人の心をあたたかく照らすものを。しかしそれはついに見つからなかった。
 彼の力は後世へ受け継がれる。彼は己の力をいくつかに分け、後世へ託した。救世を夢見て。


 そして時は現代。ネオドミノシティー郊外。その墓標はまだあった。


「あ、斬せんせーだ! 久しぶり!」
「やっほー龍亞くん。今日も元気だね。でもその斬せんせーってのは止めてみない?ボクはほら、バイトみたいなものだから」
「いいじゃんいいじゃん! へへ、今日も俺たちの授業やってくれるの?」
「いや、今日は高等部の授業だけだね」
「え〜!? ちぇっ、アキ姉ちゃんがうらやましいなぁ」

 ボクは、つまり聖天斬はだが、このデュエルアカデミアの臨時講師?的なお仕事をしていた。なぜこの仕事をしているかと言えば、リバースコーポレーションというブラック企業に採用されてしまったからである。お試し気分で採用試験を受けてみたら、なんてこったホー、受かってしまったわけなのだ。
 ボクはオリジン世界と呼ばれる場所から来た。ここは5D’s世界。つまり別世界である。ボクは採用試験を受けた直後にこの世界にちょっと旅行でやってきてて、到着した直後にシルバーちゃん、つまりブラック企業の手先から採用のお知らせを受け、それからは命令されるがままにアカデミア運営のお手伝いに従事、というわけである。本当にあった怖い話。ちなみにそのシルバーちゃんっていう娘は超かわいい。

「ま、ボクの授業なんてそんなに珍しくもないさ。これからいくらでも受けれる」
「……ううん、受けられないんだ」
「え、どうして?」
「俺、もうすぐ海外に行くんだ。両親が海外に住んでて、一緒に暮らすために」

 この子は龍亞。ディフォーマーというカード群を愛用する決闘者だ。かつてこの地で大きな闘いがあった。その闘いとは過去からの宿命、未来からの警鐘。いずれにしても『シグナー』と呼ばれる、伝説の赤き龍に選ばれた者たちがその闘いに勝利し、この世界を救ったのだ。 話の流れから察することができるだろうが、この龍亞くんもシグナーだ。また、彼の妹である龍可ちゃんもシグナー。兄妹揃って過酷な闘いに身を投じていていたのだ。

「そっか。寂しくなるね。じゃあ龍可ちゃんも、ってあれ、今日は一緒じゃないの?」
「……あ、あぁ、龍可は、その、なんていうか」
「体調でも悪いの?」
「ま、まぁそんなとこかな」
「そうか」

 彼はしどろもどろだった。おそらく龍可ちゃんは人に言えない状態にあるのだろう。それが人智を超えた力によるものなのであれば、ボクに相談してもしょうがない。だから言わないのだろう。友達としては、ここは追求しないでおいてあげたいところだが、ボクにも目的があるからなぁ。龍可ちゃんの案件がそれに繋がる可能性はけっこう高い。

「じゃあ、ボクはこれで。龍可ちゃんによろしくね」
「う、うん。じゃあね、斬せんせー」

 というわけで放課後! ボクの『龍亞くん尾行大作戦!』は始まったのであった! デデーン!
 彼は街中を駆け回っていた。追いかけるボクの方が疲れてしまったくらいだ。たぶん何か、っていうか誰かを探していた。たぶん龍可ちゃんだろうけど。

「やっぱりダメか。あ、もうこんな時間! 行かなくっちゃ!」

 龍亞くんは叫び、スタコラと走り出した。ボクもヒーヒー言いながら追いかけると、最終的に郊外のさびれたデュエルスタジアムにたどり着いた。そこには人だかりができており、その中にはセキュリティも何人かいた。モヒカンの集団と言い争っているようだ。

「アヒャヒャヒャヒャー! おうおうおーう、おまわりさんよぉ! 俺らはまだ何にもやってねぇだろ〜!!」
「語るに落ちたな! まだということは、そのうち何かするつもりなんだろうこの野郎! この街は生まれ変わるんだ! お前らのようなチンピラは邪魔なんだぁ!!」
「なんだとてめぇー!!」

 なんだかもうメチャクチャだった。そんな中、黒いDホイールが駆けつける。ちなみにDホイールというのはデュエルに使うバイクである。

「おうおう。どうしたどうした」
「クロウ! いいところに来てくれたぜ!」

 クロウと呼ばれた男はセキュリティの男の知り合いのようだった。彼はめちゃくちゃ私服だしセキュリティではないようだが、セキュリティの男とは親しげだった。

「このモヒカン共が何したってんだ?」
「いや、まだ何もしてないんだが」
「はぁ?」
「だ、だけど俺が『これから何するつもりなんだ?』って聞いたら、こいつら答えやしねえんだ。俺はピーンと来たね。こいつらは何か良からぬことをやらかす、そんな予感だ」
「あのなぁ、お前のそういう決めつけてかかるところは直した方が」
「頼むぜクロウ! 元同僚のよしみで! なっ!?」

 元同僚ということは、あのクロウという青年もセキュリティだったということか。歳も20前後で若いし、たぶん辞めてからそんなに長くないのだろう。
 ボクが状況分析につとめているところで、モヒカンがクロウに絡み始めていた。

「おっ、てめぇが噂のクロウか! へへ、鉄砲玉のクロウともあろう者がセキュリティの犬とは。安くなったもんだ」
「あぁん?えっと、すまん、どっかで会ったか?」
「いいや。だがサテライト育ちなら知らないやつはいないぜ。チームサティスファクションといえば俺たちの伝説だからな」
「へへ、ちょっと照れるな」
「だが俺たちの親分には遠く及ばないぜ! このナイトメア団のリーダー! 新たな伝説の登場だ! そーらホイ!」
「イエェェェイッ!!」
「ヒャッハァー!!」

 モヒカンたちがブレイクダンスを始める。絶叫が響き渡る。それはまさに悪夢のような光景だった。そんな地獄の中に。
──カッコーン!──
 新たな男が登場。黒いバサバサコート、ハットを深く被っていて顔はよく見えないが、つけ髪が大量に付いている。それはひとつひとつが違う色で、まるで虹みたいだ。目がチカチカする。そんな、この世のものとは思えない変な風貌の男が出てきた。うーん、これはカオスだなぁ。
 クロウは問う。

「お前は?」
「終遊黒」

 ふーん、終遊黒くんかぁ。遊黒、ん?遊黒!?

「ゆ、遊黒くーん!?」
「あ、斬せんせーじゃん! こんにちは!」
「こ、こんにちは龍亞くん。どうしてこんなところに?」
「クロウにちょっと相談があってさ。ここで待ち合わせてたんだけど、なんか変なことになってきちゃったなー」
「そ、そうだね」
「あの遊黒って人、斬せんせーの知り合い?」
「う、うーん、まぁ、友達」

 ボクにも世間体があるから認めたくなかったが、認めざるをえない。あんなファンキーな格好の人じゃなかったと記憶しているのだが、よく見れば顔とか背丈は完全に遊黒くんだからなぁ。困惑してるボクに、龍亞くんは好奇心いっぱいの眼差しを向けてくる。

「ねぇねぇ、あの遊黒って人も強いの!?」
「う、うん、強いよ。ボクと同じくらいかな」
「えー、じゃあすごい強いじゃん! そんな人とクロウのデュエルか〜!」

 龍亞くんはエキサイトしているようだけど、あの二人が闘う理由なんて無いと思

「デュエルだ」

 なんでやねーん!
 声にならない叫びを上げるボクをよそに、遊黒くんはベラベラと喋り出す。

「そこの彼の勘は正しい。我々ナイトメア団がある計画を実行しようとしているのは事実だ」
「そーら見ろクロウ! 俺の言った通りだろ!」
「だが俺たちはまだ何もしていない。君たちも手出しはできないはず」
「ぬぬぬ!」
「そこでどうだろう。デュエルで俺が勝ったら、君たちは俺たちを見逃す。そちらが勝ったら俺たちは計画の全てを白状する。というのは?」

 セキュリティ隊員の彼はフンフンと頷き、勢いよくクロウの手を握りしめる。クロウはめっちゃ困惑していた。

「お、おい、まさかこの流れは……」
「そのまさかだクロウ! 頼む、あいつとデュエルして勝ってくれ〜!」
「俺はセキュリティを昨日で辞めた。もう隊員じゃねぇんだ」
「お前より強いやつなんて隊員にいないんだ。責任は全部俺がとる。頼む、頼むよクロウ〜!」
「な、泣くなって。それに俺はこれから人と会う約束を」

 会う約束とは龍亞くんのことだろう。だが当の龍亞くんがクロウに駆け寄り、

「クロウ!」
「る、龍亞! すまねぇ、なんか変なことに巻き」
「俺、こんなとこでクロウの全力デュエルがまた見れるなんて思わなかったぜ!」
「あ?」
「頑張れクロウ! 俺応援しちゃうからさ!」
「……お、おぉ」

 トドメを刺した。クロウは大きなため息をつき、悪役面の悪夢と向き合う。

「あー、こっちは俺が出ることになった。俺はクロウ」
「噂には聞いているよ。ライディングデュエル世界大会『WRGP』を制した、チーム5D’sの一員だと」
「そういうお前は見たことねぇ顔だな。デュエルギャングの頭になるようなやつは大体知ってるやつなんだが」
「俺はここの住民じゃない。ここには探し物にやってきた」
「探し物?」
「あぁ。貴様らシグナーをな」
「なにっ?」

 スタジアムの扉が開く。照明がバッバッと光るその会場は、もうデュエルする準備万端ですよ顔だった。

「てめぇ、何者だ?」
「お前が勝ったら教えてやるよ。さぁ、悪夢のライディングデュエルの始まりだ!」

 遊黒くんの元に虹色にビカビカ輝くDホイールがやってくる。あんなもの持ってなかったはずだから、たぶんこの世界で調達したのだろう。しかしやばいセンスだ。
 ボクたちはみんな観客席に向かう。野次馬の人たちも、クロウがデュエルすると聞いて眼の色を変えて走り出していた。あのクロウという人の人気は凄まじいな。

「よーし、頼んだぞクロウー!」
「親分ー! セキュリティの犬なんかに負けるなー!」
「なんだとぉ!?」
「あぁん!?」

 今の時点ではけっこう空き席はあるはずだが、なぜかボクらはセキュリティとモヒカンとご一緒することになってしまった。まぁ世の摂理だと思って諦めよう。ボクは隣の龍亞くんに語りかける。

「そういえば龍亞くんも5D’sの一員だったんだよね。じゃあクロウくんは友達なんだ」
「うん。うるさい時もあるけど、最高の仲間さ!」
「……仲間か」

 今、ボクは自然と遊黒くんを応援しようとしていた。なぜか。そうだ、ボクは遊黒くんが好きだ。変な意味じゃなく。だから。

「このデュエル、クロウが絶対勝つぜ!」
「龍亞くんには悪いけど、ボクは遊黒くんを応援するよ」
「友達だから?」
「仲間だからさ」

 最強の相手に挑戦する彼を、見守ることができるのだ。
 遊黒くんとクロウくんはスタート地点につく。

「フィールド魔法、『スピード・ワールド・リミテッド』、セットオン!!」
──デュエルモード・マニュアルモード・スタンバイ──

「行くぜ! 俺のブラックフェザーがてめぇをぶっ潰す!」
「バッドドリーム、トゥナイト」

 ふたりのDホイールから火花が散る。スタートランプは点滅し、やがてその時は訪れる。会場中が叫んだ。それは開戦の合図。

「ライディングデュエル・アクセラレーション!!!」

 爆音轟かせ、2つの鉄の塊は信じられないスピードでコーナーに突っ込んでいく。ライディングデュエルでは最初のコーナーを制したプレイヤーが先攻を取ることができる。デュエルの行方を左右するその瞬間には、鬼気迫るものがあった。これがライディングデュエルか。2台の加速はほぼ互角だが、わずかにクロウが先行している。

「ブラックバードと競り合うとは、なかなか悪くねぇパワーだ!」
「それはこちらの台詞だ。だが」

 コーナー内側への鋭い突っ込み。通常ならばコーナーへは外側から角度をつけて侵入するのがセオリー。アウトインアウトというやつだ。だが遊黒くんはクロウくんを抜くため、最初からインに突っ込んでいった。これでは相当スピードを落とさなければコーナーはクリアできない。

「俺のレインボーサティスファクションの真価はここからだ。はぁぁぁっ!」
「な、なに!?」

 Dホイールの後輪タイヤが華麗にスライドし、鮮やかにフィールドを駆けていく。

「慣性ドリフト!」

 良いDホイールだ。低重心と軽量化がバッチリ行われているからこそ、ハードなドライブも可能になる。レインボーなんとかがブラックバードの内側をぶち抜いた。

「うぉぉぉぉっ! さっすが遊黒の親分!」
「く、クロウ〜!」
「へー、斬せんせーの友達もかなりやるじゃん!」
「……だけど、クロウくんはまだ諦めていない」

 ブラックバードのタイヤがギャンギャンと吠え、獲物を見つけた燕がくちばしで突つくように、レインボーなんとかの更にインを攻める。

「そんなスピードで行けるわけが無い。死ぬ気か?」
「んなわけあるか! 行くぜっ!!」

 常軌を逸したスピード。その漆黒の鉄が巻き起こした風は疾風となり、観客席にまで届く。

「無理だ! 親分の勝ちだぜ!」
「いや、これは!」

 遊黒がジリジリと外に出ていく。踏ん張りきれていない。スピードが乗りすぎているのか。だが黒い疾風は。

「バカな、つきやがったァー!?」
「ラインがクロスするぞー!!」

 モヒカンとセキュリティの絶叫が響く。うるせぇと思ったが、この凄まじい光景を目の当たりにしては仕方があるまい。彼らの実況の通りラインはクロスし、この一瞬で勝負は逆転。クロウくんが第1コーナーを制したのだ。遊黒くんは自分の前に出ていくクロウくんを鬼のような悔し顔で見ていたが、コーナーを立ち上がった時は愉快そうに笑っていた。

「そうか、これが鉄砲玉のクロウか。ははは、面白い」
「お前も良い突っ込みだったぜ。だがお前の走りが、俺の導火線に火を付けた!」
「光栄だ。だがデュエルでは遅れを取らない。さぁ、来るがいい!」
「あぁ! 行くぜ俺のターン!」

 クロウくんが勢いよくカードを引き、直後、互いのスピードカウンターが1になる。そして。

「永続魔法『黒い旋風』発動!」

 その名の通りの黒い旋風が彼のフィールドを包む。あのカードがある限り、クロウくんは場にBFを召喚する度、それより攻撃力が低いBFをデッキから手札にできる。これで手札切れの心配はなくなったか。

「『BF−大旆のヴァーユ』を守備表示で召喚! デッキから『BF−蒼天のジェット』を手札に加え、さらに『黒羽の宝札』を発動。ジェットを除外して2枚ドローだ」
「手札を整えたか。だがヴァーユは守備力0。嵐の前の静けさと思えばいいのかな?」
「へ、安心しな。クロウ様のデュエルはまだ始まったばかりよ。俺は『強欲なカケラ』を発動。これでターンエンド」

 強欲なカケラ。自分のスタンバイフェイズごとにカウンターを1つ置き、2つカウンターが置かれたこのカードを墓地に送り2枚ドローする。1ターン目から後の展開のための布石を十分に敷いている。さすがだ。

「俺のターン。『ライオウ』を召喚し、ヴァーユを攻撃」

 ライオウは攻撃力1900。その雷が降り注ぎ、ヴァーユを破壊。

「カードを2枚伏せ、ターン終了」

 ここで、龍亞くんが話しかけてきた。

「ねーねー斬せんせー。あの遊黒って人はどんなデッキなの?」
「罠で相手の切り札をやっつけてから安全に攻撃するデッキさ。あの3枚の伏せカード、おそらくミラーフォースのような強力なトラップ」
「ふーん。じゃあクロウとは真逆だね。クロウは速攻が得意だからさ」
「そうなんだ。でも速攻だとトラップが邪魔だね。クロウくんにとっては相性が悪いか」
「いいや! クロウの旋風はトラップなんかぶっ飛ばしちゃうぜ!」
「……なるほど。お手並み拝見」

 龍亞くんからの熱いエールを受け取ったのか、クロウくんは勢いよくカードを引く。そして、笑った。

「俺は『BF−暁のシロッコ』を召喚!」
「いきなりレベル5を召喚だと?」
「こいつは相手の場にのみモンスターがいれば、リリース無しで召喚できる」
「なるほど。ヴァーユを倒させたのはその能力があったからか」

 シロッコの攻撃力は2000。ライオウを上回る。攻撃力が高いので、黒い旋風でサーチできる範囲も広い。

「BFの召喚により、黒い旋風の効果発動!」
「無駄だ。ライオウ特殊能力」

 旋風が吹き荒れる、と言いたいところだが、それはクロウくんの呼びかけにウンともスンとも言わない。

「なに?」
「ライオウがいる限り、デッキからカードを手札に加えることはできない。これが遊黒バリアーだ」
「だが、俺の手札にはこいつらがいるぜ! 来い『BF−疾風のゲイル』!」

 攻撃力1300の新たなブラックフェザー。あれは場に自身と違うカード名のブラックフェザーがいれば手札から特殊召喚できる能力を持つ。さらに特殊能力がある。

「こいつはターンに一度、相手モンスター1体の攻守を半分にできる。ライオウを選択だ!」
「ちっ」
「そしてこいつも、場にブラックフェザーがいれば特殊召喚できる!『BF−黒槍のブラスト』!」

 これで3体のブラックフェザーが揃った。ブラストは攻撃力1700。ライオウの攻撃力は950になったので、クロウくんの攻撃がまともに通ればライフは0にできるが。

「ご自慢のブラックフェザーがそろい踏みか。確かに召喚スピードは素晴らしいが、俺のリバースカードを攻略できていない」
「安心しな。クロウ様のデュエルはな、最初っから弾けてんだよ! 行くぜ、手札からトラップ発動!!」
「な、なんだと!?」
「手札から!?」
「トラップを発動ー!?」
「『デルタ・クロウ─アンチ・リバース』!!」

 トラップは場に伏せてから1ターン待たなければ使えないはず。だがその漆黒の嵐は速攻で場に吹き荒れていく。

「お、親分のトラップが破壊されていくー!?」
「このカードは場にブラックフェザーが3体いれば、手札から発動できる!」
「ば、バカな……親分が負ける……!」
「……面白い。こんなトラップがあったとは。だが」

 地獄の深淵より、亡者の叫びが轟く。それは溢れ出し、フィールドに満ちていく。

「これは……」
「お前が手札から罠を使うならば、俺は墓地から使うまで。『ミラーフォース・ランチャー』の効果発動」
「墓地からトラップだと!?」
「セットされたこのカードが相手に破壊された時、このカードと『聖なるバリア ─ ミラーフォース ─』を俺の場にセットする。そしてこの効果でセットされたカードは、セットしたターンに使うことができるのだ」
「……くっ!」

 漆黒の泥からカードが2枚生まれ、遊黒くんの場にセットされる。ミラーフォースは相手の攻撃宣言時、相手の攻撃表示モンスターを全滅させる最強のバリア。龍亞くんはうなる。

「しかもミラーフォース・ランチャーまで復活したから、アンチ・リバースみたいなカードをまた使ったとしても同じことになる。斬せんせーの友達、めちゃくちゃスゴいじゃん!」
「はははホッホー。えっへん」

 どうやら、君の成長スピードはボクの予想より上らしい。なるほど、これは面白くなるかもな。クロウくんもボクと同じように思っているようだ。楽しそうに笑っている。

「なかなかやるじゃねぇか。俺の速攻がこんな風にかわされるとは」
「デュエルはまだはじまったばかりだ。じっくりと、楽しもうじゃないか」
「そうさせてもらうぜ。ターンエンドだ」
「俺のターン」

 言葉に反して、遊黒くんの眼は鋭くギラついている。瞬殺されかかったことが、彼の闘争心に火をつけたのだ。クールに見えて、意外とその辺は熱い。

「装備魔法、『月鏡の盾』!」

 黄金の盾がライオウの手に掲げられる。これに龍亞くんが反応する。

「あ、装備魔法! そっか、このルールのライディングデュエルだと使えるんだもんな〜」
「龍亞くんのデッキは装備デッキ主体だもんね」
「うん! パワーツールは最強だぜ! あの月鏡の盾ってカードはどんな効果なの?」
「装備モンスターの攻守はバトルする時、バトルする相手モンスターの攻守の高い方の数字に100を足した数値になるんだよ」
「えぇっ!? じゃあバトルに絶対負けないじゃん!」
「しかもライオウは自身をリリースすれば相手の特殊召喚を無効にできる。ミラーフォースも場に生きている。クロウくんの動きは大きく封じられた」

 ボクらの話を聞いてたのか、セキュリティが顔面蒼白で絶叫し、モヒカンたちのポップコーン・ダイブ・トゥー・お口のスピードが速まる。

「そ、そんな、クロウが負ける!? う、うわぁぁぁぁ!!」」
「ギャハハハ! これはもう親分の勝ちで決まりだぜぇぇ! ポップコーンうめぇ!」

 ここで、セキュリティへ龍亞くんの喝が入る。

「オジさん、クロウの仲間なんでしょ? クロウを信じてあげなよ!」
「し、しかし、こんな状況ではもう勝ち目は……!」
「いや。クロウの眼はまだ死んでないよ」

 龍亞くんの言う通り、クロウくんの眼はまだ生きてる。まだ生きてるよ。まだ生きてるんだよ。
 遊黒くんは全身から邪悪なオーラを滲ませながら笑う。

「ククク。どうやら勝負あったようだな。お前には伏せカードも無い。ブラックフェザーはライオウ1体になすすべなく粉砕されるのだ」
「そいつはどうかな。俺の最後の手札、この1枚は必殺の切り札だぜ!」
「戯れ言を。貴様のブラックフェザー、1体残らず! 焼き鳥にしてやるぜぇぇっ!!」

 最大最強の雷がライオウに注がれ、その力が高まっていく。ブラックフェザーたちの頭上に暗雲が立ちこめる。そして、その時は訪れる。

「これで終わりだ。ライオウの攻撃!」
「くっ!」

 天が裂け、暗雲の向こうから放たれる。

「ワールドエンド・ボルテックス!!」

 世界の終焉を告げる究極の雷。スタジアムに降り注ぎ、コースを揺らす。爆発音がけたたましく響いている。フィールドで容赦なく行われる破壊の渦の中心で、クロウくんのDホイールはまだ走っていた。しかしその眼前、最大の雷が彼に迫り。

「ぐ、うぉぉぉぉっ!!」

 クロウくんの絶叫と共に煙がモクモクと立ちこめる。煙の中から遊黒くんは勢いよく飛び出すが、クロウくんの姿はない。

「……クロウが……負けた……?」

 セキュリティの彼がそう呟く。しかし龍亞くんの顔を見れば、はははヤッホー、その眼は天を見据えていた。

「上だ!」
「なに!?」

 ボクたちの目線は下の方にばかり向いていた。忘れていたのだ。翼とは、天を舞うためにあるものだということを。

「ハハハハハ! クロウ様はここだぜー!」
「ジャンプで雷を回避していたか。だが、俺の攻撃を防げていない!」
「残念だが、俺のトラップが発動してるぜ」
「バカな。貴様の場にリバースカードは無いはず!」
「あぁ。だがこいつもまた、場にブラックフェザーが3体いれば手札から発動できる!」
「なに!?」
「『ブラック・ソニック』だ!!」

 華麗な着陸。その瞬間、疾風が吹き荒れる。それは雷を吹き飛ばし、暗雲を消し去り、悪夢を払う黒い疾風。

「な、なにが起こっている!?」
「ブラック・ソニックはブラックフェザーが攻撃された時、相手の攻撃表示モンスターを全て除外する!」
「なんだと!?」

 疾風が、遊黒くんへ吹きすさぶ。彼も良いテクニックを身につけてはいるがクロウくんには及ばない。踏ん張りきれず。

「ぐ、うぉぉぉぉ!!」

 スピンし、壁に激突する。

「お、親分……おやぶーん!」
「やったぁ! クロウの勝ちだ!」
「いや、まだだ!」

 龍亞くんの言葉の通り。高笑いが響き、虹色の閃光がクロウくんを追い走り出す。かなりのダメージがあったはずなのに、その勢いは全く衰えていない。その姿、まさに悪夢と呼ぶのに相応しい。

「月鏡の効果発動。500ライフを払い、このカードを山札の下へ送る」
「へ、なかなかのライディングテクじゃねぇか。誰から教わったんだ?」
「少し、お前を侮っていたようだ。いいだろう。ここからは悪夢フルコースだ」
「あぁん?」
「『ユニオン格納庫』発動」

 あれはフィールド魔法カード。新ルールでは各プレイヤーは1枚までずつ、自身のスピードワールドに重ねてフィールド魔法を発動することが可能。その場合そのフィールド魔法の効果とスピードワールドの効果は両方発揮される。
 それは名の通りの格納庫。遊黒くんの後ろに出現し、怪しく振動する。クロウくんも感じているはずだ、禍々しき悪夢の気配を。

「格納庫の効果で山札から『A−アサルト・コア』を手札に加え、そのまま召喚。さらに格納庫の効果で山札より『B−バスター・ドレイク』をアサルトに装備。これでターン終了」
「ユニオンモンスター。そして場にはAとB、まさか!?」
「勘が良いな。そう、Cが来た瞬間こいつらは合体する。その時こそ、貴様の命運が真に尽きる時だ」
「……面白ぇじゃねぇか! 俺のターン!」

 格納庫の扉の隙間。そこから霧が漏れ出し、新たなモンスターの眼光がクロウくんに突き刺さる。恐ろしい何者かの誕生、その前振りかのように、格納庫はガタガタと揺れる。しかしクロウくんの顔に恐怖は無い。闇を振り払うように、カードをきる。互いのスピードカウンターはこれで5。

「強欲なカケラを墓地に送り2枚ドロー。さらに『Sp−エンジェル・バトン』で、2枚ドローして手札1枚を墓地に送る」

 これで準備は整ったと、クロウくんの顔は言っていた。会場中に緊張がはしる。デュエルを知っている者ならば感じるだろう、大いなる力の高鳴りを。

「俺はレベル3のゲイルをレベル5のシロッコにチューニング!」
「来るか……!」
「黒き疾風よ! 秘めたる想いをその翼に現出せよ!」

 そして、満を辞し。

シンクロ召喚! 舞い上がれ、『ブラックフェザー・ドラゴン』!!」

 現れるシグナーのドラゴン。思わず魅了される観客。当の遊黒くんとクロウは、どこまでも不敵に笑っていた。

「ブラックフェザーの絆の力、見せてやるぜ遊黒!」
「夜が来る。お前に」

 ここでボクは重大なことに気づいた。遊黒とクロウ、このふたり、なんと! ど、どっちも名前にクロが付いてるー! 聖天斬は、そんなことを思ったのであったー。

 

 

<後書き>

お読みいただきありがとうございました。
原作キャラを扱うということで結構悩みました、特に龍亞の会話は想像の何倍も難しかったです。
本作の5D’s編ではデュエル構成の都合もあってオリジナルのスピードワールドを使います。効果は以下の通りです。

スピードワールド・リミテッド』
<フィールド魔法>
①このカードはあらゆる効果を受けず場から離れない。
②お互いのプレイヤーはお互いのスタンバイフェイズに時に1度、自分用スピードカウンターをこのカードの上に1つ置く(最大12個まで)。
③プレイヤーが1000以上のダメージを受けた時、そのプレイヤーは受けたダメージ1000につき1つ、自分の『スピードワールド・リミテッド』に乗っているスピードカウンターを1つ取り除く。
④先頭のプレイヤーから見て周回遅れになる度、このカードからスピードカウンターを1つ取り除く。取り除けない場合、自分はデュエルに敗北する。
⑤自分用スピードカウンターを取り除くことで、以下の効果を発動する。この効果はメインフェイズにのみ発動できる。⑤の効果はターンに1度しか発動できない。
4個:相手プレイヤーに800ポイントのダメージを与える。
7個:カードを1枚ドローする。
10個:フィールド上のカード1枚を破壊する。

という感じです。バーン効果にスピードスペルが必要なくなった代わりにターン制限がついて火力が固定されました。また、スピードスペル以外の魔法も普通に使えます。スピードカウンターはアニメだと先攻1ターン目は増えないんですが、本作では増えます。デュエル構成の都合ry。

これまでと違って本家のキャラを扱うということで、想像よりも書くのが大変でした。遊戯王小説書いてる皆さんの凄さを改めて実感しました。
亀更新っぽいですが、今後もよろしくお願いします。

 

<次回はこちら!>

 <前回まではこちら!>