焼き肉の熱血遊び日記

漫画アニメ特撮カードゲーム大好きな男の趣味ブログ。

バスターブレイダーでデュエルキングになったのでデッキ紹介[デュエルリンクス]

どうも、焼き肉です!

 

タイトルの通り、バスターブレイダーデッキの紹介です。(以下バスブレ)

 

今のランクマッチについてもちょっとだけ語っていこうかなとも思います。

 

とりあえず、デッキレシピを画像で。

 

https://pbs.twimg.com/media/Dtf52lXVYAA95BX.jpg

 

一応文字でもレシピを書いておきます。

 

ラクリ参参九 2

伴竜 3

バスブレ 3

融合素材の代わりになるやつ 合計3

破壊剣士融合 2

カナディア 1

グレイモヤ 1

DNA 3

心鎮 3

 

エクストラデッキ

竜破壊の剣士バスターブレイダー 2

スターダスト 1

ブラックパラディン 1

鬼岩城 1

 

という感じです。理想はカラクリが3でカナディアが2か3なんですけど、筆者は画像の分しか持ってないのでこの枚数になってます。持ってる人はグレイモヤとかを抜いて入れれば良いと思います。

 

  • デッキの動き

破壊剣士融合で強力な融合モンスターを召喚して制圧します。竜破壊バスターブレイダーは相手の場のドラゴン族モンスターを全て守備表示に変え、効果の発動を封じ、さらに相手の場と墓地のドラゴンの数だけ攻守が上がります。DNAで相手モンスターをドラゴンにして、その攻撃と効果を封じつつ、高い攻守で制圧する、というのが基本的な勝ちパターンです。

 

竜破壊バスブレには、「このカードは直接攻撃できない」という効果があります。なので相手の場にモンスターがいなくなってしまうと、竜破壊バスブレは攻撃できない置き物と化してしまいます。バスブレのデュエルが長い理由の主な原因はこれです。

そうなった場合、心眼の女神などの攻撃力1200くらいのカードたちでビートすることになります。ちょっと頼りなく聞こえるかもしれませんが、これらでも3回くらい攻撃すれば勝ちになるので、制圧できてる間は問題ありません。

 

  • このデッキの長所と短所

まず長所ですが、単純にカードが強いです。竜破壊はもちろん、破壊剣士融合は相手モンスターを素材に出来る上に自分の効果で墓地から手札に戻ってきます。

伴竜も、召喚しただけでカードが増える上に、自身をリリースするだけでバスブレが出せてしまうし墓地から復活するしチューナーだしで、もうメチャクチャって感じです。

カードの強さで言えばリンクスのカードプールの中ではトップクラスだと思います。

青眼やドラグニティのようなドラゴンデッキが相手なら破壊剣士融合できればかなり楽に勝てるのも良かったです。

また、DNAですが、これが特定のデッキに刺さって相手のデッキを機能停止させてしまうこともあります。主に魔導系デッキに対して。

先攻後攻に左右されにくい点も個人的にはポイント高いです。

 

ここから短所です。

初手によっては何もできずに負けるゲームが発生します。極論どのデッキもそうなんですけど、このデッキはコンボデッキなので、事故率は他の環境クラスのデッキに比べて高いです。

また、デュエルスパークとか狡猾な落とし穴みたいな、フリーチェーン系の除去カードが厳しいです。グレイモヤみたいな攻撃反応とかはプレイでどうにかなることもありますが、フリチェはキツいです。

 

あと構築難易度が高いです。パック産URが非常に多いので。

 

  • 採用理由

伴竜は確定で3。

 

ラクリは少ない枠で多くの仕事ができるので採用しました。主な仕事は事故った時の延命と、竜破壊で制圧した後のアタッカーです。延命としては守備力が高いスノーマンの方が良いんですけど、あっちはアタッカーになれないのでカラクリにしてあります。

「墓地に送る」なので、破壊された時云々を無視できるのも優秀です。

ただリバースした時の効果が強制なので邪魔になる時はあります。

 

バスブレは3です。伴竜で場に出したいカードなので、枚数が多い方が強いと思ってます。

 

心眼の女神等は余った枠に入れました。融合する分にはバスブレ同様のはたらきをし、制圧の後はアタッカーにもなれるので、非常に優秀です。このデッキの融合モンスター全ての素材になれるので、邪魔になることも少なく、使いやすいです。

守備表示のディシジョンガイを倒せる攻撃力がナイスです。

 

破壊剣士融合

被ると弱いので2枚くらいが限度なのかなと思ってるカードです。1でも回るとは思うんですが、1だとコズサイとかゲーテで除外されるとそれ以降融合できなくなってしまうので、それが怖くて2にしてます。

 

DNAも確定枠かなと思います。上でも書きましたが、思わぬところで相手のデッキに深刻なダメージを与えることもあるので強力なカードです。魔導の魔法カードは場に魔法使いがいないと使えないものが多いので、それらを封じることができます。ただ、DNAの効果は裏守備には及ばないので、裏守備の魔法使いをリリースしてサイレントマジシャンを出すことは普通にできます。あとDNAにチェーンしてゲーテを撃つのも可能なので、過信は禁物です。

また、ドラグニティのシンクロモンスターはチューナー以外の鳥獣族モンスターを素材にしないといけないので、DNAを使っておけば召喚を封じることが可能です。

聖騎士の装備魔法も戦士族にしか付けれないので、刺さります。

 

心鎮は強いです。このデッキは罠を除去できないのが弱みですが、それを一気に解決できます。腐ることもありますが、その時は破壊剣士融合やラスギャンの効果で捨てればいいので、全くの無駄にはならないです。

被りが弱いのと、腐る可能性が結構あるので2です。

 

カナディアは広い範囲に刺さる強力な効果に加え、このデッキでは攻撃力1200のアタッカーになれるのも強い。2とか3入れたいですね。

 

エクストラは、竜破壊2、ブラパラ1、スタダ1までは確定かなと。鬼岩城はぶっちゃけ出したことはないのですが、入れておけば役に立つ局面はあるかなと思います。

 

スキルはラストギャンブルです。ドローセンス光とかディスティニードローもありだとは思ってますが、欠点が気になったので今回はラスギャンです。

ドロセンとディスティニードローの共通の欠点として、最近は青眼やヒーローのような一瞬でライフを持ってくデッキが多いので、発動するチャンスがあまり無いんじゃないかというのがあります。このデッキは事故った時の防御力がめちゃくちゃうすいので、発動する前に死ぬのはザラです。

ドローセンスの場合、発動できたとしても事故の解決にならないことがあるのも気になります。ただ、キャラでスキルがバレることがないというのは長所です。

ディスティニードローは事故の解決という点では良いんですが、キャラが闇遊戯な時点でバレるからライフを調整される危険があります。

 

ラスギャンも運要素が絡むのが気にはなるんですけど、このデッキとの相性も悪くなく、負けを勝ちに変えれる可能性が高いと思ったので採用しました。

 

コズサイを採用してスキルをスリカエにするのもかなりアリだと思いますが、スリカエはカードの枚数が増えてるわけじゃないので、はまった時のラスギャンの方に魅力を感じ、今回は不採用で。

 

未採用カード

沼地の魔神王・融合・レッドアイズスラッシュのセットです。

破壊剣士融合はターンに1回しか使えないので現状のレシピだとターンに1回までしか融合できないってことになります。ですが融合を入れると1ターン内に複数融合できるようになります。これによってサイレントマジシャンの「ターンに1回魔法無効」みたいなのを突破できたり等、対応力が上がります。

採用しなかったのは、サイレントマジシャンの数がそんなに多くないのと、バスブレの最低限の動きさえすれば勝てると思ったからです。あとスラッシュがカナディア環境ではあまり強くないです。今回はカラクリでサイレントを処理できたというのもあります。

グレイモヤが正直枚数合わせだったので、その辺の枠を調整してこのセットを入れるのも悪くはなかったかなとは思ってます。

 

破壊剣士の宿命も不採用です。効果はすごい強いです。墓地を使うデッキには強烈に刺さりますし、攻撃力アップもかなり強いです。伴竜でサーチできるので、1枚入れるだけで仕事はできます。

強いんですが、このカードのおかげで負けが勝ちに変わる状況ってそんなに無いと思うんですよね。それよりこのカードが初手に来て困ることの方が多いと思ったので抜いてます。

DNAを引けてない時のヴァンパイア戦とかユベル戦では強いと思います。ユベル第2形態は墓地に送るだけだと後で復活できちゃうので、除外するのが有効です。

 

破壊剣のモンスターもアタッカーとして採用を考えてたことはありますが、心眼とかでビートする型にしてからは必要性をあまり感じなくなり、不採用です。

 

証も未採用です。4枚目以降のバスブレとして入れるのはありだと思ってますが、少なくともバスブレを削ってこれを入れるのは無いかなと。

このゲームは初手も初期ライフも少なく、雑にアドをとれるカードも少ないので、情報アドが非常に大事です。ですが証は使った瞬間に情報アドが消し飛んでしまうので、それが怖くて抜いてます。特にミラーは先にデッキがバレた方が不利になるので、それは避けたいところです。

 

  • プレイング

竜破壊とDNAを揃えにいきます。その後は、相手の場にモンスターがいなければ竜破壊を守備にすることでグレイモヤ等をかわしつつ、素のバスブレや心眼等でダイレクトアタックをしかけます。

無駄なカードは伏せないことが大事です。魔法罠ゾーンは基本的にカツカツなので。融合をブラフとして伏せたらコズサイで除外される、とかそういう怖い話もあるので。

あとラスギャンは「次のターンはないな」と思った時に使います。5ターン目過ぎたら即使うとか、そういう感じじゃないかなと思ってます。

 

  • 環境

前提として、DNAと竜破壊が揃えば大体勝てます。逆に、事故ってて相手が早いと大体負けます。

この前提にあてはまらない特殊なデッキについて書きます。

  • 青眼

ドラゴンデッキなので竜破壊が出れば基本楽勝です。ただ負け筋はあるので、言うほどカモではないです。負け筋は事故に、サイコエースで竜破壊を処理される、などです。ゲームスピードが早いので、事故った時にごまかしがききません。

罠が少ない=狡猾が入ってる可能性が高い、なので、勝ちパターンに入ったあとも慢心はしない感じでいきましょう。竜破壊が除去されても、即座に2体目を出せるようにしておけば安心だと思います。

 

  • ヴァンパイア

供物が入ってるパターンをいくつか見ました。青眼同様、2体目の竜破壊はいつでも出せるようにしましょう。

 

  • デュアル

今環境にいるデッキの中で一番苦手に感じてます。竜破壊DNAが揃ったとしてもデュアルスパークで簡単に崩されるので、めちゃくちゃ分が悪いです。デュアルが環境に増えてきたらバスブレきついかなぁと思います。

 

  • ミラー

わかりやすい勝ち筋は、ブラパラを先に出して相手に融合させない、心鎮を先に決める、相手の融合を除去する、です。相手のデッキがバスブレだと分かっていると、これらの動きが決まりやすくなるので、それまではこっちのデッキがバレないのが理想です。証が邪魔になるのはこういう時です。

ミラーだと汎用罠がめちゃくちゃ強いので、それに備えるならば汎用罠は多く入れたいところです。

  • 終わりに

バスブレは動きが決まればデュアル以外のたいていのデッキに勝てるパワーがあります。事故との勝負はありますが、このデッキパワーの高さ、メタゲームにおいての立ち位置の強さは魅力的かなと思います。シンクロモンスターの追加など、伸びしろも十分あるデッキなので、構築難易度は高いですが、おすすめのデッキかなと思います。

 

では、今回はこれで。お読みいただき、ありがとうございました!

 

[おすすめの過去記事はこちら!] 

 

 

 

 

 

FGO 2部3章 <紅の月下美人> クリア後の感想・考察

どうも、焼き肉です。

タイトルの通り3つめのロストベルトのシンをクリアしたので、振り返りながらの感想です。

なのでシンはクリアしている前提の記事になります。ネタバレ注意です。

筆者は型月にわかなので、情報や知識に間違っているところがありましたらご指摘いただけると助かります。

ネタバレ回避のため、ちょっと下にスクロールです。

 

 

 

 

 

 

・はじめに

めっちゃアツかったー!!!!!!!!!

 

早くも筆者の頭の悪さが伝わってしまったことかと思いますが、熱かったのはほんとです。特に始皇帝周りが熱かったです。2部はテーマがテーマなんで悲しい結末にはなるんですけど、彼がほんとに堂々としているというか爽やかに送り出してくれたので、ストーリーが終わった後の後味がとても良かったです。

 

では、キャラひとりひとりについて雑感。

 

爽やかな人だったな、というのがパッと出てくる印象です。非人道ムーブかましまくりなんですけど、スパさんや荊軻さんはじめ、キャラクターたちの最後に対しては真摯な言葉を言ったり、部下からは慕われてたりと。良玉に対しても労いの言葉をかけてましたしね。「固けりゃなんでもいい」とか韓信にキモ過ぎると言ったりとかコミカルな部分も強くて、マジFateのボスキャラ、って感じでした。

個人的に彼のかっこいいなーと思う場面は最後の方ですね。人民というありかたを認めてカルデアの面々と語る場面とか。

「其方の世界の民は、否、人民は、皆これほどまでに強いのか?」

に対しての主人公の答えは「他の誰かであったとしても、英霊は助けに来てくれた」というものでした。自分の強さを誇るわけじゃなく、英霊たちへの感謝が滲んでた台詞で、すごく好きでした。

始皇帝の世界は始皇帝ひとりが人理で、究極と言えるくらい平和なもの。主人公たちの世界は争いは絶えないけれど、人民それぞれの祈りに答えうる英霊がいるという人理。始皇帝との決戦はこれらの人理のぶつかり合いで、その決着のあとの言葉として、主人公の答えはめちゃくちゃ決まってて、マジでクールでした(語彙力)

人民という言葉は、荊軻さんから言われたのをそのまま使ったのだと思いますが、始皇帝が人民という言葉を使うのもかなり感慨深いものがありますよね。中国はこっちでは長い歴史の果てに人民共和国という名前になってるわけで。

始皇帝の世界は可能性がないとのことでしたが、もし何かがどうにかなっていたら、この世界より良い世界に育っていたのかなぁとはどうしても思ってしまいます。だから最後のマシュの言葉や、それに対する会話が活きてくるわけですね。

それでも託してくれた始皇帝の度量というかなんというか。それはすごく勇気があることで、もうかっこいいわけですよ!(語彙

 

主人公たちに託す、と決めたあとも堂々たる振る舞いで、そこが爽やかでした。

 

「其方らが案じているような悲劇や愁嘆場はないものと請け合おう。朕の民は、死も破滅も怖れぬ。そもそも恐怖や絶望を理解せぬ。そのように朕が導き、育てた」

「みな悲嘆もなく、悔悟もなく、昨日と同じ明日のみを期して今日を過ごすのみ。いずれ終焉の日が来たとしても、その在り方のまま眠るように果てるだろう。それが朕が目指し、そして実現したこの楽土。愛すべき民たちの世界である。」

カルデアの背中を押す気持ちで言った言葉だと思われますが、自分の世界への自信もうかがえます。

 

それに対してダ・ヴィンチちゃんが「……そうか。」とだけ言うのも渋かったです。肯定も否定もしないのが。互いのありかたのぶつかり合いをしたけれど、どちらも相手を否定しないというのが爽やかな後味に繋がったのかなと。

シンの世界観は構造がシンプルなので始皇帝の決断=シンの総意、ってことになるわけで。彼が託すと決めたらそれで決まりなのですが、だからこその責任が彼にはあった。だから、カルデアの背中を押し、自分の世界が迎えるであろう結末を堂々と告げる。自分の世界の民について語る彼には誇らしさのようなものも感じたような気がします。敗北は認めるけれど、シンの民は「悲しい人たち」とか「汎人類史の人よりも劣った人たち」とかではない。自分の民は愛すべき民であったと、最後まで堂々と告げる。それが民たちへの、彼なりの仁義だったのかなと思いました。

 

虞美人に対して提案するところもかっこよかった。ホームズも言ってましたが、虞美人を言葉だけでやりくるめるのはさすが。演算能力の賜物なんでしょうけど、始皇帝の英霊システムへの理解の早さには驚きました(笑)

 

カルデアに対しても虞美人に対しても、彼は「導く」という立場を取っていたと思います。敵だったとかそんなことにこだわらず、導き育てる。最善を目指す。本質が守護にあるというのはこういうことなのかなと。Fateには「王」は何人もいますが、彼もまた「王」だったのだと。

 

最後には大地に立つところは個人的には本章のベストシーンかなと。

「人は自分だけ」というのが彼のやり方でしたが、最後の最後ではそれと違う行動をしましたね。民と自分を同じとすること。月を愛する詩を民がうたうのを良しとすること。「王」である彼がそれまでのやり方を曲げてああいった行動をとるというのは、計り知れないほどスゴいことだと思うんですよね。たぶんあそこに至るまでに自己矛盾とかいろいろあったと思うんですけど。その心の動きは想像するしかないですが、でもあのシーンの彼はとても晴れやかに見えるんですよね。澄んでいるというか。堂々としてるんですけどそれまでの堂々さとはちょっと違くて。

妄想ですけど、民ひとりひとりを見て回ってたのかなぁと思ったり。

いずれにしても、あれが彼の短い、最後の旅の始まりだったのかなと。良い旅であることを祈るばかりですね。でも良い旅に決まってますね。彼の愛した民たちの世界なんですから。

 

で、最後に貰える礼装が「不死鳥は大地に」、ですか。正直不死鳥って聞くと新所長の方が出てくる件。始皇帝についての知識が皆無に等しいので鳥がどこから来たか分からない(汗)

礼装のテキスト?めっちゃ神ですよ君ぃ。

 

爽やかで、王で、勇気があって、そして強い。こんなんかっこいいに決まってるやろー!って感じのキャラでした。大好きになりました。ガチャが……怖いなぁ……(震え)

 

  • 虞美人 

宝具演出めっちゃかっこいいと思います。「あ、サーヴァントになるんだな」と思いましたが今回は保留ということで。ていうかシンってまだ消えてはないっぽい印象を受けたので、もう一悶着あるのかなぁとか思ってたりもします。ないかなぁ。

 

彼女は感情からの行動がもうダイレクトなので、感情が伝わりやすかったです。キャラとしてシンプルというか、余分な情報がない感じ。人ならざる者なので彼女の胸のうちは誰にも完全に理解することはできないし感情移入も難しい。だからこそ、こういうシンプルなキャラクター造形にしたのかなぁと思いました。

 

彼女に関しては伏線が素晴らしかったなと。コヤンスカヤを嫌ってるのも伏線だったわけですね。人間嫌いという言葉も、最初は普通に人見知りなのかなぁと思ってたら、全然レベルが違った。

オフェリアの死を悼んでいたのは、最初は普通に仲間だからかなぁと思ってたんですが、どうも違いましたね。人間が嫌いなので。だからあれはたぶん、「生まれながらに特殊な力を持っていて、それによって命を落とす結果になってしまった」という部分に、感情を動かされるところがあったのかなぁと思ったり。

だからこそ、コヤンスカヤの「何もしなかったなら何も言うべきじゃない。それが人間の世界の常識」という言葉は、人間の世界から脱することができなかった虞美人に対しての強烈な皮肉ってことになるのかなと。

また、ペペは発言的に虞美人の正体を知っているかまたは何らかの察しがついている的な感じがするので、その辺りも含めて、次の4章に期待かなぁと思います。

 

彼女を召喚する予定のマスターは項羽も引こう!っていう感じにならざるをえないのが、業が深いなと思いました。FGOの闇は深い(迫真)

あと普通にめっちゃ可愛いと思いました。

また展開があるキャラだと思うので、期待しましょう!

 

世間を騒がすイケメン。冒頭の会話はやはり印象的でしたね。あ、あの会話の相手が虞美人だったのかー!と素直に驚いたマスターは僕です。

虞美人の掘り下げには彼との冒頭の会話は不可欠でした。あそこから、彼女の優しさとか、人間に対する複雑な感情を読み取ることが可能なので。そういった意味では重要なキャラだったなと。

虞美人を鼓舞する様はとても男らしかったです。

勝ち目がない闘いばかりさせられてるからか、どーしても「強い!」とか「大活躍!」っていう印象はないんですけど、ストーリー的にいぶし銀の活躍をしてたんじゃないかなと思います。

 

  • 秦良玉

 カルデアにぶつかって来る立ち位置でした。始皇帝サイドのキャラはなんか、我々と違う感覚の人が多いというか。シンの民は恐怖とかを理解しないですし情報も与えられてなく、始皇帝はその辺ドライだし韓信&衛士長はヒャッハーだしってことで、彼女が唯一のまとも?ていうか、かなり近い感覚で問答できるキャラでした。

彼女の言葉も正しくて、状況が切迫していたとはいえ主人公も答えを言えないという、かなり悲しい最後でした。彼女も、主人公たちに言ってもしょうがないというか、そういったことは自覚してるのが悲しかったです。2部のテーマの難しさを再確認できたシーンでした。

 

カルデアでは召喚できてませんが(涙)、マイルーム性能が神がかっているという話で。シリアスからコミカルまでこなせるキャラということで、今後のイベントでも活躍しそうな予感。その辺も期待って感じですね。

 

彼もまた、2部のテーマに突っ込んだ言葉を投げかけてくれましたね。自分たちが正義だと断じてはいけないという。スパさんからの言葉、良玉さんからの問答、そして始皇帝との決着、というこの流れがスムーズというかスピード感がちょうどよくて、テーマがすごく入ってきたように思います。

この記事書いてる時に知ったんですが、設定を虚淵先生が作ったキャラということで。心なしかノリノリで書いてらっしゃるような気がしたのはそのためでしょうかね(笑)

普段はあまり見せない面を今回は大ボリュームで見せてくれたので、そりゃもーかっこよかったです。スパルタクスには誰でもなれる。託すことの大切さを教えてくれました。

相手を信じて託すということは2部の大きなテーマのひとつだと思います。自分が消えてしまう状況ならなおさらそれは難しいですよね。スパさんや始皇帝は今回の話を通して、託すことのその勇気や重さを示してくれたのかなと。

 

元々好きなキャラでしたがもっと好きになりました。

 

始皇帝がボスならもう出るしかない!ってことで登場の、みんな大好き荊軻さん。

スマホはめっちゃシュールなんですけど、始皇帝の興味を引くものを使って暗殺を試みるというのは史実でもそうだったとのことだったので、そのオマージュだったのかな?にしてもシュールですけど(笑)

シュールではあるんですけどあれもやっぱり良いシーンですよね。僕はギルガメッシュの「人間は地球を超えて外の宇宙に漕ぎ出すだろう」っていう台詞がめっちゃ好きで、始皇帝にも誰か言ってくれないかなーと思ってたら荊軻さんがズバッと言ってくれたので。熱かったです、彼女が人間を信じているということが伝わってきて、すごく嬉しい気持ちになりましたね。

暗殺はやっぱり失敗してしまいますが、ストーリーの重要な部分を担う重要キャラとして活躍しましたね。彼女が詩を少年に教えてなかったらラストシーンもないわけで。

 

あ、CMがめっちゃ美人です。

 

今度育てて使ってみようと思いました。

 

馬です。

 

馬と共に今回の癒し枠をつとめたきたない軍師。ぶっちゃけ活躍はあんまりだったので再登場に期待。

スパさん退場からの馬とこの人の登場はめちゃくちゃ胸熱でした。

実装は先だと思いますが、味方を自爆させるというのを忠実に再現すると、味方を退場させて疑似オダチェンが可能になるのでは?これは人権ですわー。

まぁ冗談?はともかく、実装が楽しみですね。アーツサポートのキャスターだと良いなー(ルーラーになった探偵から目をそらしつつ)

 

ヒャッハー&癒し枠ということで。え、衛士長って、李書文さんってことでいいんですかね?ついに来るんですかアサシン李書文さん?

韓信さんはマジでヒャッハーでしたね。そりゃ冷凍しますわって感じ。主人公たちと話してる時は全然どもらないのが怖かったです。

やっぱりコミカルパートがあると愛嬌が出て来るっていうか、このふたりもなんか憎めない感じで終わったと思います。

 

 

  • バトルについて

最後に、本章のバトルについてちょっと振り返りながら。

今回はボス戦よりも、韓信とかその辺の方が難しかったなと感じました。キアラとか天草がいれば楽だったみたいですけどうちには二人ともいなかったので。僕はリップで行きました。

始皇帝のクリは「まじで!?」って感じの威力で、基本1撃でこっちのサーヴァントがやられてしまうという。あれはキツかった。邪ンヌで行ったんですが、相性有利なのに一撃で沈んでしまうという(汗)

最後は絆礼装付きのヘラクレスで勝ちました。終わってから思ったのですが、新宿のわんわんをスカディでバフる戦法だったならヘラクレスが出るまでもなく勝ってたような気が。やっぱスカディはすげーや。

空想樹は、マーリンと孔明先生の魂のブレイブチェインで勝利。サポートの始皇帝借りて闘いはしたんですけど、途中で「空想樹の宝具を全体無敵で防げない!」ってなって、途中でオダチェンしてしまいました。あとで知ったのですが空想樹の宝具は別に喰らっても即死するほどではないみたいだったので、それなら始皇帝のままでもよかったかなと思ったり。

あとあのタイガー号?的なやつ、名前覚えてないですけど、あれとの一番最初のバトルが地味にキツかったです。30万くらいありましたよねあれ。 

 

最近スカディとかバサスロで楽してばっかりだったからかバトル勘が鈍ってたような。精進します。メモリアルクエストみたいなの常設してくれないかなぁ。

 

  • 終わりに

まーちょっと短かったっていうか、あんまり活躍してないキャラとかもいたんですけどね。でもスピード感っていうか、テンポの良さで、最終的に良い感じになってたのかなと思います。

何回も言ってしまってる気がしますが、シンは爽やかな印象でした。始皇帝も民も皆、悲しい人たちじゃなかったというか、希望を託してくれたのかなと。というわけでね、これからのストーリーも頑張っちゃおうかなと、そんなマスターの感想でした!

 

ここまでお読みいただきありがとうございましたー!

 

 

 

<過去のおすすめ記事はこちら!> 

 

ハンドルネームとブログ名について

どうもヴァーチャルです。

 

という挨拶を始めてからけっこう長いですが、この「ヴァーチャル」という名前を変えようと思います。理由は、入力がめんどくさいのと、カタカナでなんか親しみにくい、覚えにくいのでは、と思ったからです。

新しい名前は「焼き肉」にしようと思います。

またそれに伴ってブログ名もいじろうかなと。この前変えたばっかりですけどね。「焼き肉の熱血遊び日記」とか。やっぱりその人の名前がブログの先頭にあると分かりやすいかなと思ったので。

 

さぐりさぐりでゴタゴタしてしまって申し訳ないです。最終的に良いブログにできるように頑張りますので、よろしくお願いします。

 

第7話 C'est La Vie

「黒き疾風よ。秘めたる想いをその翼に現出せよ! シンクロ召喚、舞い上がれ『ブラックフェザー・ドラゴン』!!」

 遊黒&クロウのデュエルは続いていた。
 現れるのは、細い体躯、鋭い爪、大きく広がった黒と赤の翼。ブラックフェザーの特徴をおおいに有したモンスターであると言えよう。ドラゴンだけど。攻撃力は2800。
 強力なモンスターが相手の場にも現れたにも関わらず、遊黒くんは余裕を保っていた。不敵に笑う。

「クク、それがシグナーの竜か。美しいな。だがミラーフォースはまだ俺の場に生きている。攻撃を宣言した瞬間、ドカンだ!」
「忘れちゃいないぜ。しかもミラーフォース・ランチャーもセットでな。アンチリバースも通用しねぇってわけだ」
「その通り。さぁ、どう来る?」
「なら、俺は絆で対抗するぜ!」
「絆?」

 ここでデュエルの状況を整理しておこう。今はクロウくんのメインフェイズだ。
 スピードカウンターは互いに5。
 クロウはライフ4000。手札は3枚。場にはブラックフェザー・ドラゴンと『BF−黒槍のブラスト』の2体。伏せカードは無し。
 遊黒はライフ3500。手札は2枚。場には『A-アサルト・コア』と、それに装備された『B−バスター・ドレイク』。さらにフィールド魔法の『ユニオン格納庫』。伏せカードは『ミラーフォース・ランチャー』と『聖なるバリア─ミラーフォース─』の2枚だ。
 ミラーフォースは相手が攻撃した瞬間に発動し、攻撃モンスターを全滅させるという最強クラスのトラップ。そしてミラーフォース・ランチャーはセット状態で破壊されればミラーフォースと共に場に復活する。もはや遊黒くんのミラーフォースから逃れる術はない、ように思われたが。

「見せてやるぜ、チーム5D'sの絆の力! 俺は装備魔法『白銀の翼』を、ブラックフェザー・ドラゴンに装備!」
「あ、白銀の翼だー!」
「ん、あのカードがどうかした?」

 龍亞くんが反応したのが気になったので聞いてみると。

「あのカードはさ、元々は遊星のカードなんだ。でも俺たちチームだからさ。互いのデッキのカードを交換したりして、カスマタイズしたんだ!」
「良いチームワークだったんだね。……もしかしてカスタマイズ?」
「あ、ま、まぁ、そうとも言う。で、でも最初からそうだったわけじゃないよ。ユニコーンっていう強いチームと闘って、そこから色々学んだんだ。ひとりは皆のために、皆はひとりのために、ってさ」
「皆のために、か。龍亞くんは5D'sが大好きなんだね」

 ボクがそう言うと、龍亞くんはさすがに照れたのか赤くなってしまった。余談だがこの時の龍亞くんの顔には本能的に来るものがあった。

「ま、まぁ、そりゃ好きさ。でも絆にしがみついてるだけじゃダメだってことも、ジャックから教えてもらった。だから俺たちはそれぞれの道に進むんだ」
「そうか。ボクも楽しみにしてるよ。龍亞くんがプロとしてバリバリ活躍する日をね」
「へへ、まっかせてよ!」

 仲間。その言葉はボクに突き刺さるものがある。ボクはかつて仲間を失った。その時の記憶が頭をよぎる。龍亞くんはおそらく気づいていただろう。でもそこには触れないでくれた。優しい子だ。
 ボクは絆の力の真価をまだ知らない。遊黒くんも、絆の力という言葉にピンと来ていないようだ。その力が人をどれだけ強くするのか。その答えは、このデュエルの中にある。そんな気がする。

「絆、絆か。そんなものでデュエルに勝てるならば苦労はないがな。クロウだけに!」
「だったら見せてやるぜ、俺の絆パワーってやつを! ブラストを守備表示に変更」
「なるほど。ミラーフォースの効果は守備表示モンスターには及ばないからな。だが、それでは何の解決にもなっていない!」
「白銀の翼は装備モンスターが効果で破壊される時、身代わりになることができる」
「なに!?」
「行くぜ。ブラックフェザー・ドラゴンの攻撃!」

 白と黒の翼がはためき、赤い光がはしる。竜のくちばしに風が渦巻き。

「ノーブル・ストリーム!!」

 漆黒の嵐が放たれる。音速、不可避の一撃。ミラーフォースは開かれることなく。

「く、ぐぅ!」

 嵐は直撃する。その迫力は凄まじい。アサルト・コアは守備表示だったのでダメージは発生しないが、遊黒くんは少しバランスを崩しそうになっていた。しかし。

「く、ククク!」
「何を笑って、な、アサルト・コアが破壊されてねぇ!?」
「バスター・ドレイクは装備モンスターが破壊される時、自身を身代わりにすることができる」
「へ、お前も白銀の翼と同じ効果で来るとはな」
「だが同じなのはここまでだ。バスター・ドレイクが墓地に送られた時、『C−クラッシュ・ワイバーン』を手札に加える」
「なに?」

 これでABCが揃った。だが合体モンスターはフィールド上で合体するのが基本。アサルトが墓地に行った今、合体の危険はないと、クロウくんの顔は言っていた。彼はカードを2枚伏せてターンを終える。そして遊黒くんのターン。互いのスピードカウンターはこれで6。遊黒くんはミラーフォース・ランチャーを発動し、その効果を発動する。

「手札のクラッシュ・ワイバーンを墓地に送り、ミラーフォースを手札に加える。さらに『マジック・プランター』発動。ランチャーを墓地に送り2枚ドロー」
「自分でCを墓地に送るとはな。合体は諦めたってわけか?」
「慌てるな。間もなく訪れる、お前の悪夢は」
「?」
「『デビルズ・サンクチュアリ』発動」

 あれはトークンを1体特殊召喚するカード。トークンの攻守は0。おそらくあれは新たなるモンスター召喚の布石。ボクの予想に応えるように、アサルト・コアとトークンが生け贄の渦に飲まれていく。

「2体のモンスターをリリースし、アドバンス召喚!」
「ここで最上級モンスターか」
「出でよ『真紅眼の黒竜』!!」

 天より舞い降りる漆黒のドラゴン。ブラックフェザー・ドラゴンと睨み合う。2体とも「黒が似合うのは俺の方なんだぞ!」と言っている、ようにボクには見えた。いや、メスの可能性もあるから「俺」じゃないかもしれないけれど。
 会場から大歓声が沸き上がる。この世界においてもレッドアイズは伝説のレアカード。もはや失われたのではないかと思われていたカードが突如現れたのだ、その興奮は凄まじい。龍亞くんも相当エキサイトなう。

「す、すげー! すげーすげーすげー! 斬せんせー、あの人は一体!?」
「神様の使い。天から舞い降りた天使」
「え?」
「いや。でも、驚くのはまだ早いかもね」

 クロウくんも驚いていた。しかしその闘気は微塵も揺らがない。

「……最高だぜ。まさか伝説のカードと闘える日が来るとはな!」
「勢いが良いな。ふ、だがそれもいつまで続くか」
「レッドアイズは攻撃力2400。俺のドラゴンには及ばねぇ。しかも白銀の翼は装備モンスターの戦闘破壊をターンに2回まで無効にする!」
「気づいていないようだな。すでに悪夢は、お前の未来を浸食している」
「?」
「ククク。ABCはフィールドだけでなく墓地からも合体することができる」
「なんだと!?」

 墓場から溢れ出した。破滅の気配。3つの輝く鉄は虹色の放物線を描き、今、ここに結実する。

「滅びの光に導かれし鉄の魂。終わりなき悪夢となりて、この世界に降り注ぐ」
「くっ!」
「行くぞ。超☆悪夢合体ーっ!!」

──ガチョーン! ガチョガチョガチョーン!!──

「『ABC-ドラゴン・バスター』!!」

 禍々しい機械竜が現れる。その攻撃力は3000。ブラックフェザー・ドラゴンを上回る。クロウくんの頬に汗が流れる。感じているのだ、圧倒的な破壊の力を。

「やってくれるぜ! まさか墓地から合体とはなぁ!」
「ドラゴン・バスターの効果発動。手札を1枚捨てることで、場のカードを1枚除去する」
「なに!?」
「消えろ、ブラックフェザー・ドラゴン!」

 破壊の光線が黒翼の竜に突き刺さらんと駆ける。白銀の翼がそれを阻むように輝く。

「白銀の翼は破壊を無効にする! もちこたえろぉ!」
「ドラゴン・バスターの効果は破壊ではない、除外だ!」
「ば、バカな!?」

 抵抗むなしく、光がブラックフェザー・ドラゴンに炸裂し、フィールドから消してしまう。クロウくんはエースモンスターを失い、対して遊黒くんの場には最強クラスのモンスターが2体。クロウくんは歯を食いしばる。

「……くそっ!」
「バトルだ。レッドアイズで黒槍のブラストを破壊。そして、ドラゴン・バスターのダイレクトアタック!」
「く、くっ!」
「遊黒バスター!!」

 最強の一撃が、クロウくんとブラックバードに叩き込まれる。

「く、ぐぉぉぉっ!!」

 その凄まじい衝撃に、さすがのクロウくんもスピンし、スピードも当然大きく落ちる。

「ははははは! 今度こそ、俺の勝ちが決まったようだな。これ以上は醜態を晒すのみ。サレンダーしろ」
「……へへへ、ははははは!!」

 クロウくんは笑う。苦し紛れや虚勢じゃない。お腹からの、力強い笑い声だ。遊黒くんはクロウくんを不思議なものを見るように見る。

「……人間の思考には、まだ俺が理解できていない部分があるようだ。なぜ笑う?」
「だって面白ぇじゃねぇか。世界にはまだまだ俺の知らないカード、知らない相手がいるんだって分かったんだからな。最高だぜ!」
「ふ、その感情なら理解できるよ。だが喜んでばかりもいられまい。このデュエル、もはや全てにおいて俺がリードしている」
「懲りねーやつだな。目線が下がってるぜ?」
「?」
「へ、上を見てみろ!」

 クロウくんの言葉に反応し見上げれば、そこにはブラックフェザーのモンスターが2体。

「な、なに?」
「『BF−天狗風のヒレン』の効果。このカードが墓地に存在し、俺が直接攻撃によって2000以上のダメージを受けたとき、こいつと墓地のレベル3以下のBFを特殊召喚できる!『BF−疾風のゲイル』と共に復活!」
「いつの間にそんな、エンジェル・バトンの効果か!」
「そうだ。ヒレンはレベル5チューナーで、ゲイルもチューナー。シンクロ召喚への布石は整ったぜ」

 状況を理解し、遊黒くんは笑う。シンクロ召喚はチューナーだけでは行うことはできない。次のドローでチューナーじゃないモンスターをドローできなけば意味はない。その余裕の笑みだ。しかも。

「ドラゴン・バスターの除去能力は相手ターンでも使うことが可能。シンクロモンスターは確かに脅威だが、召喚前の素材を消してしまえばどうということもない。貴様に、奇跡は無い!」
「それはどうかな?」
「?」

 ここで遊黒くんは気づいただろう。通常ならばスピードワールド・リミテッドの効果により、1000以上のダメージを受けたプレイヤーのスピードカウンターは減ってしまう。しかしクロウくんのスピードカウンターは減らない。いや、それどころか。

「バカな、スピードが上がっている!? まさか!?」
「転んでもタダじゃ起きねー、それがクロウ様のデュエルよ! 俺は遊黒バスターを受けた時、トラップカード『デス・アクセル』を発動していた!」

 あれはダメージを受けた時に発動できるトラップ。そのダメージによってスピードカウンターは減らず、ダメージ500につき1つスピードカウンターを増やす。ダメージは3000。

「そ、それって、つまり!」
「スピードカウンター12だと!?」
「マックススピードだぁーっ!!」

 黒い彗星がフィールドを駆ける。最大最強のスピードで風をきる。クロウくんも、そしてブラックバードも、見ているこっちが気持ちよくなってしまうような、素晴らしい走りだった。速く、強く、美しい。
 しかし遊黒くんは揺るがない。現状を淡々と告げる。

「もはやスピードカウンターが増えることに意味など無い。お前は手札0。ミラーフォースもまだ場に生きている。逆転は不可能だ」
「お前、すげー強いクセにつまんねーこと言うな」
「?」
「だからこそ燃えるんだよ。それにスピードは俺たちライディングデュエリストの命、意味がないなんてありえねー。ライディングデュエルではな、デュエリストのスピードが魔法になるんだよ!」
「……!」

 そうだ。たとえ敗北が決定したとしても最後の最後まで全力疾走。それがライディングデュエリストの魂。そう聞いてはいた。だけど、ボクも遊黒も、その魂に直接触れるのは初めてのこと。遊黒くんは表情に困惑の色を残しながらも、微笑み。

「好きになってきたよ。クロウ、お前のことがな」
「ぶっ! な、なんだよ気持ちわりぃ!」
「まだ俺のターンは終わっていない。スピードワールドの効果。スピードカウンターを4つ取り除き、相手に800ダメージ!」
「ちっ!」

 これでクロウくんのライフは残り200。ライフ800はスピードワールドの効果ダメージによって敗北するデッドライン。それを超えてしまった。しかも次のターンで遊黒くんのスピードカウンターは再び4になる。それでジエンド。まさに絶体絶命。

「さらに魔法カード、『封印の黄金櫃』を発動」

 あれはデッキから好きなカードを1枚選んで除外し、発動から2回目の自分のスタンバイフェイズにそれを手札に加える、というカード。デッキから好きなカードを探してこれるというのはスゴく便利だけど、その選択肢の広さは逆に迷いを生むこともある。遊黒くんの眼は迷いを宿していた。クロウくんはそれを見て取り。

「へ、迷ってるみたいじゃねぇか。有利なんだ、ゲンでも担いでスパっと決めちまうのもアリだぜ?」
「ふ、有利だなんて気持ちは消えたよ。俺はお前ほど強くはない。さすが、世界の頂点に立った男だと思っている」
「俺たちは頂点になんか立っちゃいない。デュエルは時の運。1回の勝ちじゃ足りねー、満足できねーんだ!」
「……満足か」
「だからこそ俺は自分の力を試す。海外で、世界で! そしていつか遊星やジャックも倒し、このクロウ様が最強になるのよ!」

 力強い言葉。だがそれに反して、ボクらの横のセキュリティの彼は泣いていた。

「く、クロウ〜! だ、だからってセキュリティをやめなくたっていいじゃないか〜!」
「お、オジさん……泣かなくたって」
「俺は! クロウのデュエルをもっと間近で見てたかったんだよ〜!」

 その時、セキュリティの元にモヒカンが数名集まる。そして。

「アヒャヒャヒャ! げへへ、おまわりさん泣いちゃってるぜ! ダッセ〜!」
「う、うるせー!」
「ほら、食えよ」
「こ、これは、ポップコーンじゃないか!? い、いいのか!?」
「げへへ。悲しい時はな、食うのが一番なんだぜ。俺たちサテライト民はいつもそうしてきた。どんなにつらいことがあったってさ、上を向いてりゃなんとかなるもんさ」
「……あ、ありがとう」

 セキュリティはポップコーンをムシャムシャやる。そして。

「お前の気持ちも少しは分かるぜ。遊黒の親分もそうだからな」
「え?」
「やるべきことがあるから、チームには長くいれない。そう言っていた。でも、だからこそ、別れる時はスッキリ送り出してやりたいじゃねぇか。そいつとの思い出が、いつまでも輝いていられるようにさ」
「……そうか。ま、まぁ、そんなことお前に言われるまでもないのだが」

 鼻を鳴らし、セキュリティは手元のカップを掴む。それを持ち上げ。

「ほら、飲めよ」
「こ、この色、まさかコーラ! しかもキンキンに冷えてやがる! おいおい、いいのかよ!?」
「お互い様だろ?こういうのは」

 と、まぁこんな感じで隣はすごい盛り上がっていた。少し暑苦しいかもだけど、でも分かったこともある。良いデュエリストは良い仲間に恵まれる。良いライバル、良いカード。

「……」

 遊黒くんと目が合う。俺たちもクロウたちのようになれるだろうか。そう、言っている気がした。だとすれば答えはひとつ。ボクはその答えを強く思いながら、微笑みを返す。

「……ふっ!」

 遊黒くんも笑う。もはや彼に迷いはないようだ。

「あ、斬せんせー笑ってる!」
「はははヤッホー。面白くなってきたぁ!」

 本当の勝負はここからだ。遊黒くんは笑い。

「俺が黄金櫃の効果で封印するのは、『真竜機兵 ダースメタトロン』だ!」
「感じるぜ。ヤバい気配がガンガンとな。そいつがお前の最強カードってわけか!」
「そうだ。だがこいつの出番があるかどうかは次で決まる。さぁ、お前のターンだ!」
「あぁ! 行くぜ俺のターン、ドロー!」

 スピードカウンターはクロウくんは12、遊黒くんが3。スピードカウンターの数が多ければ多いほど強力なスピードスペルを使うことができるが、その利点を活かせるかどうかはこの一瞬にかかっている。クロウくんが引き当てたのは。

「俺が引いたのは『Sp−アクセル・ドロー』。このカードはスピードカウンターが12ある時のみ発動でき、カードを2枚ドローする!」
「魔法にしたか……スピードを!」

 クロウくんは2枚引き、そして。

「スピードスペル、アクセル・ドロー発動!」
「2連続だと!?」
「さらに魔法カード『ハーピィの羽根箒』! お前のミラーフォースを破壊する!」
「ぐっ!」

 あれは相手の魔法罠を全て除去するカード。これでクロウくんを長く苦しめてきた罠地獄は終わり、そして、スピードワールドのさらなる効果が発動する。

「スピードカウンターを10個取り除くことにより、場のカード1枚を破壊。俺が選ぶのは当然、ドラゴン・バスター!」
「ちぃ、ならばお前のモンスターも道連れだ! ドラゴン・バスターの効果発動、手札1枚を捨て、疾風のゲイルを除外!」

 シンクロ召喚を警戒しチューナーを潰す作戦か。しかし、クロウくんは微笑んでいる。

「残念だがハズレだぜ。トラップカード『ブラック・チャージ』! 場のBFチューナー2体を除外し、カードを2枚ドローする!」
「ち、シンクロ狙いはブラフか! だが、ドラゴン・バスターにはまだ最後の効果が残っている! 自身をリリースし、除外されたユニオンモンスター3種類を特殊召喚!」
「ち、んな効果まであるのかよ! インチキ効果もいい加減にしやがれ!」
「アサルト、バスター、クラッシュ、全て守備表示で復活! だがこれで、お前のシンクロ召喚を阻むものはなくなったな」

 遊黒くんは闘争心を燃やしながらも、クロウくんの次の一手に期待しているようだった。その視線に応えるように、新たなブラックフェザーが現れる。

「チューナーモンスター、『BF-極北のブリザード』召喚! その効果で墓地のブラストが蘇る。さらに黒い旋風の効果で『BF−鉄鎖のフェーン』を手札に。そして、ブリザードをブラストにチューニング!」
「早速来るか!」
「漆黒の力! 大いなる翼に宿りて神風を巻き起こせ! シンクロ召喚!」

 ブラックフェザーたちが舞い踊る幻想的な景色。その中現れる、漆黒の翼。

「吹きすさべ、『BF−アームズ・ウィング』!!」

 攻撃2300の新たなシンクロモンスター。レッドアイズと睨み合う。その攻撃力はレッドアイズには及ばないが、特殊能力がある。

「アームズ・ウィングは守備モンスターを攻撃するとき攻撃力が500アップする。そして攻撃力が守備力を超えてれば、その分のダメージをお前に与える!」
「うまい! 1000以上のダメージを与えれば遊黒のスピードカウンターは減らせるから、次のターンのスピードワールドのダメージを回避できる!」
「遊黒くんがABCを復活させたのがあだになったか!」
「行くぜバトル! アームズ・ウィングでアサルトに攻撃、ブラックチャージ!!」

 漆黒の猛威がはしる。しかし、悪夢は終わらない。

「クク、だが俺にはまだ奥の手が残されている! 墓地から、『仁王立ち』の効果発動!」
「ま、また墓地からトラップだと!?」
「最初のターンでアンチリバースに破壊されたカードだ。その効果によりこのターン、お前はレッドアイズにしか攻撃できない!」

 レッドアイズが咆哮し、アームズ・ウィングを退ける。クロウは舌打ちし。

「ち、攻撃は止める。カードを3枚伏せてターンエンド」
「万策尽きたな。俺のターン、スピードワールドの効果発動!」
「く、クロウー!」
「これで終わりだぁっ!」

 大爆発。煙が上がり、ボクらの視界は遮られる。でも、それでも分かる。遊黒くんもすぐに気づいただろう。いまだ鳴り響くエンジン音、焦げくさい匂い。そうだ。クロウくんのデッキには、スピードワールドの効果ダメージを無効にできるカードがあった。

「舞い戻れ、ブラックフェザー・ドラゴン!!」

 雄々しく吠える、クロウくんの魂のカード。ブラックフェザー・ドラゴンは効果ダメージを無効にして自身に黒羽カウンターを置くという効果がある。

「永続罠『闇次元の解放』を発動させてもらったぜ。こいつは除外された闇属性モンスターを特殊召喚できる。攻撃表示で呼び戻したぜ」
「最高のモンスターは最高の場面にこそやってくる、ということか。だがそいつは自身の黒羽カウンター1つにつき攻撃力が700下がる。ならば、レッドアイズで攻撃!」
「トラップカード、『BF−アンカー』!」

 アームズ・ウィングがブラックフェザー・ドラゴンに優しく触れる。それは思いを託したバトンのよう。アームズ・ウィングは消滅し、その力が受け継がれていく。

「BF−アンカーはBFをリリースすることで、その攻撃力分シンクロモンスターの攻撃力をターン終了時まで上げる。ブラックフェザー・ドラゴン、攻撃力4300だ!」
「ちぃ! ならば攻撃は止め、魔法カード『命削りの宝札』を発動! カードを3枚ドローする」

 あれは手札が3枚になるようにドローする魔法カード。ただしターン終了時に自分は手札を全て捨てなければならず、また、あのカードの発動後は相手にダメージを与えられなくなる。だからレッドアイズの攻撃の後に使ったのだ。
 ドローカードを一瞥し、遊黒は笑う。

「最高のモンスターを引き寄せられたのはお前だけではないようだ。俺はレッドアイズとアサルトで、進化の道を切り開く! レボリューション・ロード!!」
「な、なんだぁ!?」
「時は奏でて、想いはあふれる! 終わらない未来より架かる虹よ、この世界へ降り注げ!」

 雪解けの時。閉じた心は花開き、春を迎えし魂は脈動する。これこそが、終遊黒の切り札。

「ユニバース召喚! 『ナイトメア・ブラック・ドラゴン』!!」

 悪夢の龍が咆哮する。攻撃力は2500。龍亞くんはじめ、会場のみんなはひっくり返っていた。

「ちょ、ちょっと、なんなんだよこのデュエル! すごいことばっかり起こるじゃん! あんなの全然見たことないよ!」
「君たちの進化の結晶がシンクロなら、ユニバースがボクらの進化の結晶だ。なんちゃって」
「ま、まさか斬せんせーもできるの!? ウニダース召喚!」
「ふふふ、な・い・しょ♡あ、あとユニバースね。そんな高そうな名前じゃない」

 クロウくんも相当ビックリしていた。それでも不敵に笑ってるんだから、根っからの勝負人なんだなぁって思う。

「おいおい、お前のデッキはビックリ箱かよ! 俺の知らねぇ召喚まで使いやがって!」
「お互い様だよ。俺もシンクロ召喚を知ったのは最近だからな。俺はまだシンクロが使えない、だからこそ、俺のデュエルはまだまだ進化する!」
「それこそお互い様ってもんだ。ユニバースの力、じっくりと見せてもらうぜ!」
「いいだろう。ユニバース召喚は素材モンスターを魔法罠ゾーンにレガシーとして置き、それにレガシーフォースを与えることで、自身を手札から場に出すというもの」

 ちなみに、ユニバース召喚は特殊召喚ではなく通常召喚として扱われる。だけど通常召喚の権利は消費しない。クロウくんは説明をウンウンと理解し、問いを投げかける。

「レガシーフォース?」
「レガシーに与えられる効果だ。魔法の効果の発動として扱う。ナイトメアの素材は通常モンスターと効果モンスター。通常モンスターに与えられるレガシーと効果モンスターに与えられるレガシーは異なる。楽しみにしておくことだ」

 一度ユニバース召喚が行われれば、その後ユニバースモンスターを除去したり効果を無効にしたとしても、レガシーに与えられたレガシーフォースは消えない。ユニバースモンスターが場を離れればレガシーは消えるけど、ナイトメアブラックの効果でレガシー1つを残すことが可能。その真の恐ろしさに、クロウくんがどこまで対応できるか。

「……未知のモンスター。へ、上等じゃねぇか!」
「カードを2枚伏せてターン終了。さぁ、この悪夢から抜け出せるかな?」
「見せてやるぜ、ブラックフェザー・ドラゴンの真の力を! 俺のターン、『闇の誘惑』を発動。2枚ドローしてフェーンを除外。さらにエンジェル・バトンでドローし、手札1枚を墓地へ」
「ふん、慌てて手札交換とは。いよいよネタが尽きて来たか?」
「逆だぜ。今ネタを仕込んだところよ! 今墓地へ送った、『BF−精鋭のゼピュロス』の効果。黒い旋風を手札に戻して自身を特殊召喚し、俺に400ダメージ与える。攻撃表示で特殊召喚!」

 ゼピュロスの攻撃力は1600。通常ならばこの400ダメージは自滅になるが、ブラックフェザー・ドラゴンがそのダメージを無効化する。そして黒羽カウンターが増え、今、その能力が解き放たれる。

「ブラックフェザー・ドラゴンの効果発動! 黒羽カウンターを全て取り除くことで、その数×700相手モンスターの攻撃力を下げ、下がった数値分のダメージを与える!」
「カウンターは2つ。これでナイトメアの攻撃力は1100になり1400のダメージ。ブラックフェザー・ドラゴンの攻撃が通ればさらに1700ダメージ。そしてスピードワールドの800ダメージで、クロウの勝ちだ!」
「そう都合良くいかないのが悪夢だ。リバースオープン、『ダメージ・ダイエット』!」

 あれは発動ターンに自分が受けるダメージを全て半分にするというカード。遊黒くんのライフは2800になる。ダメージ・ダイエットの発動により、遊黒くんをこのターンで仕留めることは難しくなった。しかしナイトメアブラックとブラックフェザー・ドラゴンの攻撃力の差は歴然。遊黒くんは顔をしかめながらも説明を始める。

「レッドアイズに与えられたレガシーフォースは、ナイトメアの攻守を1ターンの間2倍にする。アサルトに与えられたレガシーフォースは、ナイトメアとバトルする相手モンスターの攻守を1ターン半減させる。だがレガシーフォースは1ターンに1種類までしか使えない。俺が使えるのは片方の効果だけ」
「なら答えはひとつだ! ブラックフェザー・ドラゴン、ナイトメアを攻撃!」
「アサルトのレガシーフォースにより、お前の攻守は半減!」
「だが、攻撃力が下がってるのはお互い様だぜ」
「ちぃ!」

 ブラックフェザー・ドラゴンの攻撃力も下がるが、ナイトメアの攻撃力も先ほど下がっている。ブラックフェザー・ドラゴンの攻撃力は1400。ナイトメアは1100。であれば、勝敗は明確。

「行け、ノーブル・ストリーム!」

 黒い嵐により悪夢は消し飛び、遊黒くんのライフは2650まで削られる。しかし彼の瞳の光は消えない、それどころか強くなる。彼の場には、ナイトメアが残したレガシー、レッドアイズが残っている。

「よっしゃあ、どうだ!」
「ふ、ナイトメアブラックがたった1ターンで倒されるとはな。これがブラックフェザーの力、そしてお前の力ということか。だがユニバース召喚の真価はここから始まる」
「負け惜しみ言いやがって。カードを2枚伏せ、ターンエンド!」
「俺のターン。この瞬間、黄金櫃に封印されしカードが蘇る」

 ダースメタトロンが手札に加わる。あのカードもまた最強クラスのカードだが、その分召喚条件は厳しい。

「このカードのアドバンス召喚には3体のリリースが必要となる」
「見積もりがあまかったみたいだな。お前のモンスターはバスターとクラッシュの2体。1体足りないぜ」
アドバンス召喚にはモンスターのリリースが不可欠。だが我が主より賜り俺が鍛えた『真竜』カードは、その垣根すらも超越する! このカードは、永続魔法および永続罠もリリースに使うことができる!」
「な、なんだとぉ!?」
「場に伏せられていた永続罠『真竜の黙示録』とバスターとクラッシュ。これら3本の柱に導かれ、この次元に降臨する! 出でよ『真竜機兵 ダースメタトロン』!!」

 眩い黄金の光。金色の翼、聖なる剣、重厚な鎧。攻守3000の最強の戦士が、ここに君臨する。戦士族じゃないけど。

「くそ、また意味わかんねーカード出しやがって! いくつ常識はずれのことすりゃ気が済むんだこの野郎!」
「お前が参ったと言うまでさ。黙示録の効果発動。このカードが墓地へ送られた時、モンスター1体を破壊する!」
「なに!?」
「もう一度消え去れ、ブラックフェザー・ドラゴン!」

 大きな煙が上がる。しかし誰もが感じていた。クロウ・ホーガンとは、ここで終わるデュエリストではないと。その想いに答えるように、クロウくんは微笑みながら悪夢の嵐を突破する。新たなモンスターを従えて。

「なかなか悪夢チックな光景だ。なんだそのモンスターは?」
「トラップカード『バスター・モード』を発動した。こいつはシンクロモンスターを進化させる。とくと見やがれ。これが俺のエースの進化した姿!」

 BFが持っていたような銃器を装着し、よりたくましくなった漆黒の体。紅い光が夜の闇に染み渡っていく。そう、これこそが。

「誕生、『ブラックフェザー・ドラゴン/バスター』!!」

 ブラックフェザーの進化の可能性、そのうちのひとつ。攻撃力は3300。どうやら、互いの最強モンスターがこれで並んだようだ。

「これがお前の切り札か。だがダースメタトロンは自身の召喚のためにリリースされたカードと同じ種類のカードの効果は受けない。つまり、モンスターとトラップの効果は受けない」
「惜しかったな。魔法もリリースできれてば完璧だったのによ」
「あえてそうしたのさ。レッドアイズのレガシーフォース発動。ダースメタトロン、攻撃力6000!」
「!?」

 クロウくんの眼が見開かれる。そう、これがユニバースの真の恐ろしさ。

「……なるほど、ナイトメアが消えても悪夢は消えないってわけか」
「そうだ。ナイトメアが消えて効果対象を失ったレッドアイズは、新たに召喚されたモンスターにレガシーフォースを与えることができる。そしてダースメタトロンが場から消えた時も同じことが起こる」
「つまり、お前の場には常にレガシーで強化されたモンスターが居座るってことか!」
「その通り。ユニバースとは1体の最強モンスターを呼び出す召喚ではない。レガシーを引き継ぐことで、デッキの全モンスターを最強にする召喚だ!」

 黄金の闘士が絶叫し、絶叫という表現で正しければだが、猛々しく突進していく。

「このデュエル、俺の勝ちだ! ダースメタトロン、/バスターへ攻撃! 遊黒パーンチ!!」
「トラップ発動、『立ちはだかる強敵』! お前の攻撃対象はゼピュロスになる」
「無駄だ。ダースメタトロンにトラップは通用しない」
「このカードの効果は相手モンスターにおよぶ効果じゃない。ダースメタトロンでも無視できないぜ!」
「ちっ。だがミスったな、ゼピュロスが攻撃表示だぞ!」
「わざとだぜ。/バスターは自分が効果ダメージ、またはBFの戦闘によるダメージを受ける時、それを無効にする! さらに場のBFは、ターンに1回までずつ破壊されない!」」

 ドラゴンに、黒羽カウンターが置かれる。

「なるほど。ダメージを無効にする度に黒羽カウンターが置かれるわけか。ならば当然、黒羽を取り除く効果もパワーアップしてるのだろうな」
「あぁ。カウンターを全て取り除くことで、1つにつき700ポイント、自身の攻撃力を上げる。そして変化した数値分、相手にダメージを与えて相手モンスター1体の攻撃力を下げる。次のターン、こいつをぶちかましてやるぜ」

 強力な効果だ。カウンター1つにつき2100ダメージが発生するようなもの。しかしこの場合はそうはならない。

「たしかにそいつの攻撃力は上がるが、ダースメタトロンは効果を受けないので攻撃力が下がることもない。加えて、俺の墓地のダメージ・ダイエットは墓地から除外することで、そのターン受ける効果ダメージを全て半減させる」
「ちっ。ダースメタトロンとの攻撃力の差は2700。それを埋めるため、黒羽カウンターが4つ要るか」
「たしかに4つあればダースメタトロンを倒すことは可能。だがこいつには更なる効果がある。相手に破壊された時、俺は地・水・炎・風のいずれかの融合・シンクロモンスター特殊召喚できる」
「……どうやら、ダースメタトロンごとお前を倒すしかねーようだな」
「それには黒羽があまりにも足りないがな。俺はターンエンド」

 急にやってきた計算タイム。龍亞くんは指折り数えながら眼をグルグルさせる。余談だがこの時の龍亞くんは超可愛かった。

「え、えっと、つまり?」
「クロウくんが次のターンで勝つには黒羽カウンターが6個必要ということになる。つまりあと5個」
「え、えぇー!?」
「遊黒くんにはあらゆる魔法罠を無効にする融合モンスターがある。しかもそれはレガシーフォースを受けて攻守2倍。今の手札が尽きたクロウくんでは到底耐えきれない」
「……クロウ」

 元のブラックフェザー・ドラゴン同様、効果ダメージでも黒羽カウンターは増やせる。戦闘ダメージでも増やせるから、ダースメタトロンより攻撃力が低いBFで攻撃することでも増やせる。条件は軽くはなっているけど、5個はあまりにも遠い。

「関係ねーぜ。/バスターが、お前をぶっ倒す!」
「バカな。お前は手札0。ブラックフェザーを呼ぶことすらできまい」
「たしかにな。全ては、このドローで決まる」

 さすがのクロウくんも、ドローの手が微かに震えているように見えた。このドローはあまりにも重い。
 会場も静まり返る。数秒が、永遠の如く長く感じられた。
 その時だった。

「クロウ兄ちゃーん!!」

 会場のどこかから響いた、何人もの子どもたちの声。会場は満席で騒がしい。どこからの声だったのかは把握できない。
 だけど、クロウくんの顔が、変わった。

「……こんなとこまで来やがって。お前らに頼らずにやってこうって思ってる時によ」
「……そうか。ようやく分かったよクロウ。俺の攻撃に決して屈しなかった、お前の強さ。その源が」
「まったくよぉ。これじゃあ、絶対に負けられねーじゃねぇか!」

 さっきの沈黙が嘘のように、デッキに優しく、しかし強く手がかけられる。感じる、クロウくんとデッキの魂のクロス。

「行くぜ、ドロー!」

 彼はカードを見る。そして。

「黒い旋風を再び発動。そして『BF−月影のカルート』を召喚!」

 引き当てたのは、攻撃力1400のBF。黒い旋風の効果で、攻撃力1400未満のBFを手に入れることが可能。選ぶのは。

「『BF−突風のオロシ』を加える。そしてオロシは場に他のBFがいれば特殊召喚できる! こいつはチューナーだ」
「だがシンクロすれば攻撃できる総数は減る。チューナーであることを活かせはしない!」
「まだだ! 墓地の『BF−大旆のヴァーユ』の効果発動。墓地のこのカードを、墓地のBF1体にチューニングする!レベル1のヴァーユをレベル6のアームズ・ウィングにチューニングし、この2体を除外!」
「なんだと!?」
「黒き旋風よ、天空へ駆け上がる翼となれ!」

 調和の輪に吸い込まれるブラックフェザー。光は満ち。

「来い、『BF−アーマード・ウィング』!!」

 現れる、武装をまといし新たなブラックフェザー。攻撃力は2500。ヴァーユで呼ばれたモンスターは効果が無効になるけど、/バスターの効果で破壊は防げる。これでBF4体を含む、5体のモンスターが揃った。

「行くぜ。ゼピュロス、カルート、オロシの攻撃!」
「これで黒羽は4。だが!」
「アーマード・ウィングの攻撃! ブラックハリケーン!!」

 強烈な竜巻の一撃が決まるが、黄金の戦士はビクともしない。これで黒羽は5。あと1つだけど。

「惜しかったな。もうお前には、攻撃できるBFがいない!」
「それはどうかな?」
「……まさか、最後のリバースカード……!」
「そう。これが、俺の最後の切り札だ! トラップ発動、『緊急同調』!」

 あれはバトル中のシンクロ召喚を可能にする。レベル1のオロシが、レベル3のカルートとレベル4のゼピュロスを包み込む。

「吹きすさべ嵐よ! 鋼鉄の意志と光の速さを得て、その姿を昇華せよ!」
「……くっ!」
シンクロ召喚! 『BF−孤高のシルバー・ウィンド』!!」

 刀を持ったBFの降臨。攻撃力は2800を誇る。黄金の光へと叩き込まれる、純白の嵐。

パーフェクト・ストーム!!」

 ダースメタトロンには届かない。だけど、想いは繋がった。これで黒羽は6。

「待たせたな、遊黒!」
「……クロウ……!」
「ブラックフェザー/バスターの効果発動!」

 ドラゴンの咆哮。みなぎる最強のパワー。

「バカな……攻撃力7500だとぉ!?」
「これで終わりだ!」

 迎える、最後の時。

「ブラックフェザー・ストーム!!」

 それは黒く、気高い、魂の一撃だった。

 


 決着の後、2人はスタート地点に戻る。遊黒くんはアングリ口を開け、ボケーっとした顔で。

「……負けた。この俺が」
「どうやら、悪夢を見たのはお前の方だったみたいだな」
「……いや」

 止まない歓声。止まらない拍手。

「すげーデュエルだったぞー!!」
「よくやったクロウー!!」
「おやぶーん!!

 やさしい声が街に降りて。今宵限りの、時を忘れる。

「この景色は、悪夢と呼ぶにはまぶし過ぎる」
「……だな」

 気ままに揺らめいて。想いは、焦がれる。


 と、いうわけで、めちゃくちゃ良いムードでコトは終わったのであ、あれれ〜?そういえば何か忘れてるような気がするぞ?

「ゆ、遊黒のおやぶーん!!」
「あぁ、お前たちか。応援は聞こえていたよ。負けてしまったがな」
「いえいえ! 見事な闘いでした親分!」
「そうか。さて、デュエルの前の約束を果たすことにしよう。客もたくさん集まったからな」
「あ、そういえばお前らの計画がどうとかそういうデュエルだったなこれ」
「そう。会場の皆、これを見ろぉ!!」

 遊黒くんが絶叫しスイッチを押すと、スタジアムのモニターに映像が映し出される。若い女の子たちが楽しそうにゴミ拾いをしている映像だ。全員おっぱいが大きめなのは気のせいだと思うことにしよう。

「これこそが我らナイトメア団の計画! 週末、ネオドミノの観光スポットを巡りながらのゴミ拾いツアーを行う! 外からの観光客はもちろん、故郷の素晴らしさを知りたい皆にもオススメ! スタッフ募集中ーっ!!」
「な、なんじゃそりゃあ〜!?」
「イェーガー市長より許可は取ってある。そう、この街はゴミ拾いシティとなるのだ!」
「ゴミ拾いシティ!」

 よし、帰ろう。ボクと龍亞くんが席を立った時、なんか画面が急に切り替わった。

「な、なんだ!? スタッフを増やすこの大チャンスに……」
『エーブリバディーリッスーン! ネオドミノの諸君に、スーパーエキシビジョン・デュエルをお届けするぞぉ! 新設された天空ライディングデュエルコースで闘うのは、このふたりだぁーっ!!』

 スポットライトに照らされたのは、ふたりの男。ふたりとも赤いDホイールに乗っている。そのうちのひとりは、ボクらにとって馴染みがある人物。

『私が実況させていただいた、あの天空での激戦は、皆さんの心に刻み込まれていると思います。そう、彼が帰ってきた!WRGPを制したチーム5D’sのひとりであり、この街を救った英雄! 』
「く、クロウ、あれって!」
「な、なんであいつがあんなところで!?」
『不動遊星だー!!』

 そうか、あれが不動遊星。伝説のライディングデュエリスト

『対するは! 皆さんはあの会社を知っているでしょうか。この街に突然現れ、デュエル開発分野に殴り込んできた大企業! どこから来たのか、その業績、その過去は一切不明! 謎に包まれたヴェールが、今解き放たれる! リバースコーポレーション社長、天新海ー!!』

 

 新海は遊星に話しかける。

「自己紹介がまだだったな。俺はオリジン世界という別世界から来た。俺はその世界において最強だったが、神になるには至らなかった。ここには神に近づくために来た」
「……」
「頂点に立つ者は多くの眼に晒される。ごまかしは通用しない。真の強さが求められるのだ。俺がこの場を設けたのは、俺の力をこの世界の人間に見せつけるため。君は俺の相手として最も相応しかった」
「……」

 新海は続ける。

「君が勝つ可能性もわずかだがある。30%にも満たないがな。見せてもらおう、無限界帝を倒したその力」
「おい」
「うん?」
「デュエルしろよ」

 今、最強と最強がぶつかり合う。

 

 

<後書き>

クロウがカルート引いたところでGoing my wayが読者の皆の頭の中で流れ出し……たらいいなぁと思いながら書きました。
最初は原作キャラでデュエルするのは遊星ジャック龍可だけで、クロウのデュエルは無い予定でした。こうして書いてみると、クロウのデュエルを入れてみるのも無しではなかったかなと思います。
ちなみに現在はシグナー全員がデュエルする予定になってます。
OCGはゼアルの最後の方の辺りからあまりやってなくて、最近またやりだしました。オルターガイスト安くてつえー。
なのでBFの新規は最近見ました。今回のデュエルを作った後です。シムーンのテキストは目ん玉飛び出るかと思いました。クロウのデュエルはまだある予定なので、その辺も使っていきたいなぁと思います。逆に、漫画版のカードとかABFとかは出ないかなーと思います。
余談ですがアゲインスト・ウィンドがBF竜とコンボできないのは今回知りました。嘘やん。クロウのカード同士でシナジーありそうやん。

また文字数が1万を大幅にオーバーということで。もっと短くまとめたいなと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。頑張ります。

 

<前の話はこちらから!>


第6話 終遊黒vsクロウ・ホーガン

<前書き>

この5D’sの世界編の時系列は、アニメ5D'sの最終回のデュエルとラストランの間です。なので赤き龍はまだギリいますし、チーム5D’sのメンバーたちもネオドミノにギリいます。

 

<本文>


 天の川浮かぶ背の低い丘。その男はたたずみ、彗星に想いを馳せる。しかし同時に、その想いは叶わぬものだと理解する。彼はあまりに多くの知識を身につけた。その時代、はるか太古の世界において、彼に並び立つ者はいない。その眼は寂しげだった。

「……美しいな。肉体は滅びるが、星の輝きは朽ち果てない」

 その丘は彼の墓標となる。訪れる者はもういない。
 この世界に染み込んだ悪意。争いは決して絶えることはないと、彼は理解していた。だからこそ探していたのだ。星の輝きのように消えない、人々の心を繋ぐものを。人の心をあたたかく照らすものを。しかしそれはついに見つからなかった。
 彼の力は後世へ受け継がれる。彼は己の力をいくつかに分け、後世へ託した。救世を夢見て。


 そして時は現代。ネオドミノシティー郊外。その墓標はまだあった。


「あ、斬せんせーだ! 久しぶり!」
「やっほー龍亞くん。今日も元気だね。でもその斬せんせーってのは止めてみない?ボクはほら、バイトみたいなものだから」
「いいじゃんいいじゃん! へへ、今日も俺たちの授業やってくれるの?」
「いや、今日は高等部の授業だけだね」
「え〜!? ちぇっ、アキ姉ちゃんがうらやましいなぁ」

 ボクは、つまり聖天斬はだが、このデュエルアカデミアの臨時講師?的なお仕事をしていた。なぜこの仕事をしているかと言えば、リバースコーポレーションというブラック企業に採用されてしまったからである。お試し気分で採用試験を受けてみたら、なんてこったホー、受かってしまったわけなのだ。
 ボクはオリジン世界と呼ばれる場所から来た。ここは5D’s世界。つまり別世界である。ボクは採用試験を受けた直後にこの世界にちょっと旅行でやってきてて、到着した直後にシルバーちゃん、つまりブラック企業の手先から採用のお知らせを受け、それからは命令されるがままにアカデミア運営のお手伝いに従事、というわけである。本当にあった怖い話。ちなみにそのシルバーちゃんっていう娘は超かわいい。

「ま、ボクの授業なんてそんなに珍しくもないさ。これからいくらでも受けれる」
「……ううん、受けられないんだ」
「え、どうして?」
「俺、もうすぐ海外に行くんだ。両親が海外に住んでて、一緒に暮らすために」

 この子は龍亞。ディフォーマーというカード群を愛用する決闘者だ。かつてこの地で大きな闘いがあった。その闘いとは過去からの宿命、未来からの警鐘。いずれにしても『シグナー』と呼ばれる、伝説の赤き龍に選ばれた者たちがその闘いに勝利し、この世界を救ったのだ。 話の流れから察することができるだろうが、この龍亞くんもシグナーだ。また、彼の妹である龍可ちゃんもシグナー。兄妹揃って過酷な闘いに身を投じていていたのだ。

「そっか。寂しくなるね。じゃあ龍可ちゃんも、ってあれ、今日は一緒じゃないの?」
「……あ、あぁ、龍可は、その、なんていうか」
「体調でも悪いの?」
「ま、まぁそんなとこかな」
「そうか」

 彼はしどろもどろだった。おそらく龍可ちゃんは人に言えない状態にあるのだろう。それが人智を超えた力によるものなのであれば、ボクに相談してもしょうがない。だから言わないのだろう。友達としては、ここは追求しないでおいてあげたいところだが、ボクにも目的があるからなぁ。龍可ちゃんの案件がそれに繋がる可能性はけっこう高い。

「じゃあ、ボクはこれで。龍可ちゃんによろしくね」
「う、うん。じゃあね、斬せんせー」

 というわけで放課後! ボクの『龍亞くん尾行大作戦!』は始まったのであった! デデーン!
 彼は街中を駆け回っていた。追いかけるボクの方が疲れてしまったくらいだ。たぶん何か、っていうか誰かを探していた。たぶん龍可ちゃんだろうけど。

「やっぱりダメか。あ、もうこんな時間! 行かなくっちゃ!」

 龍亞くんは叫び、スタコラと走り出した。ボクもヒーヒー言いながら追いかけると、最終的に郊外のさびれたデュエルスタジアムにたどり着いた。そこには人だかりができており、その中にはセキュリティも何人かいた。モヒカンの集団と言い争っているようだ。

「アヒャヒャヒャヒャー! おうおうおーう、おまわりさんよぉ! 俺らはまだ何にもやってねぇだろ〜!!」
「語るに落ちたな! まだということは、そのうち何かするつもりなんだろうこの野郎! この街は生まれ変わるんだ! お前らのようなチンピラは邪魔なんだぁ!!」
「なんだとてめぇー!!」

 なんだかもうメチャクチャだった。そんな中、黒いDホイールが駆けつける。ちなみにDホイールというのはデュエルに使うバイクである。

「おうおう。どうしたどうした」
「クロウ! いいところに来てくれたぜ!」

 クロウと呼ばれた男はセキュリティの男の知り合いのようだった。彼はめちゃくちゃ私服だしセキュリティではないようだが、セキュリティの男とは親しげだった。

「このモヒカン共が何したってんだ?」
「いや、まだ何もしてないんだが」
「はぁ?」
「だ、だけど俺が『これから何するつもりなんだ?』って聞いたら、こいつら答えやしねえんだ。俺はピーンと来たね。こいつらは何か良からぬことをやらかす、そんな予感だ」
「あのなぁ、お前のそういう決めつけてかかるところは直した方が」
「頼むぜクロウ! 元同僚のよしみで! なっ!?」

 元同僚ということは、あのクロウという青年もセキュリティだったということか。歳も20前後で若いし、たぶん辞めてからそんなに長くないのだろう。
 ボクが状況分析につとめているところで、モヒカンがクロウに絡み始めていた。

「おっ、てめぇが噂のクロウか! へへ、鉄砲玉のクロウともあろう者がセキュリティの犬とは。安くなったもんだ」
「あぁん?えっと、すまん、どっかで会ったか?」
「いいや。だがサテライト育ちなら知らないやつはいないぜ。チームサティスファクションといえば俺たちの伝説だからな」
「へへ、ちょっと照れるな」
「だが俺たちの親分には遠く及ばないぜ! このナイトメア団のリーダー! 新たな伝説の登場だ! そーらホイ!」
「イエェェェイッ!!」
「ヒャッハァー!!」

 モヒカンたちがブレイクダンスを始める。絶叫が響き渡る。それはまさに悪夢のような光景だった。そんな地獄の中に。
──カッコーン!──
 新たな男が登場。黒いバサバサコート、ハットを深く被っていて顔はよく見えないが、つけ髪が大量に付いている。それはひとつひとつが違う色で、まるで虹みたいだ。目がチカチカする。そんな、この世のものとは思えない変な風貌の男が出てきた。うーん、これはカオスだなぁ。
 クロウは問う。

「お前は?」
「終遊黒」

 ふーん、終遊黒くんかぁ。遊黒、ん?遊黒!?

「ゆ、遊黒くーん!?」
「あ、斬せんせーじゃん! こんにちは!」
「こ、こんにちは龍亞くん。どうしてこんなところに?」
「クロウにちょっと相談があってさ。ここで待ち合わせてたんだけど、なんか変なことになってきちゃったなー」
「そ、そうだね」
「あの遊黒って人、斬せんせーの知り合い?」
「う、うーん、まぁ、友達」

 ボクにも世間体があるから認めたくなかったが、認めざるをえない。あんなファンキーな格好の人じゃなかったと記憶しているのだが、よく見れば顔とか背丈は完全に遊黒くんだからなぁ。困惑してるボクに、龍亞くんは好奇心いっぱいの眼差しを向けてくる。

「ねぇねぇ、あの遊黒って人も強いの!?」
「う、うん、強いよ。ボクと同じくらいかな」
「えー、じゃあすごい強いじゃん! そんな人とクロウのデュエルか〜!」

 龍亞くんはエキサイトしているようだけど、あの二人が闘う理由なんて無いと思

「デュエルだ」

 なんでやねーん!
 声にならない叫びを上げるボクをよそに、遊黒くんはベラベラと喋り出す。

「そこの彼の勘は正しい。我々ナイトメア団がある計画を実行しようとしているのは事実だ」
「そーら見ろクロウ! 俺の言った通りだろ!」
「だが俺たちはまだ何もしていない。君たちも手出しはできないはず」
「ぬぬぬ!」
「そこでどうだろう。デュエルで俺が勝ったら、君たちは俺たちを見逃す。そちらが勝ったら俺たちは計画の全てを白状する。というのは?」

 セキュリティ隊員の彼はフンフンと頷き、勢いよくクロウの手を握りしめる。クロウはめっちゃ困惑していた。

「お、おい、まさかこの流れは……」
「そのまさかだクロウ! 頼む、あいつとデュエルして勝ってくれ〜!」
「俺はセキュリティを昨日で辞めた。もう隊員じゃねぇんだ」
「お前より強いやつなんて隊員にいないんだ。責任は全部俺がとる。頼む、頼むよクロウ〜!」
「な、泣くなって。それに俺はこれから人と会う約束を」

 会う約束とは龍亞くんのことだろう。だが当の龍亞くんがクロウに駆け寄り、

「クロウ!」
「る、龍亞! すまねぇ、なんか変なことに巻き」
「俺、こんなとこでクロウの全力デュエルがまた見れるなんて思わなかったぜ!」
「あ?」
「頑張れクロウ! 俺応援しちゃうからさ!」
「……お、おぉ」

 トドメを刺した。クロウは大きなため息をつき、悪役面の悪夢と向き合う。

「あー、こっちは俺が出ることになった。俺はクロウ」
「噂には聞いているよ。ライディングデュエル世界大会『WRGP』を制した、チーム5D’sの一員だと」
「そういうお前は見たことねぇ顔だな。デュエルギャングの頭になるようなやつは大体知ってるやつなんだが」
「俺はここの住民じゃない。ここには探し物にやってきた」
「探し物?」
「あぁ。貴様らシグナーをな」
「なにっ?」

 スタジアムの扉が開く。照明がバッバッと光るその会場は、もうデュエルする準備万端ですよ顔だった。

「てめぇ、何者だ?」
「お前が勝ったら教えてやるよ。さぁ、悪夢のライディングデュエルの始まりだ!」

 遊黒くんの元に虹色にビカビカ輝くDホイールがやってくる。あんなもの持ってなかったはずだから、たぶんこの世界で調達したのだろう。しかしやばいセンスだ。
 ボクたちはみんな観客席に向かう。野次馬の人たちも、クロウがデュエルすると聞いて眼の色を変えて走り出していた。あのクロウという人の人気は凄まじいな。

「よーし、頼んだぞクロウー!」
「親分ー! セキュリティの犬なんかに負けるなー!」
「なんだとぉ!?」
「あぁん!?」

 今の時点ではけっこう空き席はあるはずだが、なぜかボクらはセキュリティとモヒカンとご一緒することになってしまった。まぁ世の摂理だと思って諦めよう。ボクは隣の龍亞くんに語りかける。

「そういえば龍亞くんも5D’sの一員だったんだよね。じゃあクロウくんは友達なんだ」
「うん。うるさい時もあるけど、最高の仲間さ!」
「……仲間か」

 今、ボクは自然と遊黒くんを応援しようとしていた。なぜか。そうだ、ボクは遊黒くんが好きだ。変な意味じゃなく。だから。

「このデュエル、クロウが絶対勝つぜ!」
「龍亞くんには悪いけど、ボクは遊黒くんを応援するよ」
「友達だから?」
「仲間だからさ」

 最強の相手に挑戦する彼を、見守ることができるのだ。
 遊黒くんとクロウくんはスタート地点につく。

「フィールド魔法、『スピード・ワールド・リミテッド』、セットオン!!」
──デュエルモード・マニュアルモード・スタンバイ──

「行くぜ! 俺のブラックフェザーがてめぇをぶっ潰す!」
「バッドドリーム、トゥナイト」

 ふたりのDホイールから火花が散る。スタートランプは点滅し、やがてその時は訪れる。会場中が叫んだ。それは開戦の合図。

「ライディングデュエル・アクセラレーション!!!」

 爆音轟かせ、2つの鉄の塊は信じられないスピードでコーナーに突っ込んでいく。ライディングデュエルでは最初のコーナーを制したプレイヤーが先攻を取ることができる。デュエルの行方を左右するその瞬間には、鬼気迫るものがあった。これがライディングデュエルか。2台の加速はほぼ互角だが、わずかにクロウが先行している。

「ブラックバードと競り合うとは、なかなか悪くねぇパワーだ!」
「それはこちらの台詞だ。だが」

 コーナー内側への鋭い突っ込み。通常ならばコーナーへは外側から角度をつけて侵入するのがセオリー。アウトインアウトというやつだ。だが遊黒くんはクロウくんを抜くため、最初からインに突っ込んでいった。これでは相当スピードを落とさなければコーナーはクリアできない。

「俺のレインボーサティスファクションの真価はここからだ。はぁぁぁっ!」
「な、なに!?」

 Dホイールの後輪タイヤが華麗にスライドし、鮮やかにフィールドを駆けていく。

「慣性ドリフト!」

 良いDホイールだ。低重心と軽量化がバッチリ行われているからこそ、ハードなドライブも可能になる。レインボーなんとかがブラックバードの内側をぶち抜いた。

「うぉぉぉぉっ! さっすが遊黒の親分!」
「く、クロウ〜!」
「へー、斬せんせーの友達もかなりやるじゃん!」
「……だけど、クロウくんはまだ諦めていない」

 ブラックバードのタイヤがギャンギャンと吠え、獲物を見つけた燕がくちばしで突つくように、レインボーなんとかの更にインを攻める。

「そんなスピードで行けるわけが無い。死ぬ気か?」
「んなわけあるか! 行くぜっ!!」

 常軌を逸したスピード。その漆黒の鉄が巻き起こした風は疾風となり、観客席にまで届く。

「無理だ! 親分の勝ちだぜ!」
「いや、これは!」

 遊黒がジリジリと外に出ていく。踏ん張りきれていない。スピードが乗りすぎているのか。だが黒い疾風は。

「バカな、つきやがったァー!?」
「ラインがクロスするぞー!!」

 モヒカンとセキュリティの絶叫が響く。うるせぇと思ったが、この凄まじい光景を目の当たりにしては仕方があるまい。彼らの実況の通りラインはクロスし、この一瞬で勝負は逆転。クロウくんが第1コーナーを制したのだ。遊黒くんは自分の前に出ていくクロウくんを鬼のような悔し顔で見ていたが、コーナーを立ち上がった時は愉快そうに笑っていた。

「そうか、これが鉄砲玉のクロウか。ははは、面白い」
「お前も良い突っ込みだったぜ。だがお前の走りが、俺の導火線に火を付けた!」
「光栄だ。だがデュエルでは遅れを取らない。さぁ、来るがいい!」
「あぁ! 行くぜ俺のターン!」

 クロウくんが勢いよくカードを引き、直後、互いのスピードカウンターが1になる。そして。

「永続魔法『黒い旋風』発動!」

 その名の通りの黒い旋風が彼のフィールドを包む。あのカードがある限り、クロウくんは場にBFを召喚する度、それより攻撃力が低いBFをデッキから手札にできる。これで手札切れの心配はなくなったか。

「『BF−大旆のヴァーユ』を守備表示で召喚! デッキから『BF−蒼天のジェット』を手札に加え、さらに『黒羽の宝札』を発動。ジェットを除外して2枚ドローだ」
「手札を整えたか。だがヴァーユは守備力0。嵐の前の静けさと思えばいいのかな?」
「へ、安心しな。クロウ様のデュエルはまだ始まったばかりよ。俺は『強欲なカケラ』を発動。これでターンエンド」

 強欲なカケラ。自分のスタンバイフェイズごとにカウンターを1つ置き、2つカウンターが置かれたこのカードを墓地に送り2枚ドローする。1ターン目から後の展開のための布石を十分に敷いている。さすがだ。

「俺のターン。『ライオウ』を召喚し、ヴァーユを攻撃」

 ライオウは攻撃力1900。その雷が降り注ぎ、ヴァーユを破壊。

「カードを2枚伏せ、ターン終了」

 ここで、龍亞くんが話しかけてきた。

「ねーねー斬せんせー。あの遊黒って人はどんなデッキなの?」
「罠で相手の切り札をやっつけてから安全に攻撃するデッキさ。あの3枚の伏せカード、おそらくミラーフォースのような強力なトラップ」
「ふーん。じゃあクロウとは真逆だね。クロウは速攻が得意だからさ」
「そうなんだ。でも速攻だとトラップが邪魔だね。クロウくんにとっては相性が悪いか」
「いいや! クロウの旋風はトラップなんかぶっ飛ばしちゃうぜ!」
「……なるほど。お手並み拝見」

 龍亞くんからの熱いエールを受け取ったのか、クロウくんは勢いよくカードを引く。そして、笑った。

「俺は『BF−暁のシロッコ』を召喚!」
「いきなりレベル5を召喚だと?」
「こいつは相手の場にのみモンスターがいれば、リリース無しで召喚できる」
「なるほど。ヴァーユを倒させたのはその能力があったからか」

 シロッコの攻撃力は2000。ライオウを上回る。攻撃力が高いので、黒い旋風でサーチできる範囲も広い。

「BFの召喚により、黒い旋風の効果発動!」
「無駄だ。ライオウ特殊能力」

 旋風が吹き荒れる、と言いたいところだが、それはクロウくんの呼びかけにウンともスンとも言わない。

「なに?」
「ライオウがいる限り、デッキからカードを手札に加えることはできない。これが遊黒バリアーだ」
「だが、俺の手札にはこいつらがいるぜ! 来い『BF−疾風のゲイル』!」

 攻撃力1300の新たなブラックフェザー。あれは場に自身と違うカード名のブラックフェザーがいれば手札から特殊召喚できる能力を持つ。さらに特殊能力がある。

「こいつはターンに一度、相手モンスター1体の攻守を半分にできる。ライオウを選択だ!」
「ちっ」
「そしてこいつも、場にブラックフェザーがいれば特殊召喚できる!『BF−黒槍のブラスト』!」

 これで3体のブラックフェザーが揃った。ブラストは攻撃力1700。ライオウの攻撃力は950になったので、クロウくんの攻撃がまともに通ればライフは0にできるが。

「ご自慢のブラックフェザーがそろい踏みか。確かに召喚スピードは素晴らしいが、俺のリバースカードを攻略できていない」
「安心しな。クロウ様のデュエルはな、最初っから弾けてんだよ! 行くぜ、手札からトラップ発動!!」
「な、なんだと!?」
「手札から!?」
「トラップを発動ー!?」
「『デルタ・クロウ─アンチ・リバース』!!」

 トラップは場に伏せてから1ターン待たなければ使えないはず。だがその漆黒の嵐は速攻で場に吹き荒れていく。

「お、親分のトラップが破壊されていくー!?」
「このカードは場にブラックフェザーが3体いれば、手札から発動できる!」
「ば、バカな……親分が負ける……!」
「……面白い。こんなトラップがあったとは。だが」

 地獄の深淵より、亡者の叫びが轟く。それは溢れ出し、フィールドに満ちていく。

「これは……」
「お前が手札から罠を使うならば、俺は墓地から使うまで。『ミラーフォース・ランチャー』の効果発動」
「墓地からトラップだと!?」
「セットされたこのカードが相手に破壊された時、このカードと『聖なるバリア ─ ミラーフォース ─』を俺の場にセットする。そしてこの効果でセットされたカードは、セットしたターンに使うことができるのだ」
「……くっ!」

 漆黒の泥からカードが2枚生まれ、遊黒くんの場にセットされる。ミラーフォースは相手の攻撃宣言時、相手の攻撃表示モンスターを全滅させる最強のバリア。龍亞くんはうなる。

「しかもミラーフォース・ランチャーまで復活したから、アンチ・リバースみたいなカードをまた使ったとしても同じことになる。斬せんせーの友達、めちゃくちゃスゴいじゃん!」
「はははホッホー。えっへん」

 どうやら、君の成長スピードはボクの予想より上らしい。なるほど、これは面白くなるかもな。クロウくんもボクと同じように思っているようだ。楽しそうに笑っている。

「なかなかやるじゃねぇか。俺の速攻がこんな風にかわされるとは」
「デュエルはまだはじまったばかりだ。じっくりと、楽しもうじゃないか」
「そうさせてもらうぜ。ターンエンドだ」
「俺のターン」

 言葉に反して、遊黒くんの眼は鋭くギラついている。瞬殺されかかったことが、彼の闘争心に火をつけたのだ。クールに見えて、意外とその辺は熱い。

「装備魔法、『月鏡の盾』!」

 黄金の盾がライオウの手に掲げられる。これに龍亞くんが反応する。

「あ、装備魔法! そっか、このルールのライディングデュエルだと使えるんだもんな〜」
「龍亞くんのデッキは装備デッキ主体だもんね」
「うん! パワーツールは最強だぜ! あの月鏡の盾ってカードはどんな効果なの?」
「装備モンスターの攻守はバトルする時、バトルする相手モンスターの攻守の高い方の数字に100を足した数値になるんだよ」
「えぇっ!? じゃあバトルに絶対負けないじゃん!」
「しかもライオウは自身をリリースすれば相手の特殊召喚を無効にできる。ミラーフォースも場に生きている。クロウくんの動きは大きく封じられた」

 ボクらの話を聞いてたのか、セキュリティが顔面蒼白で絶叫し、モヒカンたちのポップコーン・ダイブ・トゥー・お口のスピードが速まる。

「そ、そんな、クロウが負ける!? う、うわぁぁぁぁ!!」」
「ギャハハハ! これはもう親分の勝ちで決まりだぜぇぇ! ポップコーンうめぇ!」

 ここで、セキュリティへ龍亞くんの喝が入る。

「オジさん、クロウの仲間なんでしょ? クロウを信じてあげなよ!」
「し、しかし、こんな状況ではもう勝ち目は……!」
「いや。クロウの眼はまだ死んでないよ」

 龍亞くんの言う通り、クロウくんの眼はまだ生きてる。まだ生きてるよ。まだ生きてるんだよ。
 遊黒くんは全身から邪悪なオーラを滲ませながら笑う。

「ククク。どうやら勝負あったようだな。お前には伏せカードも無い。ブラックフェザーはライオウ1体になすすべなく粉砕されるのだ」
「そいつはどうかな。俺の最後の手札、この1枚は必殺の切り札だぜ!」
「戯れ言を。貴様のブラックフェザー、1体残らず! 焼き鳥にしてやるぜぇぇっ!!」

 最大最強の雷がライオウに注がれ、その力が高まっていく。ブラックフェザーたちの頭上に暗雲が立ちこめる。そして、その時は訪れる。

「これで終わりだ。ライオウの攻撃!」
「くっ!」

 天が裂け、暗雲の向こうから放たれる。

「ワールドエンド・ボルテックス!!」

 世界の終焉を告げる究極の雷。スタジアムに降り注ぎ、コースを揺らす。爆発音がけたたましく響いている。フィールドで容赦なく行われる破壊の渦の中心で、クロウくんのDホイールはまだ走っていた。しかしその眼前、最大の雷が彼に迫り。

「ぐ、うぉぉぉぉっ!!」

 クロウくんの絶叫と共に煙がモクモクと立ちこめる。煙の中から遊黒くんは勢いよく飛び出すが、クロウくんの姿はない。

「……クロウが……負けた……?」

 セキュリティの彼がそう呟く。しかし龍亞くんの顔を見れば、はははヤッホー、その眼は天を見据えていた。

「上だ!」
「なに!?」

 ボクたちの目線は下の方にばかり向いていた。忘れていたのだ。翼とは、天を舞うためにあるものだということを。

「ハハハハハ! クロウ様はここだぜー!」
「ジャンプで雷を回避していたか。だが、俺の攻撃を防げていない!」
「残念だが、俺のトラップが発動してるぜ」
「バカな。貴様の場にリバースカードは無いはず!」
「あぁ。だがこいつもまた、場にブラックフェザーが3体いれば手札から発動できる!」
「なに!?」
「『ブラック・ソニック』だ!!」

 華麗な着陸。その瞬間、疾風が吹き荒れる。それは雷を吹き飛ばし、暗雲を消し去り、悪夢を払う黒い疾風。

「な、なにが起こっている!?」
「ブラック・ソニックはブラックフェザーが攻撃された時、相手の攻撃表示モンスターを全て除外する!」
「なんだと!?」

 疾風が、遊黒くんへ吹きすさぶ。彼も良いテクニックを身につけてはいるがクロウくんには及ばない。踏ん張りきれず。

「ぐ、うぉぉぉぉ!!」

 スピンし、壁に激突する。

「お、親分……おやぶーん!」
「やったぁ! クロウの勝ちだ!」
「いや、まだだ!」

 龍亞くんの言葉の通り。高笑いが響き、虹色の閃光がクロウくんを追い走り出す。かなりのダメージがあったはずなのに、その勢いは全く衰えていない。その姿、まさに悪夢と呼ぶのに相応しい。

「月鏡の効果発動。500ライフを払い、このカードを山札の下へ送る」
「へ、なかなかのライディングテクじゃねぇか。誰から教わったんだ?」
「少し、お前を侮っていたようだ。いいだろう。ここからは悪夢フルコースだ」
「あぁん?」
「『ユニオン格納庫』発動」

 あれはフィールド魔法カード。新ルールでは各プレイヤーは1枚までずつ、自身のスピードワールドに重ねてフィールド魔法を発動することが可能。その場合そのフィールド魔法の効果とスピードワールドの効果は両方発揮される。
 それは名の通りの格納庫。遊黒くんの後ろに出現し、怪しく振動する。クロウくんも感じているはずだ、禍々しき悪夢の気配を。

「格納庫の効果で山札から『A−アサルト・コア』を手札に加え、そのまま召喚。さらに格納庫の効果で山札より『B−バスター・ドレイク』をアサルトに装備。これでターン終了」
「ユニオンモンスター。そして場にはAとB、まさか!?」
「勘が良いな。そう、Cが来た瞬間こいつらは合体する。その時こそ、貴様の命運が真に尽きる時だ」
「……面白ぇじゃねぇか! 俺のターン!」

 格納庫の扉の隙間。そこから霧が漏れ出し、新たなモンスターの眼光がクロウくんに突き刺さる。恐ろしい何者かの誕生、その前振りかのように、格納庫はガタガタと揺れる。しかしクロウくんの顔に恐怖は無い。闇を振り払うように、カードをきる。互いのスピードカウンターはこれで5。

「強欲なカケラを墓地に送り2枚ドロー。さらに『Sp−エンジェル・バトン』で、2枚ドローして手札1枚を墓地に送る」

 これで準備は整ったと、クロウくんの顔は言っていた。会場中に緊張がはしる。デュエルを知っている者ならば感じるだろう、大いなる力の高鳴りを。

「俺はレベル3のゲイルをレベル5のシロッコにチューニング!」
「来るか……!」
「黒き疾風よ! 秘めたる想いをその翼に現出せよ!」

 そして、満を辞し。

シンクロ召喚! 舞い上がれ、『ブラックフェザー・ドラゴン』!!」

 現れるシグナーのドラゴン。思わず魅了される観客。当の遊黒くんとクロウは、どこまでも不敵に笑っていた。

「ブラックフェザーの絆の力、見せてやるぜ遊黒!」
「夜が来る。お前に」

 ここでボクは重大なことに気づいた。遊黒とクロウ、このふたり、なんと! ど、どっちも名前にクロが付いてるー! 聖天斬は、そんなことを思ったのであったー。

 

 

<後書き>

お読みいただきありがとうございました。
原作キャラを扱うということで結構悩みました、特に龍亞の会話は想像の何倍も難しかったです。
本作の5D’s編ではデュエル構成の都合もあってオリジナルのスピードワールドを使います。効果は以下の通りです。

スピードワールド・リミテッド』
<フィールド魔法>
①このカードはあらゆる効果を受けず場から離れない。
②お互いのプレイヤーはお互いのスタンバイフェイズに時に1度、自分用スピードカウンターをこのカードの上に1つ置く(最大12個まで)。
③プレイヤーが1000以上のダメージを受けた時、そのプレイヤーは受けたダメージ1000につき1つ、自分の『スピードワールド・リミテッド』に乗っているスピードカウンターを1つ取り除く。
④先頭のプレイヤーから見て周回遅れになる度、このカードからスピードカウンターを1つ取り除く。取り除けない場合、自分はデュエルに敗北する。
⑤自分用スピードカウンターを取り除くことで、以下の効果を発動する。この効果はメインフェイズにのみ発動できる。⑤の効果はターンに1度しか発動できない。
4個:相手プレイヤーに800ポイントのダメージを与える。
7個:カードを1枚ドローする。
10個:フィールド上のカード1枚を破壊する。

という感じです。バーン効果にスピードスペルが必要なくなった代わりにターン制限がついて火力が固定されました。また、スピードスペル以外の魔法も普通に使えます。スピードカウンターはアニメだと先攻1ターン目は増えないんですが、本作では増えます。デュエル構成の都合ry。

これまでと違って本家のキャラを扱うということで、想像よりも書くのが大変でした。遊戯王小説書いてる皆さんの凄さを改めて実感しました。
亀更新っぽいですが、今後もよろしくお願いします。

 

<次回はこちら!>

 <前回まではこちら!> 

 

 

 

 

第5話 NEO UNIVERSE

「聖天斬くんへ。君がここに来るであろうことは分かっていたよ。なぜなら俺は社長だから。本来なら直接対面といきたかったのだが、少し緊急の用が入ってしまってね。手紙で失礼するよ。詫びといってはなんだが、君が欲しがってるであろう資料は全て机の上に置いておいた。こちらの都合で申し訳ないがコピー等は取れないので、読んだ後は元に戻しておいてくれたまえ。末筆ながら、君の健康と活躍を祈ります。天新海より」

 今読み上げたのが、天新海の机の上に乗っかっていた手紙である。ボクは、つまり聖天斬は、試験を抜け出して天新海の部屋にいた。
 ボクが採用試験を受けたのは見ての通り、この会社に侵入するためだ。新海くんの目的を探るため、そして他の世界の情報を得るために。情報力に関してはリバースコーポレーションはそりゃもうスゴいからね。
 ボクの計画が見破られてたのは少し面白くないが、ここはご好意に甘えることとしよう。資料は5つの束に別れていた。世界ごとに別れているのだろう。

「さて、GX世界は、お、あったあった」

 GX世界、5D's世界、ゼアル世界、アークファイブ世界、ヴレインズ世界。これらの世界が、ボクらが今いるこのオリジン世界からアクセスできる世界だ。ま、行ける世界がこれから増えてく可能性はもちろんあるけどね。世界の名称は天臨海という男がつけた。ろくでもないカス野郎だけどネーミングセンスは良い。

「……超融合神」

 思わず、口からその名が漏れる。これは良い子は真似しちゃいけない行為だ。どんな穏やか縁側にいたとしても断じてダメなアクションである。知識に勝る武器は無い。だがこの世には決して触れてはならない、知らない方がハッピーな存在というのはある。
 ま、今はちょっと興奮してしまっただけさ。ボクの知る限り最大の存在の資料を目の当たりにしてね。でも今のボクの鼓動はナット地震時の大地のように揺るがない。鋼鉄のハートで紙をパラパラやる。

「忍法、速読みの術! うぉー、はかどる、実にはかどるぞー」
「なにやってんですか斬さん」
「あ、シルバーちゃん。ちょっと待つでござるね」

 麗しのシルバーちゃんのジト目が突き刺さる中、資料を読み終え、トントンとやってから元に戻す。これぞ忍法、立つ鳥後を濁さず……っ!

「なんでドヤ顔なんですか。ほら戻りますよ。試験の続きです」
「え?まだ試験するの?」
「はい。あなたの目的がなんにせよ、一度始めた試験は最後まで、です」
「ほげー」

 ボクはモニターをオフにし立ち上がる。モニターには今行われている、遊黒、遊旗、副社長のデュエルの様子が映し出されていた。音が出ないから会話の内容は分からないが、状況は大体分かる。副社長の足下にある亡骸は、新海くんの特徴とかなり合致していた。

「あ、ところで斬さん、新海くん見ませんでした?新海くんがいないと次の試験始められなくって」
「知らないけど、新海くんって呼んでるの?」
「あ」

 シルバーちゃんはしまった顔をしていた。あ、思わず出てしまった系のやつだったか。彼女は頬をうっすら染めながら。

「あ、あの、これは他言無用で! 特に新海くんには! お願いします!」
「オッケー。じゃあ行こうか」

 不自然な必死さだった。そもそもなぜ新海くんに隠す必要がある。答えはただひとつ。彼女は誰にも言えない秘密があり、それは特に新海くんにはバレてはいけない秘密ってことだ。
 ボクが話をさっさと切り上げたのが意外だったのか、シルバーちゃんは少し困惑していた。

「どうかした?」
「い、いえ。ただ、秘密を守ることの見返りを求められると思ってたので」
「ボクはそんなに細かくないよ。ま、あとで何か返してくれるなら嬉しいけどね」

 こちらの目的に関係あるか分からない秘密だ。そんなものを探るために他人の心を踏み荒らす趣味は無い。
 趣味はないけれど、でも、うん、おせっかいを少しだけ。

「王者というのは、大体2種類に別れる」
「?」
「周りの人間と共に歩む者と、ひとりで勝手に歩いてゆく者。彼はきっと前者だ。秘密なんて荷物は、最後は彼の背に重くのしかかる。捨てるなら早い方が良い」
「彼に秘密を明かすことはありません。それに新海く、彼は後者です。ひとりで大きな未来に歩ける人です。私の秘密なんて大きな問題じゃありません」
「なら良いけど。人と一緒に歩いて行くというのは大変なことだ。小さな歩幅のズレが大きな不和となり、やがて道は別れる」
「……」
「私の人生はそういった別れの繰り返しだった。ははははは。ま、相談があったらいつでも言うでござる」

 説教臭くなってしまった。慣れない話をするものじゃあないね。案の定シルバーちゃんに突っ込まれる。

「……なんか、感じ違いますね。それに、私?」
「おっと。そうそう、ボク実は自分のこと私って言う派なんだよね。でもこれは誰にも言っちゃダメだよ。ふたりだけの、ヒ・ミ・ツ」
「な、なんかエッチですね!」
「うん! これで互いに秘密ひとつずつ。貸し借り無しってわけだ。スッキリしたね」

 トテトテとついてくるシルバーちゃんにウインクし、ボクは足を速める。

「斬さん、試験会場と方向違いますよ?」
「どーせ新海くんがいなきゃ試験できないんだ。一緒に探そうよ」
「それもそうですね。よし、新海様ーっ! どーこでーすかぁー!!」
「どこにいるんだホー!」

 遊黒くんたちのデュエル、おそらくあれがトリガー。そこから始まるだろう。全ての次元の、運命をかけた闘いが。
 

 


「私は新世界の王だ! そして、私は神だぁっ!!」
「うるせぇ!」
「王と神どっちかにしろ!」
「ヒヒヒ、そんなことを言っていいのかぁ!? このカードが、目に入らぬかぁぁ!!」
「あ、あれは!?」

 絶叫する副社長、それを見ている遊旗と俺。この3人のデュエルは続いていた。遊旗はともかく、副社長のやつとご一緒するのは悪夢そのものだった。そんな悪夢に拍車をかけるように、副社長のやつはエクストラデッキからカードを1枚取り出す。

「あ、あれは!?」
「知っているのか遊旗?そしてなぜ2回言った?」
「リバースコーポレーションの深淵、前人未到の領域に、デュエルモンスターズ史上最強のモンスターが埋められているという言い伝えがあるが、まさか!?」
「そのまさかさ。もっとも、君たち相手なら使うまでもないがね。これを見せたのは実力差を示すため。大人しくサレンダーすれば、命だけは助けてやるぞ」

 俺と遊旗は目を合わせる。どうやらやつの答えも同じようだ。当然だがな。ふたり揃って啖呵をきる。

「は、それはこっちの台詞だぜ。てめぇの醜い脂肪がぶっ飛ぶほどのデュエルを見せてやる!」
「俺は貴様に与える罰ゲームを考えている。そしてその時は近い。楽しみにしてな」
「ガキどもぉぉ。私の覇道の礎となれぇっ!!」

 ここでデュエルの状況を確認しておこう。対戦形式はバトルロイヤル。遊黒&遊旗ペアvs副社長という形だ。
 今は遊旗のバトルフェイズ。遊旗はライフ4000。手札は1枚。場にはサイレント・ソードマンLV5と魔法カード『タイムカプセル』。次の遊旗のターンのスタンバイズ、タイムカプセルは破壊され、その効果によって除外されたカードが遊旗の手札に加わる。
 遊黒、つまり俺はライフ4000。手札は4枚。場には伏せカード1枚のみ。
 副社長は手札6枚。場にカードは無し。ライフは5400。
 と、こんなところかな。もっとも、これからまた変化があるようだが。遊旗のサイレント・ソードマンが光を放つ。

「行くぜ、サイレント・ソードマンLV5の効果発動! 直接攻撃に成功したターンの終わりにレベルアップする!」
「ほーう」
「LV5をリリース! 現れろ、『サイレント・ソードマンLV7』!!」

 現れる、攻撃力2800の騎士。沈黙に佇むその姿。研磨された力を感じさせる。強力なモンスターであることは誰の目にも明白。
 しかし副社長は笑っていた。

「カードを1枚伏せて、ターンエンド! へへ、これで俺たちが圧倒的優位に立った!」
「えぇ、本当ですかぁ!?」
「あぁ。LV7になったサイレントはあらゆる魔法を無効化する。手出しはできないぜ!」
「そうですかぁ。では私のターン、『ボマー・ドラゴン』を召喚」

 副社長の場に、攻撃力1000の、その名の通り爆弾を持った竜が現れる。攻撃力は低いが、何やら不穏な気配を感じる。遊旗はそれをまだ感じてないのか、余裕の様子だった。

「へ、その程度の攻撃力じゃサイレントには勝て」
「ふふ、ボマー・ドラゴンで攻撃」
「なに?」

 圧倒的な攻撃力の差があるにも関わらずの攻撃。当然、騎士の剣が竜を切り裂き粉砕する。

「バカが! 敵じゃねーぜ!」
「バカはお前だよ。ボマー・ドラゴン効果発動!」

 しかし、竜が持っていた爆弾は処理しきれなかったようだ。竜は騎士にしがみつき、やがて。

「ボマーアベンジ!!」

 爆散。騎士は砕け散り消えた。

「な、何が起こった!?」
「バマー・ドラゴンは自分を倒したモンスターを道連れに破壊する。クク、ザコにはザコの使い道があるということだよ」
「だ、だが、戦闘ダメージは受けてもらうぜ!」
「遠慮するよ。ボマー・ドラゴンの戦闘で発生するダメージは0になるのでね」
「くっ!」

 結果、副社長は労せずサイレントの除去に成功した。攻撃力で勝てず魔法が使えない、そんな状況でも抜け道はある。見事と言っておくか。

「邪魔者が消えたので魔法カードを使うとしよう。『トレード・イン』で手札の『ラビードラゴン』を墓地に送り2枚ドロー。さらに『愚かな埋葬』だ。山札から『アークブレイブドラゴン』を墓地へ送る。カードを1枚伏せてターンエンド。さぁ遊黒、君のターンだ」
「くっそ〜、俺のサイレントがあんな簡単にやられるとは」
「でも無駄じゃないさ。結果として今、やつに壁モンスターはいない」
「あぁ。頼んだぜ遊黒!」
「俺のターン」

 このチャンスを活かせるかどうかは俺次第。やつが今伏せたカードは今のターンでドローしたカードだろう。でなければ前のターンで伏せてたはずだからな。推理材料は皆無に等しい。となれば、行くしかないが。

「『終末の騎士』を召喚。その効果で山札から『真紅眼の黒竜』を墓地へ。さらに魔法カード『死者蘇生』」
「この流れは……」
「ほーう」
「蘇れレッドアイズ! そして、レボリューションロード!」

 俺の場の2体が魔法罠ゾーンに置かれ、そこから伸びる進化の道の彼方から、漆黒の海がなだれ込む。地から沸き上がる亡者たちは交わり、龍の形をとり。

「ユニバース召喚、『ナイトメア・ブラック・ドラゴン』!」

 俺の切り札の姿となる。

「来た、遊黒の切り札! これで一気に……」

 しかし、様子がおかしかった。それは龍の形から崩れ、元の幻へと戻り、そして消滅する。ハッと副社長を見やれば、やつは笑いをこらえて小刻みに震えていた。

「……プッ! ククク、アハハハハハァ! アハァン!」
「貴様……!」
「イヒー! 無様だ、実に無様だね終遊黒!ネタばらししてやろうかぁ? 私はトラップ、『混沌の落とし穴』を発動したのさぁ!」

 俺は舌打ちする。あれは2000ライフと引き換えに、光属性か闇属性のモンスターの召喚を無効にし除外する、というカード。決まれば強力なカードだが、その発動条件は厳しい。光か闇のモンスターを使う相手にしか通用しないからな。ということは、おそらく。

「そいつのことは知っていたからね。対策のカードをデッキに入れていたんだよ。未知のカードだか知らんが、召喚する前はただのカード! 出る前に潰せば恐れるに足らず! ウヒャァッ!!」
「ち、やるな。俺はカードを1枚伏せ、ターン終了」

 結果論だが、レッドアイズと終末の騎士で攻撃してからナイトメアを出せば、やつは混沌の落とし穴の発動条件であるライフコストを払えなくなり、ナイトメアの召喚が通っていた。ナイトメアで攻撃する方がダメージがデカいのは事実だから、俺のプレイが完全にダメだったとは思わないが、勘が冴えなかった。いずれにしても、俺もまだまだということか。
 これで振り出し、いや、状況はさらに悪くなるだろう。やつが前のターンで墓地に送ったアークブレイブ、あのカードには恐ろしい能力が秘められている。でなければわざわざ山札の中から選んで墓地に送るはずがない。

「私のターン。お、良いカードを引いたな。おいお前ら、ジャンケンしろ」
「あん?」
「お前らのどっちを先に葬るか迷っていてな。決めさせてやる」
「くだらねぇ。俺たちはどっちも負けねぇ!」
「人の好意は素直に受け取っておいた方が良いぞ。お前らのどちらかは、このターンで確実に死ぬのだから!」
「なんだと!?」

 やつの墓地のアークブレイブが輝きを放つ。ち、やはり。

「このスタンバイフェイズに墓地のアークブレイブの効果が発動する。が、それにチェーンして速攻魔法、『ツインツイスター』を発動!!」
「マズい、あのカードは!」
「手札1枚を墓地に送ることで、魔法罠2枚を破壊する。さて、どれを破壊するか」

 魔法罠ゾーンにあるカードは、遊旗にはタイムカプセルと伏せカードが1枚。俺には伏せカードが2枚。この中から2枚破壊できるが。

「狙いは当然! 終遊黒、お前の場の2枚だ!」
「ちっ!」

 俺のトラップが蹴散らされていく。あれが今ドローしたカードというわけか。なるほど、たしかに良いカードだ。これで俺たちを守るのは遊旗の伏せカード1枚のみ。
 やつは得意げにまくしたてる。

「遊黒、貴様は最初から攻撃の意思が薄かった。となれば貴様らタッグの戦術は明白。遊旗が攻め、遊黒が守る! だがこれでその戦術は壊滅だ!」
「よく喋る野郎だ」
「これで終わりだ。アークブレイブの効果! このカードが墓地に送られた次の自分のスタンバイフェイズ、墓地のレベル7か8のドラゴンを復活させる!」
「ひ、ひどい」
「あー無情。ラビードラゴン、復活! さらに魔法カード『デビルズ・サンクチュアリ』でトークンを出しそれをリリース! 『マテリアル・ドラゴン』をアドバンス召喚!」

 俺のエアフォースで消えたドラゴンたちが、巡り巡って復活する。ラビードラゴンの攻撃力は2950。マテリアルは2400。この2体の集中攻撃を受ければ、たしかに俺か遊旗のどちらかのライフは尽きる。やつがさっき言ってたのはこのことだったのだ

「そ、そんな、あんなに苦労して全滅させたのに……」
「だから言っただろう、順番を決めておけと。だがもう時間切れだ。さて、どっちから消してやるか……」

 やつは俺のトラップにかかったことを少なからず根に持っている。とはいえこの状況なら答えは決まっている。

「お前だ。マテリアルで、遊旗に攻撃!」
「やはり俺か……!」

 当然だ。今の俺は場にカードもなく、切り札もさっき失ったばかり。やつから見て、倒す優先度は低い。対して遊旗はカードが残ってるしタイムカプセルもある。今遊旗を仕留めればタイムカプセルの効果も関係ないわけだから、ここは遊旗で決まりだろう。キレてるように見えて冷静だ。
 マテリアルの攻撃が遊旗に直撃する。

「く、ぐわぁぁっ!!」

 これで残りライフ1600。そして、ラビードラゴンがそれに続く。

「ゲームオーバーだ、小僧!!」
「遊旗っ!」

 思わず叫ぶ。ここまでか。

「……へっ!」

 だが、遊旗は笑っていた。驚いた。やつの目の炎は、この状況にあっても全く揺らがない。
 副社長はせせら笑う。

「虚勢もいい加減にしないと可愛くないぞ。貴様はこれで終わりなんだよ! 敗者に相応しい面をしやがれ!!」
「断る。俺は負けてねぇ」
「あ〜ん?」
「見せてやる。リバースカードオープン!」

 秘められた切り札、それが開かれる。そのカードとは。

「貴様の攻撃モンスターを除去する罠! 『次元幽閉』!!」
「バカが! モンスター破壊効果ならば、マテリアルで無効だ!」

 しかし副社長の勢いに反して、マテリアルはうんともすんとも言わない。なぜか。その答えはただひとつ。

次元幽閉は破壊ではない。除外だ!」
「え、えぇー!?」

 時空の渦に呑まれ、ラビードラゴンは消滅する。これでもう攻撃できるモンスターはいない。副社長はターンを終えざるをえない。

「おのれ〜!」
「これで、勝機は俺たちの手に」
「はぁ?眠たいのか?こちらの場には攻撃力2400のマテリアルがいる。貴様らを仕留めるには十分すぎるモンスターだ!」
「お前はさっき言った。遊旗が攻め俺が守る、それが俺たちの戦術だと。だがそれが、除去カードを俺のトラップに使わせるための罠だとしたら?」
「ま、まさか貴様の狙いは……!?」

 やつは遊旗の場を睨む。そう、タイムカプセルは次のターンで開かれる。

「だ、だが、タイムカプセルで加えるカードを選んだのは第1ターン。この状況にフィットしたカードなど……」
「ダブルアタックは手札のモンスターをコストに発動する。そしてこれは最初の手札にあった。つまり俺は、上級モンスターを墓地に仕込む準備が既にできていた」
「それはサイレントが次の自分のターンまで生き残ってなければ成立しない話だ!」
「俺は信じていただけさ。遊黒をな」
「し、信頼……くだらん!」
「くだらねぇかどうか、その身で確かめろ! 俺が選んだカードは!」

 副社長は歯ぎしりする。信頼、それはおそらく、やつが求めながらも得ることができなかったものなのだろう。だからこそまぶしく、忌々しい。

「魔法カード、『死者蘇生』!!」

 憎しみの闇を突き破り、地の底より。

「伝説を超える新たな伝説。黄金の共に生まれ立つ、俺の切り札! その名はっ!」
「これは、まさか!?」
「『ゴールデン・レジェンド・ドラゴン』っ!!」

 天空めがけて、黄金の龍が駆け上がる。その体から剣が飛び出し、それを掴み、ビシッとポージングを決める。俺はそれに少なからずイラっとしたが、口には出さなかった。終遊黒は大人だった。
 副社長は俺とは違って取り乱していた。ゴールデンレジェンドの攻撃力は4000。マテリアルを遥かに超える。が、それだけではないようだ。

「ご、ごご、ゴールデンレジェンド!? き、貴様、遊旗と言ったな……まさか、性は金色!?」
「だからどうした! 行くぜ、ゴールデンレジェンドの攻撃!」
「待て! そうか、お前が金色遊旗か! ははは、私のものになるはずだったカードがついに」
「ゴールデンディスティニージャッジメント!!」

 黄金の閃光が、マテリアルを破壊し、副社長を吹き飛ばす。

「ぐわぁぁぁっ!!」

 やつは壁に叩き付けられる。大きな音を立て倒れ込み、床にキスする。残りライフは1800。そんな状態になりながらも爆笑し続ける様は、もはや狂気だった。

「キキィィィィィ!」
「うわ、気持ち悪っ!」
「そのカードは私のものになるつもりだったんだ!だが社長が、天臨海が! 私を認めなかった! 私の王としての器を恐れたんだぁ!」
「あー?意味わかんね。このカードは道端でジイさんから貰ったんだけど」
「貰った!? ふざけんな! 私はこれまでたくさん苦労して、それでもダメだったんだぞ! 許さない、許さなぁぁい!!」

 やつは懐から注射器を取り出し、それを自分の腕に突き刺す。注射器に入った液体色のヤバそうさからして、健康のための注射という線は無さそうだ。

「な、なんだぁ!?」
「しゃ、シャドウの力を私の中に取り込んだ……これで、う、うぐぅ!」
「なに?貴様、そんなことをしたらただではすまんぞ! やめろ!」
「俺は許さん、終遊黒、金色遊旗、そして天臨海! この腐った世界を塗りつぶす! うがぁぁぁっっ!!」

 筋肉が膨れ上がり、血管がブチぎれそうな、そんな様子になってしまった。元は180前後くらいだった身長は2mをゆうに超すほど伸び、その背から紫の翼が生え、肌も緑みがかかる。もはや元の面影はかなりうすくなってしまった。

「……ヒヒヒ、イヤッホォォォ! どうだ!? この雄々しき姿!」
「な、なんだよあれ……バケモンじゃねぇか……」
「貧しい頭だ。この素晴らしさを理解できないとは。私は貴様ら愚民とは違う! 私こそが超越者! 私こそが、新世界の王だぁ!!」
「愚かな。シャドウと人間は構造が全く違う。長く保つはずがない、死ぬぞ!」
「嫉妬かぁ?ふ、この私に限ってそんなことはない! 貴様たちに裁きを下してやる。王に歯向かった者は死あるのみ!!」

 やつはデッキに手をかけ。

「ドロォォォッッ!!」

 嵐を巻き起こす。やつはドローカードを一瞥し、それを乱暴に叩き付ける。

「『強欲で貪欲な壺』! 山札の上10枚を、裏側で除外し!」

 やつは荒々しい手つきで10枚を決闘盤から抜き取り、そして、あろうことか、それらを地面に叩き付けた。そして踏みつける。

「お、おい! 何やってんだ自分のカードに!」
「強すぎる力を取り込んだからだ。もはや体の制御がきかなくなっている。このままでは……」
「そして、カードを2枚ドローする! さらに魔法カード『成金ゴブリン』で、金色遊旗に1000ライフ与え1枚ドロー」
「ち、やたらドローしやがる。一体何が来る?」
「ではお待ちかね、ショーの主役の登場だ。世にも恐ろしい殺戮ショーのなぁ! 魔法カードぉ、『龍の鏡』ぁっ!!」

 床が割れ、ドラゴンたちが舞い上がる。それは墓地に眠るドラゴンたち。その魂はひとつとなり。

「デュエルの歴史の頂点に座する、絶対にして最強の竜! この、副社長と共に並び立つ!」

 地が揺れる。なぜか、それは超巨大な龍が現れたからだ。それは確かに質量を持っていた。歩みを進める。

「祝え……新たなる王の誕生を!」

 両手を広げ、龍の召喚を祝福する副社長の元へ、それは来てしまった。最強のパワー、最悪の欲望。重なってはならぬ力が重なる時、この地は地獄に変わる。

「カーモンベイベェ……『|F・G・D《ファイブ・ゴッド・ドラゴン》』!!」

 悪夢の如き龍が、雄叫びを上げた。衝撃波のように、ビリビリと来るものがある。遊旗は思わず叫んでいた。

「な、なんだこの迫力! ソリッドビジョンだろ?立体映像じゃないのか!?」
「質量を持つソリッドビジョン技術はいくつかの次元にある。そしてシャドウはあらゆる次元の力を持つ。やつのモンスターがその力を得たか……!」
「ほーう、これは嬉しい誤算だ。ヒヒヒ、気にいらねぇやつら全員、このドラゴンでぶっ殺す!」
「ふざけんな! カードをそんな風に使うやつは、俺がぶっ潰す!」
「無理だ。なぜならば、ファイブゴッドの攻撃力は5000っ!!」
「な……っ!?」

 遊旗は絶句する。無理もない、元々の攻撃力でゴールデンレジェンドを超えるモンスターなどこれまで出会ってこなかっただろう。その攻撃力が絶対の自信、やつのデュエル観を構成する重要なピースのひとつだったはずだ。その自信が崩れた時こそが、決闘者の真価が試される時。

「……大丈夫だ遊黒」
「遊旗?」
「ゴールデンレジェンドがやられても、俺のライフは残る。まだまだここからだ!」
「……あぁ」

 そして遊旗はその真価を示した。その笑みは力強い。だが、それを嘲る笑みもあった。

「ヒヒヒ! 大丈夫、か。私も舐められたものだな。切り札とは最後の最後に出すもの。つまり今ここが貴様の最後なんだぁ!」
「っ!?」
「魔法カード、『巨大化』ぁ!!」

 ファイブゴッドは叫ぶ。その肉体は膨れ上がり、ただでさえ尋常ではなかったエナジーがさらに増していく。装備魔法カード巨大化は自分のライフが相手より少ない時、装備モンスターの攻撃力を2倍にする。つまり。

「バカな……攻撃力10000っ!?」
「儚い希望だったな。てめぇの貧しい人生じゃ二度と味わえないパワーだ。とくと楽しめぇ!」
「こ、ここまでか……!」
「私からゴールデンレジェンドを奪いやがった、てめぇから消す! 死ねぇっ!!」

 攻撃力10000の息吹が、龍の元で渦巻く。間もなく、その攻撃は放たれる。遊旗にも俺にも伏せカードはない。副社長の勝利は確定的。

「ははははは! 私は神だぁぁぁぁっ!!」

 勝利の喜び。決闘者にとっての至高の瞬間。あぁ、悲しいなぁ。こんな瞬間を邪魔するなんて。

「……ふっ」

 悪夢、冥利に尽きる。

「ゆ、遊黒?」
「な、なんだ?この状況で、何を笑っている!?」
「夢とは欲。夢を叶えるというのは、夢という器に欲を注ぐことだ。欲が強い人間は多くの夢を持つと良い。現実には限界がある。器が満ちた時、次の器に向かわなければ、それは悪夢に変わる」
「はぁ?意味わかんね、んん!?」
「お前は欲の数が少なすぎたようだ。もっと多くのものを見た方が良い。そして、多くの夢を持つが良い」
「ふぁ、ファイブゴッドの攻撃が止まる、なぜだ!?」
「今、お前の罰ゲームが決まった」

 世界から音が消え失せる。

「生まれ変わる季節を迎える。混濁に微睡む花は揺れ、星携えし空はひとつとなり、この世界に朝が届く」

 漆黒の龍が出現する。それは細く、弱々しく、悲しげな声を上げていた。

「ネオユニバース召喚」

 この手の天秤に積み上げられし罪と罰。それらは白い鎖に変わり、龍を包む。縛るのではない、優しき抱擁。やがて、龍は純白の光を放ち。

「見よ。これぞ我が魂、真の姿」

 悪夢の殻より、純白の龍が解き放たれる。生誕の時。天を貫く産声。天使の守護龍、神より賜わりしその名。

「『ナイトメア・ブラック・ネオユニヴァース』」

 綺麗な花のように笑って。星のように輝いて。この世界を羽ばたく。怖がらずに。

「一体何が起こっている……?」
「な、何だ、このモンスターは!?」
「ネオユニバースモンスター。ネオユニバース召喚によってのみ、相手ターン中にエクストラデッキから特殊召喚できる。その召喚条件は、通常モンスター1体以上と効果モンスター1体以上。加えて、ナイトメアブラックが墓地か除外ゾーンに存在しなければならない」
「召喚条件は元のナイトメアブラックに似てるけど」
「違いは、レガシーをフィールドだけでなく墓地除外ゾーンからも選べること。その代わり、相手モンスター1体の元々の攻撃力がレガシーの攻撃力合計を超えている必要がある」

 墓地から真紅眼の黒竜と終末の騎士を魔法罠ゾーンにレガシーとして置き、ネオユニヴァースは召喚される。この2体の攻撃力合計は3900。それより大きい攻撃力のモンスターが相手の場に存在する必要があったが、それも今ではクリアされている。よって、ネオユニバース召喚は可能となった。
 俺の説明を理解し、副社長はうなる。

「ということは、ファイブゴッドの召喚がトリガーになったのか……!」
「過ぎたる欲は身を滅ぼす。始まるぞ、お前の悪夢が」
「ふざけるな! そんな痩せ細ったドラゴンにどれほどの攻撃力がある!?」
「悪夢の体現者たるネオユニヴァースに実体は無い。このカードは選んだモンスターの元々のステータスをコピーする。選ぶのは当然ファイブゴッド」
「つまり、攻撃力5000!? すげぇ!」

 今ファイブゴッドの召喚がトリガーになったと言ったが、よく考えたらルール上は遊旗も相手プレイヤーとして扱うのだから、ゴールデンレジェンドが出た時点で召喚は可能だったな。ま、どうでもいいか。

「ネオユニバース召喚がバトルフェイズで行われた時、相手はネオユニバースモンスターに攻撃しなければならない。さぁどうする?」
「ククク! 驚かせやがって、結局ファイブゴッドに勝てないじゃないか! ならば望み通り、貴様から消してやる!」
「ゆ、遊黒っ!」
「消える?違うな。これから始まるのだ、お前の悪夢が」
「ほざけ! ファイブゴッドの攻撃!」

 新たなモンスター召喚によって中断されていたファイブゴッドの攻撃が、再び始まる。今度こそ放たれた、最強の息吹。

「ファイブゴッド・バースト!!」

 5色の嵐が吹き荒れ、5色の光がまき散らされる。それはシャワーのように降り注ぎ、副社長の、勝利への確信に満ちた表情を照らし出す。

「やったぁ! 私の勝ちぃ!」
「真紅眼の黒竜のレガシーフォース発動」
「なに!?」

 純白の龍は輝き、その光の密度が増していく。龍の背を押すものがあった。それは可能性宿し真紅の眼。

ネオユニヴァースは他のユニバースが与えるレガシーフォースをコピーできる。ナイトメアブラックのそれをコピー」
「ってことは、戦闘する自分モンスターの攻撃力が2倍。つまり!?」
ネオユニヴァース、攻撃力10000」
「……バカな……!」
「悪夢フルコース」

 ここに生まれる、もうひとつの最強。そして放たれる最強の一撃。

「|悪夢終幕《ナイトメアフィナーレ》」

 純白の嵐と5色の嵐。それらは交わり、宙に架かる虹となる。虹色に輝く時の中、ドラゴンたちは静かに滅びゆく。主のためにその身を散らしてゆく。
 最期の花びらが、宙に舞う。

「こ、こんなこと、こんなことあっちゃあダメだぁ!」
「ありがとうネオユニヴァース。眠るがいい」

 花は、消えた。ファイブゴッド、ネオユニヴァース、攻撃力10000同士の2体が、相討ちとなって破壊される。
 副社長は膝を落とし、アリみたいに小さい声でターン終了を告げる。

「すげぇ、ファイブゴッドを真正面からぶっ倒した!」
「俺のターン。カードを伏せて終了。さぁお前のターンだ」
「き、キキ、キキィ……!」

 副社長のターン。やつのライフは1800。ネオユニヴァースの出現によりゴールデンレジェンドは生き残った。次の遊旗のターンまでに何らかの対抗策を講じなければ、勝負は決まる。そのプレッシャーからか、やつの手はガタガタ震える。

「わ、私の、ターン?」
「踏みにじられたお前のカードたち」
「っ?」
「お前のデッキに信じる心が残っているなら、逆転のためのカードを引かせるはずだが」
「……ど、ドロー」

 やつはドローカードを見る。その顔には先ほどの勢いはなく。

「……ターン……エンド……」
「俺のターン! ゴールデンレジェンドの攻撃!」
「ヒっ!」
「ゴールデンデスティニージャッジメント!!」

 審判の時。黄金の光が敵を呑み込み。

「う、うわぁぁ! 完敗だぁぁっ!!」
「へへ、遊黒っ!」
「ふっ」

 ハイタッチ。デュエルは俺と遊旗の勝利で決着した。

 


「こ、こんなこと、こんなことあっちゃあダメだぁぁ! せ、せっかく天新海を始末」
「せっかく、誰をどうしたって?」
「あ、あなたは!?」
「む?」
「えぇー!?」

 俺たちが見上げた先には、亡霊が突っ立っていた。その亡霊に名を付けるとすれば、そう、天新海!
 副社長の足下に転がっていた亡骸はフッと消える。それはデュエル終了時にモンスターが消えるのと同じ消え方だった。

「しゃ、社長、ど、どうして!?」
「自分の死体というのは見てて気分が悪いなぁ。ソリッドビジョンとはいえ」
「え、えぇ!? で、でも確かに感触が」
「質量を持ったソリッドビジョンか。ふ、他次元の力をもう使ってるとは。さすがだな新海」
「天使に褒めていただけるとは光栄だ。まだ発展途上だがね」

 絶句する副社長とは対照的に、天新海は愉快そうに笑っていた。

「さて。副社長、いくつか聞きたいことがあるのだが」
「ひ、ヒ、殺される……殺されぇっ」
「黙れ」
「ヒッ!」
「君が放ったシャドウに襲われた女性はどうなった?」
「た、たた、他次元に飛ばされました。か、神召喚のための生け贄となるでしょう」
「そうか。君は無論クビだし制裁も受けてもらいたいが、先約があるようだからね。では謹んで、罰ゲームとやらを見物するとしよう」
「え?」

 俺は副社長の前に立つ。どうやら新海への恐怖のあまり、俺との約束を忘れていたようだ。
 デュエルの敗者には罰ゲームが与えられる。その時が来た。

「悪夢を与える。少し長い、な」
「あ、う、助けて、助けてください社長ーっ!!」
「運命の罰ゲーム!」

 やつを指だし、告げる。

「|GREED《グリード》 ─欲望の幻像─!!」

 やつの目に夢が映る。それは悪夢。

「う、ほげぇぇぇぇぇっ!!」

 やつの肉体からシャドウの力は失われ、平常時のそれに戻る。俺の処置がなければあと数分で死んでいただろうな。ふ、罰ゲームに救われるとは皮肉なものだ。
 この特殊な眠りは半日ほど続く。その間、俺なりに考えた、欲望のはけ口の開拓を助ける夢を見る。ただ、残念ながら俺の見せる夢は必ずショッキングな映像を含んでしまうので、見てる間は少しばかり辛いだろう。まぁ頑張って欲しい。
 俺が副社長の今の状態などを伝えると、遊旗は少し意外そうな顔をした。

「えっと、じゃあ半日立てば元通り?何もかも?」
「そうだけど、なにか?」
「いや。ただ、もっと残酷な罰なのかと思って。だってこいつすげー悪いやつだったし、お前も怒ってただろ」
「別に悪いやつだとは思わなかったが」
「へ?あれが?」
「さっきも言っただろう。欲の注ぎ方が間違っていたのだと。むしろあの素直さは評価できるくらいだ。目を覚ましたら人助けに目覚めるかもな」
「ま、マジでー?」

 ハテナマークを浮かべる遊旗へ、新海が語りかける。

「ははは。遊旗、終遊黒に俺たちの価値観は通用しないよ。そいつは人間じゃなくて天使だからな」
「て、天使?人間じゃ、えぇ!?」
「そういうことだ。善悪にはあまり関心がなく、その魂を見定める。ま、お前はかなり人間に寄っているようだが」
「俺が人間に?ふ、父さんにあまり冗談をいうんじゃない」
「お前は俺の父親ではない。俺の父の名は天臨海。この世界のデュエルの創造主であり俺の前の社長。母の死後、会社を飛び出しそのまま行方不明になっている。ま、遊旗にゴールデンレジェンドを渡したのは恐らくやつだろうから、案外近くにいるかもだが」
「そんなことはどうでもいい」
「だろうな」

 その時だった。ファイブゴッドのカードが禍々しい光を放ち、どこかへ飛んで行った。

「あ、えぇ!?」
「我が社に封印されしカードか。あれは持ち主の心を映し出す。次の持ち主を探して旅立ったか」
「な、なるほど!」

 新海がドヤ顔でそれっぽい解説をし、遊旗がそれにウンウンと頷く。バカの会話って感じだった。
 一通りビックリし終えた後、遊旗はセキュリティーに応援を呼ぶ。副社長は様々な事件の参考人および被疑者として連行されるのだろう。
 遊旗は新海へ向かい。

「お前も署に来てもらうぞ。殺人未遂の参考人としてな」
「殺人未遂?ソリッドビジョンをナイフで刺すのが殺人未遂?ははは、遊旗は相変わらず冗談が上手いな」
「そ、それ以外にも聞くことがあるんだよ! ち、心配して損したぜ!」
「心配してくれてたのか?ふふ、それはありがとう。さすがは我が友だ」
「このハゲ! ろくでなし! いいから来い!」
「天新海は留守です」
「あぁ?」
「これから旅行なのでね。ただの旅行じゃないよ、次元旅行だ」

 新海の後ろに、ファンタジー映画に出てくるみたいな扉が出現する。やつがそれを開けば、その先に広がるは漆黒。

「見ての通り、他次元へ行けるゲートだ。俺はこれから5D’sの世界へ行く」
「た、他次元!?」
「あぁ。このゲートはなかなか厄介でね、強大なデュエルエナジーがないと動かない。だから、我が社の近くで激しいデュエルをしてもらう必要があった」
「俺たちのさっきのデュエルか……!」
「左様。ちなみに一度に使えるのは2人までで、今使えば明日の今ごろまでは使えない。改良の余地ありだ」

 やつの説明が終わると同時に、実験室のドアが開き、新たな客がこの空間にやってくる。

「はははヤッホー! あ、新海くんいたよシルバーちゃん!」
「わぁ、ほんとだ! 斬さんスゴーい!」
「あはははは! 聖天斬、聖天斬でございます! お困りの際は、聖天斬にお声がけ下さいませ〜!」
「そうかい。じゃあ斬くん、早速頼みがあるんだが」
「お、新海くん。なにかなー?」
「そのうるせぇ口にチャックしろ!」
「やだ」
「な、なにぃ〜!?」

 ブチぎれてる新海の元に、メイドの格好をした少女が駆け寄る。たしかシルバーと言ったか。おっぱいがデカい。し、身長のわりにはなんだからね!

「ま、まぁまぁ。落ち着いてください新海様」
「ちくしょうあの野郎、あの野郎〜!」
「新海様! 斬さんは女性です、野郎じゃありません!」
「あ、そうか。す、すまない、さっきから無礼な発言を」
「はははヤッホー。ま、気にするなでござるよ」
「……ありがとう」

 新海と斬は微笑み合う。なんだこの時間、って感じだが、ひとつ分かったことがある。それは、斬のやつが新海をあまり良く思っていなかったということだ。斬はどんな相手にも変わらず明るく接する。だがさっきのやつの目には少し険があった。ほんの些細なものだったし、たぶん俺以外のやつは気づいていないが、他の人間に対しての目とは違ったのだ。
 でも今は普段通りの目に見える。

「シルバー、俺はこれから5D’sの世界へ行く」
「は、はい。お、お気をつけて」
「お前にも来て欲しい」
「え?」

 俺たちのデュエルエナジーで動くゲートとのことだったが、副社長が俺たちをここに呼ぶタイミングは副社長にしか分からない。つまりゲートがいつ使えるかは新海には分からなかった。だから突然の話になってしまったわけか。

「お前の都合が悪いなら明日でもいいが、どうだ?」
「い、いえ、私は今すぐでも大丈夫です! で、でも」
「でも?」
「ど、どうして私と一緒に?もっと良いサポーターもいるのでは?」

 彼女は突然の話になったことよりも、自分が同行者に選ばれたことに驚いているようだった。当然の疑問だ。
 新海は答えを考えているようだった。そして。

「……俺はこれから夢を叶えに行く」
「は、はい」
「夢ってのは叶えることも大事だが、もっと大事なことがある。それは、叶った瞬間を誰に見せるかだ。誰と分かち合うかだ」
「……」
「その時を想像した時、俺はお前が一番良かった。ま、それだけの話」

 そっけない口調だったが、新海の頬はうっすら朱に染まり、目は泳ぎ気味だった。すごく殴りたい。ていうか俺たちは何を見せられているんだろうか。
 シルバーがコクンとうなずく。

「……私、その、とっても嬉しいです」
「じゃ、じゃあ!?」
「はい! 私、5D’sの世界に行きます! ゴートゥゲザーです!」
「おぉー! ありがとう、ありがとう〜!」
「えへへ。私がしっかりサポートしてあげるからね」
「あぁ!」

 そこで、シルバーの表情は一変する。忘れていたすごい重要なことをハッと思い出したみたいな、そんな様子だ。唇を噛みうつむく。しかし喜びのダンスを狂ったようにやっている新海はそれを見てはいない、ように見える。彼女はすかさず表情を戻し。

「では、お供させていただきます」
「うん。じゃあ行くか」

 うっとうしい会話が終わり─終遊黒だけに─ふたりはゲートに向かって歩き出す。そのまま、ゲートの中へ消えていった。
 遊旗は目の前で起こった出来事を処理しきれてない様子だった。しかし気の毒だが俺もすぐ行かなければならない。

「遊旗、頼みがある」
「な、なんだよ?」
「今日ここで起こったこと全て。マスターに報告しておいてほしい」
「別にいいけど、なんで?」
「俺は今すぐに5D's世界に行かなければならないからだ。向こうとこちらでは時間の経ち方が違う。こうしてる間にも一年くらい経ってるかもしれない。新海が何かやらかしてから行ったのでは遅いからな」

 遊旗は俺の説明をなんとか理解してくれたようだ。その上で、根本的な疑問を告げてきた。

「で、でもさ、あのゲートってのは明日の朝まで使えないって言ってたぜ?」
「俺は自力で行く手段がある。斬にもな」
「そ、そっか」

 とどのつまり、明日の朝の分は余ったということだ。ここで俺は遊旗の思考が読めたので、一応釘を刺す。

「まさか、お前も来るつもりか?」
「……そ、それは」
「やめておけ。特別な探し物があるならともかく……もしかして前言ってた復讐の相手か?」
「ギクっ」

 遊旗はセキュリティーだ。やつが見つけられない相手であれば、別の次元に飛んでいる可能性はあるな。でも、いくらなんでもそこまでしますかー?って感じだ。なので聞いてみることにした。

「お前、そいつに何されたんだ?」
「……」

 やつはうつむく。わずかに見えた顔は、真っ赤に染まっていた。なんで?

「う、奪われた……」
「?」
「奪われたんだ……俺の……くちびる……!」
「うん?」

 斬が会話に参加してくる。

「おー、遊旗くんも悲しい宿命を抱えていたんだねー。そっか、アールちゃんがなぁ〜。めっちゃ美人だよね」
「う、うん。やわらかくて、すごくあたたかかった」
「気持ちよかった?」
「……ま、まぁな」

 俺の心配を返しやがれ。それしか言うことはない。斬が復讐の相手のことを知っているようで遊旗がそれに食いついていたが、もうどうでもいい。

「斬、お前昨日も言ってたな。アールお姉ちゃんを知ってるのか?」
「お姉ちゃん?」
「はぁ!?俺があのくそったれをお姉ちゃんなんて呼ぶか!」
「そ、そうだね、その通りだ。まーボクもあんまり彼女のことは知らないんだけどね。彼女なら5D’sの世界にいるよ」
「ほんとか!? よっしゃあ、俺も行くー!」

 明るい雰囲気ではあったが、遊旗の表情は少し固い。他次元に行くこと、その危険を少しは理解しているようだな。であれば、俺が言えることはただひとつ。やつに歩み寄り。

「遊旗、お前が5D’sの世界に行くのは勝手だ。けどそうなった場合どうなるかは分かるだろう。1日ある、よく考えることだ」
「……あぁ」
「俺はもう行く。斬、お前は?」
「ボク?ま、少し散歩でもしてから」
「そうか」

 斬は去っていった。それなりの付き合いだが何を考えてるのかよく分からん。
 俺は最後に遊旗を見やる。

「俺はもう行く。マスターへの伝言、頼んだぞ」
「あぁ、任せとけ。じゃあな」
「うん。来るにせよ来ないにせよ、お前は何かと闘い続けるのだろう。健闘を」
「ありがとう。お前に会えて良かったぜ、遊黒」
「……ふ、少しは素直になったじゃないか」
「う、うるせー」
「お前とのタッグ、悪くはなかった。またいつか、デュエルしたいな」
「……あぁ!」

 俺たちは微笑み、そして別れる。遊旗が副社長を連れて去った後、俺の体は消えていき、異なる世界へと動き出す。
 ふと思い出し、懐から小さな黄金の天秤を取り出す。それは遠い昔の贈り物。何か特別なことをする度にこれに向かい祈りを捧げるのが、いつしか習慣になっていた。

「……全ては貴方のために」

 終遊黒は、5D’sの世界へと旅立った。


──そして──

「ははは、ヤッホー、ヤッホッホー」

 聖天斬はゆっくりと歩く。その背後から猛スピードで迫る物があった。

「超融合神が復活するまでには間がある。今GXの世界に行くのはダメだな。ふふふ、世界を移動するのに順番が決まってるというのは面倒だ」

 それは紫の輝きを放っていた。だが斬に近づくにつれて色が変わっていき。

「新海にシルバーちゃん、そして終遊黒。よし、彼らに付き合ってみるとするか」

 斬は手を上げ、背を向けたまま、飛来するそのカードを掴む。それに宿るは混沌の力。

「さぁ、パーティータイムだ」

 その細指が描けば、漆黒の扉はそこに現出する。それに身を任せ、この世界から消えた。

 

 

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第4話 天新海殺人事件

 アール。それが金色遊旗の復讐の相手の女である。遊旗が彼女に奪われたものは3つ。1つ、切り札のカード。2つ、セキュリティーとしての誇り。3つめは、また後、語るに相応しい時と場があるだろう。
 それは一年前のことだった。シャドウに女性が襲われ、その父親からセキュリティー本部へ通報があった。現場は遊旗がパトロールするエリアだったので当然彼が向かうことになった。セキュリティーは基本的に二人一組で行動するが、遊旗のパートナーは不真面目な男だった。その日もいつも通りサボっていたので、遊旗はひとりで現場に向かった。
 その途中で、美しい女性に出会う。真っ赤なツインテールの、チャイナドレスのような服の女性。その妖艶な雰囲気に、遊旗は思わず息を呑む。歳は遊旗より少し上のように見える。ちなみに遊旗は17である。彼女は遊旗の前に立ちふさがる。

「そなたが金色遊旗か?ほお、これは随分とまぁ」
「……じゃ、邪魔しないでくれ。俺は今急いでて」
「可愛い眼をしている。ふふっ」
「……っ」

 そのまま、デュエルすることになった。遊旗は敗北した。術のようなもので動きを封じられ、切り札のカードも奪われる。抵抗してもアールは離してはくれない。むしろ彼女は抵抗する様子を楽しんでいるようだった。
 いくつもの辱めを受け、遊旗はアールの事しか考えられなくなり、やがて、意識が飛ぶ。
 目が覚めた時には、全てが終わっていた。

「ん、んん……」
「起きたか。ふふ、そなたの寝顔をもう少し見ていたかったが」
「はっ!? お、お前……!?」

 ベッドから飛び起き、遊旗は辺りを見回す。そこは彼の自室だった。来ていた服もパジャマに変わっていた。アールは優雅に椅子にもたれ、遊旗の一挙手一投足を愛おしげに眺めている。遊旗はそれに気づき、気恥ずかしさを感じながらベッドに腰掛ける。

「な、なんなんだよこの状況……」
「妾が説明してやろう」
「わらわ?」
「道端で倒れたそなたを妾が助け、そなたが最も安らげるであろう自室に送り届けた。が、心配だったのでこうして見守ってやっていたというわけだ。さぁ、感謝の言葉などを述べるが良い」
「ふ、ふざけんな! 元はと言えばお前が……あっ!」
「6時間ほど眠っていたか。ふ、シャドウの方はもう手遅れよなぁ」
「……!!」

 絶望する。セキュリティーとしての務めを果たせなかった自分への怒り。このアールという女への憎しみ。

「そなたが倒れた後、セキュリティー数人が現場に駆けつけるが、時既に遅し。影は去り、データの強奪にも成功した。全ては我らの思うがまま」
「クソ、てめぇ許さねぇっ!」

 遊旗は怒りのままデュエルを挑む。だがあっけなく敗れ、また動きを封じられる。アールはデュエルの感想を述べながら、怪しげな薬を取り出し。

「いやはや驚いた。さきほどより強くなっていたように感じたぞ?妾への怒りによって潜在能力を引き出しつつある、か。そなたは面白いな」
「く、ちくしょう……!」
「妾を楽しませた礼だ。褒美をとらす」

 彼女は薬を遊旗に飲ませる。やがて、遊旗の理性が飛び。

「アール……アールっ!」
「……遊旗……あ……ん♡」

 その後どうなったかは、遊旗の記憶からは消えていた。アールは姿を消し、いまだ見つかってはいない。
 遊旗のパートナーは責任を感じセキュリティーを辞めた。不真面目だが正義感はある男だった。
 事件は早急に片付けられた。隠蔽されたと言っていい。遊旗は事件の資料すら入手することができなかった。遊旗は自分の手で被害者を見つけると決めた。
 遊旗は同じ学校に通っていたことを活かし、天新海に接触した。目的は、事件の手がかりとアールを倒すための力を得るためである。

 ある日、新海との密会にて。

「……という喫茶店がある。知っているか?」
「ん?あぁもちろん。一回入ったことあるし、パトロールの範囲内だからな」
「張ってみろ。そのうちここで面白いことが起こる」
「お前が面白いっていうと、ろくなことじゃねぇんだろうな……」
「ははははは! よく分かってきたじゃないか」

 新海は口を大きく開けてバカみたいに笑っていた。しかしすぐに冷徹っぽい顔になる。遊旗はこの表情が急に変わるのが慣れなくて嫌だった。

「特にそこの店主に近づくヤツはチェックしておけ。特にうちの社員が来たら要チェックだ」
「なぜ?」
「その時が来れば教えよう。だがせっかくだ、ヒントをやろう。その店主、父親だ」
「?」
「娘は行方不明。一年前に姿をくらましたっきり」
「まさか……!」
「くくっ。健闘を祈るよ、おまわりさん」

──そして今──


 はははヤッホー! みんな大好き、聖天斬、参上っ! う〜ん、良い天気だなぁ。
 さて、遊黒くんと遊旗くんのデュエルが終わったわけだが。新海くんがかっこつけて去り、シルバーちゃんがそれをふらつきながら追っかけていく。その様を見ながらボクは笑顔になった、と思う。ボクは他人の幸せが好きだ。そりゃ嫉妬もするし殴りたくなったりもするが、最終的にはハッピーがそれをオーバーする。幸せはトゥゲザーするものだからね。

「お、おい斬、その手に持ってる爆弾は何だ!?」
「うん?ははは、そんなにビビるなよ。おもちゃに決まってるじゃないか」
「そ、そうか。じゃあ行くぞ斬。こんなところに長居は無用、オムライスのおかわりが俺たちを待っている」
「おかわり?んー、あんなことがあったんだし、今日は店ジエンドなのでは?」
「あのマスターがそんなタマかよ。よし食うぞー! いえぇぇいっ!!」

 そんなものだろうか。でも遊黒くんが断言するんだからたぶんそうなのだろう。
 ボクは遊黒くんを追う前に、遊旗くんも誘ってみることにした。

「ボクらは今からさっきの喫茶店に行くけど、君もよかったらどうかな?」
「折角だけど。そろそろ戻らないとヤバそうだ」
「そうか。じゃ、遊黒くんの行きつけを教えておくよ。これがあればこれからも簡単に会えるはずさ。書いておいたから、ほら」
「おぉ、気が利くな。ありがとう斬。これでいつでもあの野郎とデュエルできる!」
「どういたしまし、えっ!?」

 ボクは突然手を握られたことで驚いた。そりゃもうビビった。なんたって目の前の少年はすごい美少年。言動はバカっぽいけど身体は良い感じに鍛えられてるし、総合的に見ればかなりの上物だ。そんな上物にハンドキャッチされるのは本能的に来るものがあった。そして何より、ん、少し遠くから女の子が走ってくるなぁ。黒髪が肩にかかるくらいの、かなり可愛い子だ。ん、誰かに似ているような。

「ちょ、ちょっとお兄!!」
「ん?おー鎖月か」
「おー鎖月かじゃない! その人なんなの手なんか握って!?」
「あー?この人はさっき知り合ったんだ。すげー気が利く良い人なんだぜ! 斬っていうんだ!」
「今日遊旗くんと知り合った斬というものでござる。怪しくないでござる。ニンニン!」
「どうも、遊旗の妹の鎖月です。兄がお世話になってます」

 遊旗くんの回答が彼女にとって満足いくものでないことは分かったので補足してやると、シンプルかつ簡潔な挨拶が返ってきた。兄がアホっぽいから心配していたが、なかなかしっかりしていそうな子じゃないですかー。
 ボクがホクホクしていたら、なんか遊旗くんが彼女の頭を優しく撫でていた。

「今日も可愛いな。鎖月」
「ば、ばか、恥ずかしい……」
「あ、そうだ、今夜一緒に風呂入るか?」
「ブッヘー!!」

 思わずむせてしまった。どういう脈絡やねん。やがて、鎖月と呼ばれた少女が恥ずかしげに頬を染め。

「……うん」

 妹は妹でネジが外れているようだった。兄妹でこの距離感とは、ちょっとボクにはキツい物件だなぁ。なんて思ってたら鎖月ちゃんと目が合う。そこにはまだかすかに敵意が残っていたわけで、とどのつまり嫉妬している女の眼であった。ボクは愛想笑いをやりながら、ちょっと困る。

「ねぇお兄。この人とはほんとに何にもないの?」
「あん?どういう意味?」
「だ、だからその、なんていうか、い、いや、別になんでもない」
「?」
「話はまとまったようだね。ならボクはそろそろ、いや、ちょっと待っただ」

 去る前に、大事なことを伝え忘れていた。鎖月ちゃんの登場であまり詳細には喋れなくなったが、まぁそれは問題ない。ボクは遊旗くんへ告げる。

「今ごろ遊黒くんは店主と話をしているだろう。デートの相談だ」
「デート?」
「予定通りならそれは明日の9時。あの二人、見張っておいた方が良いかもね」
「なにを言っている?」
「アールさんの足取りも掴めるかもしれないし」
「……なに?」

 遊旗くんの顔色がサッと変わる。もう少し教えてあげたいが、今の彼に詳しい説明をすることはできない。なぜなら、彼は今の段階では部外者だから。これから始まる闘いのね。

「今はまだ私が話すべき時ではない。今日はこれで失礼する。なに、きっとまた会うさ」
「ま、待て!」
「6次元の運命をかけた闘い。それに、君が乗り込んでくる勇気があるのならね」

 遊旗だけに! 遊旗だけに!! そう心の中で叫びながら、ボクはクールに去ったのであった。

 


「やぁマスター。やってるな。早速注文したいんだが、いいかな?」
「あ、あぁ」

 喫茶店にて。終遊黒は店主の目の前のカウンターに座りながらメニューをパラパラとやりだす。彼は子どものような笑顔だった。
 店主は遊黒にどうしても聞きたくなった。

「あんた、そんなに俺の料理が好きか?」
「もちろん。美味しいし、それに……」
「それに?」
「上手くは言えないけど、こう、帰って来たー!って感じがする。こういう感覚はあなたの料理を食べてる時だけだ」
「……そうか」
「よし、今度はこの地獄チャーハンってやつにしてみるか!」

 遊黒はウキウキだった。先ほどまでの超人的な雰囲気は微塵もない。少しの間があいた後。

「客、他にも少しいるな。あんなことがあった後だというのに。ふ、この店の人気には舌を巻く」
「あ、あぁ。本当にありがたいよ」
「けど、入り口は見栄えが悪い。壊されてしまったからしょうがないが。よし、少し待って」

 遊黒は悪戯な笑みを浮かべ、唇に指を当ててシーをひとつやった後、シャドウに破壊された扉へと手をかざす。その扉はボコボコになり、現在は『修理中』の紙が貼られていた。しかし次の瞬間、扉は破壊される前の状態に早変わり。店主は息をのむ。

「こ、こりゃ驚いた!」
「はは、あまり大声を出さないで。本当はおおっぴらにやるのはマズいんだ。ま、特別サービスというやつかな」
「あ、あんたは一体?」
「天から舞い降りた天使」
「は?」
「ふふ、冗談です」

 遊黒は微笑み、穏やかに話し出す。

「さっき言ってたな。『てめぇ、あの時の!』って。どういう意味です?」
「……なんとなく分かってるんじゃねぇのか?」
「まぁ、なんとなくなら。でもそこまでだ」
「そうか」

 店主は遊黒に全て話してみることにした。なぜそんな気になったのかは分からない。なんとなく、誰かに話したくなったのだ。
 一年前、娘がシャドウに襲われ、それから消息不明になったこと。リバースコーポレーションの副社長から、復讐の機会を与えられたこと。それが明日であること。
 遊黒はチャーハンをガツガツやり終えたあと。

「そうか。で、あなたはどうする?」
「どうする、か」
「あぁ。ま、その副社長ってやつはめちゃくちゃ怪しいし、なんらかの危険は伴うと思うけど」
「危険か」

 店主はボンヤリと呟く。

「副社長に話を持ちかけられた時、頭が怒りでいっぱいになった。娘のために何かできるなら俺はどうなってもいい、必ず復讐するんだって、そう思った」
「……」
「でも、ここでメシ作りながら考えた。天新海の野郎は許せない。でも復讐しても娘は帰ってこない。それに、俺にはこの店がある」
「そうだな。あなたに何かあったら困る。俺も斬も遊旗も、みんな」
「だけど、こみ上げてくる怒りもある」
「そうか」

 遊黒は微笑み。

「俺は復讐もアリだと思う。前に進むための手段としてならね。でもできることなら、今あるものの大切さを分かった上で行動して欲しい。あなたはそれを分かってる。今のあなたが決めたことなら、俺は何も言わない」
「……まだ分からないんだ。どうすればいいのか」
「時間はたっぷりある。相談にのるよ。うまいコーヒーを淹れてくれるならね」
「ふっ。まいど」

 その後、斬が来店する。その時、店主と遊黒は談笑していた。とっておきのイタズラを思いついた、少年同士みたいに。

 

──翌日、朝9時!!──


「本日はようこそおいでくださいました」

 副社長は来訪者に背を向けたまま、淡々と挨拶の言葉を述べる。
 ここはリバースコーポレーションと隣接している工場の中の実験室だ。それなりに広いが無機質で、ふん、客を迎える場所としては不自然この上ない。

「場所をここに指定したのは、ここが私のホームだからです。あぁ、自宅という意味ではありませんよ。ここが私の主な仕事場なのです」
「……」
「さて、早速本題に入りましょう。天新海に会いたいんでしたね。ほら、ここにいますよ」

 副社長が足下の肉を蹴る。それは人間の亡骸のように見えたが、さて。副社長は邪悪な笑みを浮かべていた。

「愚かな男だ。私を軽く扱うからこうなる。先代の頃からね、私は信用されてないんだ。裏切れるだけの力も与えられてない。だが天新海は死んだ! これで私が社長……この世界の頂点に立つことができる! 私こそが、新世界の王となるのだぁー!!」
「……」
「おっと失敬。ま、とりあえず私は暴力にうったえるしかなかったわけですよ。蹴りたければあなたもどうぞ」

 俺が無言なのを見てか、副社長はスイッチでが出入り口を閉じる。俺たちは密室で二人きりになったわけだ。やつは決闘盤を装着し、ニヤリと笑う。底意地の悪い笑顔だった。できれば二度と見たくないと思うほどにな。

「もちろん、暴力にはリスクもある。別の犯人を用意しなければいけませんからね。そしてあなたは私の身代わりに都合が良かった。動機もあるし家族もいない。そして何より頭が悪い。ここに来たのがその証拠」
「……」
「怖くて声も出ませんか。ではさらにひとつ、良いことを教えてあげましょうね。一年前のあなたの娘の事件、あれは私の仕業です。シャドウが人間を襲うことの意味、その結果何が起こるのか。そのデータさえあれば社内で認められると、当時の私は無邪気にも信じていたのでね」

 やつは饒舌だった。自分の世界に浸っているような、一方的な語りぐさだ。俺はやつが嫌いになった。

「悔しいでしょうね。あなたの娘の犠牲には何の意味もなく、あなた自身も私の身代わりになる。これからあなたの脳をいじり偽りの記憶を刻みます。自分が天新海をはずみで殺してしまった、という罪の記憶をね。そして自首する。ま、ひとり殺したくらいなら数十年で出れるし、余裕でしょ。どーせガキももういねーんだからさぁ!」
「……」
「世界は無情! 弱者は強者のエジキになるより他にない! ククク、ハハハハハ!!」
「こんなやつが副社長とは、新海も苦労しただろうな。ふ、まさかやつに同情する日が来るとは」
「ハハハハ……ハ?」
「あんたに品が無いって話だよ。オッサン」

 俺の様子にやっと疑問を抱いた副社長は振り返る。そこにいたのは!
──ババーン!!──
 終遊黒その人だった、というわけだ。

「な、なんだ貴様!? やつはどうした!?」
「終遊黒。代理の者だ。マスターは今ごろ、料理の準備でもしてるんじゃない?」
「ふ、ビビって逃げ出したか。自分の娘の仇が討てるチャンスだというのに。はは、臆病者はこれだから困る」
「それは違うな。人はそれぞれに相応しい闘いの場がある。喫茶店で料理を作ること、それが彼の闘いだ。お前に邪魔する資格はない」
「あん?」
「つまり、お前の相手は俺で十分だということだ」

 俺は決闘盤を装着し、床に指先をあてる。すると床からカードが手品で出てくる旗みたいな感じでスルスル出てきて、これでデッキが手元にアライブというわけだ。やつはそれを見て一瞬目を見開くが、すぐに通常営業に戻した。

「なるほど、貴様が例の化け物か。未知のカードを持っているという」
「俺を知っているか。なら話は早い。お前にはゲームを受けてもらう。闇のゲームだ」
「ほー。それは面白そうだ。だがその前に、そこの君、出てきたらどうかね?」

 気づいていたか。さっきから、俺の後ろの物陰にひとり隠れている。俺が入るのと同じタイミングで侵入したのだろう。そのまま出るタイミングを失ったか、副社長と闘うつもりで残ったか。面構えを見たところ後者のようだが。
 副社長の声を受けて、その男、金色遊旗が俺たちの前に歩み出る。やつは副社長を見つめ。

「……さっきの話は本当ですか?あなたが店主の娘さんを……」
「本当だとも。データが必要だったのでね」
「なぜ彼女を?恨みでもあったのか?」

 人は怒りがある一線を超えると逆に静かになる。今の遊旗がそれだ。やつの震える拳が、激しい怒りを訴える。
 そんな遊旗を嘲笑うように。

「バーカーかー君はぁ!?恨みなどあるわけがない。私と接点がある人間にしたら怪しまれる、だからランダムで選んだのだ。そうでなければあの女とガキにしたものを。あぁ、女とガキというのは別れた妻と息子のことだ。別れた後もカネカネカネと、私にたかってくるんだよ。昔少し殴ったくらいで人をネチネチと。恐ろしいやつらだ」
「恐ろしいのはあんただ。人を傷つけておきながら罪悪感のカケラも無い。続きは署で聞かせてもらう」
「そうするには私を倒すしかない。だがその場合、君にも相応のものを賭けてもらわねばなぁ。そうだ、頭をいじって一生私のしもべというのはどうだ?」
「……俺をどうしようが、セキュリティーの手からは逃れられない。無駄な抵抗だ。すぐに自首しろ」

 遊旗はセキュリティーとして真摯だった。やつは副社長をぶん殴りたかったかもしれない。だが個人的な怒り憎しみを抑え、自首を促す。俺はその姿をみて遊旗が少し好きになった。だが副社長はそうではなかったらしい。

「クク、本気で言ってるとしたら救いようのないバカだな。私はリバースコーポレーションの副社長だぞ。身代わりの犯人さえ用意できればどうにでもなる。むしろお前の上司たちが庇ってくれるさ」
「……!」
「良い顔だぁ。クククっ! しょせんお前らは権力には逆らえねーんだよぉ!! アヒャヒャヒャヒャー!!」

 これほどまで、怒りに燃えた顔というのは見たことがない。だが副社長が言っていることもひとつの真実だ。権力には人を屈服させる力がある。だから人はそれを求め、だから争いは絶えず繰り返される。
 だがそのループから抜け出す術もある。権力を超えて信ずるべきものを見つければいい。だが老齢の者であっても見つけられない者には見つけられないのだ。さぁ、遊旗はどちら側の人間か。
 やがて、やつは静かに。

「俺は貴様を倒す。そして罪を償わせる。力づくでもな」
「生意気いうなよ。小僧ぉ!」
「たしかに俺は小僧だが、死ぬより辛いことはいくつも知っている。それら全て、貴様の体で試してやるぜ」
「仮に私を倒したとしても、お前にそんなことはできん! セキュリティーにそんな権限はない!」
「セキュリティーじゃない、俺がするんだ。ありがたいことにここは人気もないし、遊黒も見逃してくれそうだ」

 遊旗は妖しく微笑む。副社長はビビっていた。ただの脅しじゃない、こいつならやりかねない。そう思わせるだけの説得力が、今の遊旗にはあった。もっとも、ほんとうにやるかどうかは俺には判断がつかないが。ま、いずれにしても。

「面白くなってきたな。だが遊旗、やつとデュエルするのは俺だぞ」
「あん?空気読めよ、完全に俺がやる流れだろ今」
「普段なら譲ってるところだが、今はマスターの代理で来てるからな。俺には闘う義務がある」
「それは分かるけど、俺にもセキュリティーとしての責務がある」
「ふふ、私の取り合いか。学園のマドンナ的な気分だよ。ではここでひとつ提案する。2対1のバトルロイヤルはいかがか?」

 俺と遊旗は顔を見合わせる。なるほど、たしかにこの人数でこの会話の流れとなれば、バトルロイヤルというのは一見自然に見える。しかも2対1でやれるならこちらが有利……のように見えるが、怪しいものだ。もっとも遊旗の答えはすでに決まっているようだが。そして、なんと俺の答えも同じだ。

「やってやるぜ、バトルロイヤル! サポート頼んだぜ、遊黒!」
「ふん。精々足は引っ張るなよ」
「決まったようだね。クク、仲が良さそうで何より。では、知っているとは思うが念のためルールを説明しよう」

 バトルロイヤルルールの説明を受ける。内容を要約するとこうだ。
 ターンの順番は、遊旗→副社長→遊黒→副社長→遊旗。全プレイヤーの最初のターンが終わるまで、バトルフェイズを行うことはできない。
 ゲーム開始時、副社長には10枚の手札と8000のライフが与えられる。俺と遊旗は通常通り手札5枚、ライフ4000でスタート。
 俺と遊旗の手札フィールド墓地は共有されない。仮に俺が「自分の墓地のカード」や「自分の場のカード」を対象とするカードを使う場合、遊旗のカードを対象にすることはできない。ただし俺の場にモンスターが無い状態で副社長からの直接攻撃を受ける場合、遊旗の場にモンスターがいれば、遊旗は自分のモンスターを俺の盾にすることが可能である。
 副社長のライフが0になれば、俺と遊旗の勝利が決まる。俺か遊旗のどちらかのライフが0になった場合はそのプレイヤーがゲームから外れ、それ以降は残ったプレイヤーと副社長が普通に1対1で闘うことになる。
 ルールの要点はこんなところかな。遊旗も決闘盤を付け、準備完了のようだ。最後に、俺も副社長に最後の説明をしてやることにした。

「言い忘れたが、闇のゲームでは敗者およびルールを破ったものには運命の罰ゲームが待っている。ご期待いただこう」
「ほーう。それは楽しみだが、結果は既に見えている。遊旗は一生私のしもべ、君は天新海殺人事件の犯人として逮捕! ククク、ハハハハハ!!」
「……夜が来る。お前に」
「俺と遊黒は負けねぇ! お前をぶっ潰す!!」
「ガキどもが。大人の怖さを教えてやる!」
「さぁ、闇のゲームの始まりだ」

 実験室に絶叫が響き渡る。絶叫という表現で正しければだが。それは開戦の合図。

「デュエル!!!」

 容赦なき血肉貪る闘争が始まった。まずは遊旗のターン。

「俺は『サイレント・ソードマンLV3』を召喚! さらにカードを1枚伏せ、魔法カード『タイムカプセル』を使う。これでターンエンド!」

 タイムカプセルはデッキ内から好きなカード1枚を除外し、発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ、そのカードを手札に加える。このバトルロイヤルにおいて2回目の自分のスタンバイフェイズは普段よりも遠い。そのためか、副社長の警戒の色はうすい。

「攻撃力1000のザコモンスターか。クク、早くも私の勝ちは決まったようだ」
「こいつはザコなんかじゃない」
「ザコだろ。仕方がない、では本当の強さというものを教えてやろう。 まずは魔法カード『融合』ぉ!!」

 いきなり来たか。融合召喚はターンを費やさずに上級モンスターを呼べるからな。やつの手札のロード・オブ・ドラゴンと神竜ラグナロクが融合し、黄金のモンスターが出現する。

「出でよ『竜魔人 キングドラグーン』!!」
「だ、だがまだ攻撃はできない!」
「構わないさ。私の狙いはこいつの特殊能力にあるのだからな。見るがいい、竜の王たるキングドラグーンの力! 効果発動! ターンに1度、手札からドラゴンを1体特殊召喚できる。レベルに関係なくなぁ!」
「ということは……!」
「さらに上級モンスターが増える! 来い『マテリアルドラゴン』!」

 キングドラグーン、マテリアルドラゴン、共に攻撃力は2400。俺のレッドアイズと同等の攻撃力を誇るモンスターがいきなり2体だ。加えてこの2体には厄介な効果がある。副社長はそれを自慢げに述べる。

キングドラグーンがいる限り、相手はドラゴンを効果の対象にすることはできない! そしてマテリアルドラゴンがいれば、モンスター破壊効果は手札1枚をコストにすれば無効にできる。つまり今、ドラゴンを守る絶対防御の布陣が完成したのだぁ!!」
「な、なんてやつだ……!」
「さらに『アレキサンドライドラゴン』を召喚。カードを1枚伏せターン終了。さぁ終遊黒、お前のターンだ。最後のなぁ!」
「俺のターン」
「ククク、早くキングドラグーンを倒さないと、ドラゴンが際限なく増え続けるぞぉ?」
「カードを3枚伏せ、『カードカー・D』を召喚。その効果で自身をリリースして2枚ドロー、ターンエンド」
「……プッ」

 せきをきったような爆笑が響く。無論、副社長のものだ。やつは勝ち誇ったようにカードを引く。

「ハハハハハ! まさか壁モンスターすら出さないとは。がっかりだよ。実にがっかりだ。人生最後のデュエルになるかもしれないというのに。では幕引きといこうか。キングドラグーンの効果で『ラビードラゴン』を特殊召喚!」
「こ、攻撃力2950!?」
「ちっ」

 アレキサンドライドラゴンの攻撃力は2000。ラビードラゴンは2950。これでやつのモンスターの攻撃力合計が俺たちのライフを上回ったが。

「攻撃の前にこの魔法カードを使っておく、『ナイト・ショット』! 遊旗、お前の伏せカードを破壊!」
「なに!?」

 破壊されたのは『神風のバリア ─エア・フォース─』。相手の攻撃時に発動でき、相手の場の攻撃表示モンスター全てを手札に戻すという効果を持つ。対象をとらない上に破壊でもないので、発動に成功していれば副社長のモンスターたちを全て除去できたはずだ。だが、見破られた。

「ふん、ザコをわざわざ攻撃表示で出してきた時点でお前の狙いはお見通しだった。そんな見え透いた手に、この副社長がひっかかると思うかぁ!」
「……くっ!」
「終わりだ。キングドラグーンの攻撃!」

 ドラゴンたちの叫びが響き、閻魔様の到来を告げるみたいな突進が迫り来る。もはや勝負あったかのように見える。
 だが。

「……ふっ」
「遊黒……笑った?」
「ククク。やせ我慢かぁ!?」
「まさか。デュエルが思いのままに進んでいく、決闘者にとってこれほどの喜びはない」
「貴様、まさか!?」
「そのまさかだ。トラップ発動、『神風のバリア ─エア・フォース─』!」

 奇遇にも俺と遊旗の切り札は同じだったようだ。風が渦巻き、ドラゴンたちへ向かっていく。先述の通り、これが決まれば副社長のモンスターは全て消える。
 しかし。

「ククク。まさか同じ罠を伏せていたとは。意外とお似合いのパートナーかもねぇ。一緒に人生の終わりを迎えるんだ、それがせめてもの救いだ」
「わけわかんねぇこと言うな! これでお前の場はがら空きになるぜ!」
「うるせぇ! この程度の罠、私が読み切れないと思ったかぁ! カウンタートラップ『ギャクタン』っ!!」
「な、なに!?」

 ギャクタンはトラップを無効化する。つまり。

「これでエアフォースは無効となる。つまり私の勝ちだぁっ!!」
「それはどうかな?」
「あ〜ん?」
「ふふ、俺が伏せてるカードも……」
「ま、まさか!?」
「そのとーり。『ギャクタン』!!」

 俺のギャクタンがやつのギャクタンを無効化。結果、残るのはエアフォースの効果のみ。とどのつまり。

「……ヒッ!」
「ご自慢のドラゴン軍団、あいにくだが全員ご退場願おう。消え去れ!」
「うわぁぁぁっ!!」

 大いなる風の渦に呑まれ、ドラゴンたちは消え去る。キングドラグーンは融合モンスターなので手札ではなく融合デッキに戻る。他のドラゴンたちは手札に戻った。とはいえやつはまだこのターン召喚権を使っていなかったので、アレキサンドライドラゴンを改めて召喚し、そのままターンを終えることになった。
 副社長はこちらを忌々しげに睨みつける。さっきまでの上機嫌さが嘘のような悔し顔だ。

「ぜ、全滅〜!! 貴様、貴様ぁ!!」
「バトルロイヤルを吹っかけてきた時点でお前の狙いは明白だった。初期手札が多いことを活かして特殊召喚主体の戦法をとり、俺たちの連携が完成するより早く決着をつける。だろう?」
「わ、私の戦術を読んでいた……!?」
「ふっ」

 俺のスマイルが相当しゃくに障ったのだろう。その顔は紅潮していた。

「ゆ、許さん、許さんぞ終遊黒! 貴様は真っ先に葬って」
「おい、俺のことを忘れてもらっちゃ困るぜ」
「はっ!」

 遊旗のターン。ここでサイレントソードマンはレベルアップする。現れるのは、攻撃力2300を誇る、静かに佇む騎士モンスター。

「『サイレント・ソードマンLV5』!そしてさらに魔法カード『ダブルアタック』! 手札を墓地に送り、ソードマンの連続攻撃を可能にする! 行くぜ!!」
「や、やめろぉ!」
「沈黙の剣LV5、連続斬りっ!!」

 高速の斬撃。アレキサンドライドラゴンを切り裂き、そして、副社長へのダイレクトアタック。

「ぐわぁぁぁっ!!」
「どうだ! これが俺たちの結束の力だ!」
「……く、ククク……!」

 やつのデッキに眠る1枚のカードが怪しく輝く。そこには凄まじいエナジーが秘められている。そう、俺の手札に眠るナイトメアブラックが告げていた。

「調子に乗るなよぉぉ! 新世界の王たるこの副社長の恐ろしさ、とくと味わうがいい!!」
「……近づいているな……お前の悪夢が……!」

 どうやら、ナイトメアブラック真の姿を見せる時は近い。

──その頃!──

「シルバーちゃん! この問題の答え教えて!」
「ダメです」

 聖天斬とシルバーは入社試験の真っ最中。和やかな空模様を眺めながら、聖天斬は自身の不採用を察するのであった。ちゃんちゃん。
 

 

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